【マイナ保険証・カードQ&A】導入から10年 個人番号制度は廃止に トラブル続出不所持者への差別も|全国商工新聞

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 マイナンバー(個人番号)制度が2016年1月に導入されて10年。政府が「最大1人2万円」のマイナポイント事業に約1兆4千億円を投じたり、マイナンバーカードに健康保険証機能を持たせる「マイナ保険証」を義務化したりと、カード普及に血眼になった結果、保有率は国民の8割以上に。一方、カードの他人への「ひも付け」や読み取りエラー、果てはカード偽造による約6億円のだまし取りなど、トラブルへの不安などからカードの廃止件数は約47万件に上ります(23年6月時点)。「3月末で健康保険証が使えなくなる。4月からマイナ保険証が必要?」など、カードに関する疑問をQ&Aで解説。2面で「共通番号いらないネット」の原田富弘さんが、制度の狙いと今後の動向を告発します。

Q1 3月末で従来の健康保険証は使えなくなる。4月から、マイナ保険証が必要?

A 必要ありません。資格確認書で受診できます。

医療機関で設置されているマイナ保険証のカードリーダー

 厚労省は昨年11月14日、”今年3月末まで、従来の健康保険証で受診できる”とする暫定措置を、全国の医療機関や薬局にメールで通知しました。
 主に中小企業で働く従業員と家族約4千万人が加入する協会けんぽなどの健康保険証は、昨年12月2日で有効期限が切れました。しかし、マイナ保険証の利用率は、同10月末時点で4割足らず。「12月2日以降、期限切れに気がつかずに健康保険証を引き続き持参してしまった患者」の大量受診が予想されたため、事実上、全ての健康保険証の有効期限を3月末まで延長したのです。
 4月以降は、マイナ保険証が無くても、取得していない人に各保険者から一律に交付された「資格確認書」で受診できます。
 一方、マイナ保険証には有効期限が二つあり、いずれかの期限が切れると「保険が適用されず、窓口で、いったん10割負担」を求められる恐れがあります(①カード本体の期限が18歳以上10年、18歳未満4年②カード内蔵の電子証明書の期限が5年。2020~23年のマイナポイント事業で急増したカードの電子証明書が25年度以降、一斉に有効期限を迎え、26年度以降は約3千万枚が期限切れになる見込み)。
 昨年12月のマイナ保険証の利用率は63.24%でした。4割近い国民は、利便性や必要性を感じていません。マイナ保険証への一本化を改め、従来の健康保険証と併用すべきです。

従来の保険証で
全国保険医団体連合会 副会長 森元主税さん=歯科医師

 私の病院には毎月100人ほど来院しますが、マイナ保険証を利用する人はいません。高齢の患者から「暗証番号を忘れてしまう」「個人情報の取り扱いが不安」などと言われます。マイナ保険証を登録した人も、従来の保険証や資格確認書を提示し、受診します。
 マイナンバーカードの取得は任意です。「持ちたくない」人には従来通り、健康保険証を使えるようにすべきです。選択肢を奪い、二者択一を迫る、政府の手法は許せません。

Q2 資格確認書の有効期限は?

A 5年以内で、各保険者が設定します。

 マイナンバーカードを取得していない、またはマイナ保険証を登録していない人などに交付された資格確認書の有効期限は、5年以内で、各保険者が設定することとなっています。
 例えば、国民健康保険の保険者である市町村の多くは1年間と設定。協会けんぽは5年間です。
 その一方、大阪府は半年ごとの有効期限を設定する案が検討されるなど、マイナ保険証を使わない人に不利益をことさら押し付ける動きもあります。
 後期高齢者医療保険は、今年7月末まで、資格確認書を職権で一律交付しました。しかし、8月以降は「全員一律の資格確認書の職権交付を見直してはどうか」との対応方針案を検討(下の図)。84歳以下で、マイナ保険証の一定の利用実績がある人はマイナ保険証への移行を狙っていました。厚労省は12日、これに加えて、交付の要否の判断を広域連合に実質的に丸投げする方針を提示。「混乱は必至」との声が上がっています。

一律交付を実施
東京都世田谷区職員労働組合 奥山竜一さん

 東京都世田谷区は2024年12月、マイナ保険証の有無にかかわらず「資格確認書」の一律送付を決めました。システム改修や入札を経て、昨年9月5日に、有効期限5年間の資格確認書を被保険者に一斉に送付しました。
 区民から「マイナ保険証を持つ人にも送るのは、税金の無駄遣いなのでは?」との意見を頂きました。しかし、マイナ保険証を持つ人にも「資格情報のお知らせ」を送付するため、一律送付でも、当初の予算は超えていません。

Q3 カードが無いと、自治体の物価高騰支援が受けられない!?

A カード保有は任意。差別的対応は「法の下の平等」を定めた憲法14条違反

 「『東京アプリ』のダウンロードとマイナンバーカードによる本人確認で1万1000東京ポイントがもらえる!東京アプリ生活応援事業」―。東京都や京都市(デジタル給付1人5千円)、仙台市(みやぎポイント1人3千円)などは物価高騰対策として、マイナンバーカードとスマートフォンのアプリを連携したポイント交付などによる支援事業を実施します。
 しかし、マイナンバーカードやスマホが無かったり、アプリに不慣れな人には、自治体の支援が届きません。同様の支援事業を行う宮城県大崎市は、ポイントを受け取れない市民に、ポイント相当額のギフトカードを支給します。
 マイナンバーカードの取得は、あくまでも任意です。カードの不所持によって、行政サービスが受けられないことは「法の下の平等」を定めた憲法14条に反します。

全市民に支援を
京都・左京民商 副会長 新庄英生さん=引き箔加工

 マイナンバー制度の開始当初から反対しています。国家事業なのに「カード取得は任意」と、個人に作成を委ねる無責任な国の姿勢に怒り、作っていません。
 京都市が物価高騰対策として行うポイント事業も、マイナンバーカードの「ひも付け」が必要で、カードを持っていない人への嫌がらせとしか思えません。全ての市民が苦しんでいるのに、ポイント事業の予算は、全市民分に達しません。最初から対象を絞っていることも納得できません。全市民に届く物価高騰対策を実現してほしい。

Q4 個人情報の保護が脆弱なカードを持ちたくありません…

A 利用拡大を中止し、不所持による不利益を禁じ、「制度は廃止に」の声を広げましょう

 確定申告での収受日付印の押印廃止や申告書の印刷削減、申告書控えの廃止方針など、紙の申告者に差別や不利益を押し付ける形でのデジタル申告(e―Tax)の推進や医療機関でのマイナ保険証の強要、マイナンバーカードと連携した自治体の物価高騰支援など、あくまでも任意のはずのマイナンバーの記載や利用が事実上、強制されています。
 マイナンバー制度には、国民による監視が不十分▽本人の同意なき利活用で、情報主体である国民に権利がない▽情報の集中管理と重層的な委託・下請けで漏えいの危険性が拡大―などの問題があります。
 いま必要なのは、マイナンバー制度の利用拡大を中止し、カード不所持による不利益を禁じることです。プライバシー権や個人情報の収集・分析を規制する「自己情報コントロール権」の確立も急がれます。
 各地でマイナンバー制度の学習会、国会議員や国・自治体への要請を強め「マイナンバー制度は廃止に」の声を大きく広げましょう。

市民的抵抗の意義大きく
共通番号いらないネット 原田富弘さん

監視強化や戦争準備への警戒を

 マイナンバー制度が始まり10年が経過した。当初は税と社会保障の一体改革を目的に、重複のない個人番号の付番と行政情報等の連携システムの新設と成り済まし防止のための個人番号カードにより、個人を識別特定し、分野を超えて個人情報をひも付け、生涯追跡可能にする仕組みが作られた。
 それに対して私たちは、基本的人権を侵害する市民に対する監視と管理の日常化・精緻化だとして、「書かない番号、持たないカード」を合い言葉に記入や所持に対する市民的抵抗や、制度廃止に向けた裁判闘争、利用拡大法案への反対や宣伝活動に取り組んできた。
 ところが自民党政権はこの仕組みを土台にしながら、当初予定されていないマイナンバーカードを使った官民の情報共有を推進した。そのために所持は任意のカードを、2023年3月末までにほぼ全住民に所持させる計画を19年6月に決め、マイナポイントやマイナ保険証、公務員などへの取得強要など強硬にカードを押し付けてきた。
 しかし目標の23年3月のカード普及率は67%で、現在も2割の人は所持していない。マイナ保険証も「資格確認書」という代替手段を作らせ、事実上の併用状態に追い込んでいる。市民の抵抗と医療現場の問題指摘によって「国策」を食い止めている意義は小さくない。マイナンバーひも付けトラブルの発生は、制度の欠陥を露わにした。
 とはいえ、状況が厳しくなっているのも事実だ。23年6月には利用を3分野以外に拡大し、利用・提供の制限を緩和する法改正がされた。早速、国家資格のマイナンバー管理を拡大し、外国人の在留管理や武力攻撃事態における国民保護など監視や戦争準備を利用事務に追加した。
 この法改正の直前の3月9日に最高裁はマイナンバー制度の危険性を認めつつ、3分野への利用限定や利用提供の法規制などを踏まえマイナンバー制度を合憲としていた。法改正は違憲の疑いがあるが、その後、最高裁は憲法判断を回避している。
 新型コロナ流行に便乗したデジタル化のために設置されたデジタル庁は、個人情報の共有を容易にする法制度改正を進めている。本人確認手段の一元化をもくろむ、カードを利用した差別処遇が広がっている。「国の根幹にかかわる重大政策の大転換」を掲げた高市政権の、資産把握を前提とする給付付き税額控除導入や市民を監視するインテリジェンス機能強化の基盤になるのもマイナンバー制度だ。警戒が必要だ。

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