どう見る高市内閣 ④外国人政策|全国商工新聞

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混乱招く移民ジレンマ 避けて通れぬ共生社会

関西国際大学 客員教授 毛受敏浩さん

 日本はいま歴史的な人口転換のただ中にある。日本人の減少は既に年間90万人を超え、近い将来100万人規模へと拡大していく。出生率は人口維持水準の2.07を大きく下回る1.15にとどまり、長期的に人口減少が止まる兆しはない。特に深刻なのは働き手の減少であり、高校卒業後に就職を希望する若者は、この20年で約4割も減った。将来にわたり、人材不足が解消される見込みは無いのが現実だ。

在留外国人増え年間40万人にも

 この構造的な人手不足を補っているのが外国人である。在留外国人は年間36万人規模で増加しており、今後は40万人に達する可能性が高い。女性や高齢者の就労拡大、AI・ロボットの導入によって一定の補完は可能だが、それでも埋めきれない部分を、外国人が担っているのが実態である。そして人口減少の加速化により、あらゆる産業で、外国人労働者に依存する状況が急速に広がっている(図)。政策の有無にかかわらず外国人への依存が高まっており、この流れは今後さらに加速するだろう。
 1月に出版した拙著『移民1000万人時代―2040年の日本の姿』(朝日新書)では、この現実と、地域で始まりつつある新たな動向、さらに未来に向けてのビジョンを記した。そこで論じた課題は、政府が依然として「移民政策をとらない」という建前に縛られていることだ。国連の定義では「1年以上他国に居住する人」は移民であり、そこに価値判断は含まれない。一方、日本では「移民」という言葉に対する誤解や不安が根強く、政府はその誤解を解くことなく、逆に移民という言葉を避け続けることで、移民のネガティブなイメージが定着してしまった。
 現実には高度人材の受け入れは進み、現場労働者についても特定技能制度や新たな育成就労制度により、定住への道が開かれつつあるにもかかわらず、政策と現実の乖離、「建前と本音」のギャップは大きい。この「移民ジレンマ」とも言うべき状況は、社会的な混乱を招きかねない。外国人を一時的労働力として扱い続ければ、日本の技術やノウハウは継承されず、産業の競争力は低下する。一方で、定住が進む現実を直視せず、制度設計が曖昧なままであれば、日本社会に十分に統合されない外国人コミュニティーが形成され、分断のリスクが高まる。
 近年では、外国人の増加に対する不安や反発も政治的に顕在化し、政府は「在留資格の厳格化」などで対応を図っている。しかし、厳格化の強調はかえって外国人へのネガティブなイメージを助長し、日本人と外国人の間に、心理的な壁を生む可能性がある。本来求められるのは、日本が魅力ある社会であることを示し、能力と意欲を持つ人材を受け入れ、その活躍を支える環境を整備することだ。そのためには、日本語教育の充実、生活支援の強化、そして子どもたちへの教育機会の保障が不可欠である。外国人の子どもは将来の日本社会を支える存在であり、日本人と同等の教育水準を確保することが、国家の持続性に直結する課題となる。

日本は古来より外国人受け入れ

 「日本は既に、実質的に移民を受け入れており、今後も必要である」という事実は覆しようがない。日本が持続可能な社会を築くためには、「移民開国」という選択を避けて通ることはできない。現実を直視し、将来像を明確に描いた上で、移民政策を確立する必要がある。「外国人との共生社会基本法(仮)」の制定を含め、受け入れ・定住・統合を一体的に設計することが求められている。
 そもそも日本は古代より、海外からの人々を受け入れ、彼らがもたらした知識や文化を元にイノベーションを起こし、発展してきた国柄である。閉鎖的な国だったならば、現在のような発展は成しえていない。歴史を振り返り、学際的な分野から有識者を集め、新しい時代にふさわしい移民像と日本の未来ビジョンを構築することこそが求められる。

 >> どう見る高市内閣 ①税制改革
 >> どう見る高市内閣 ②大軍拡
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