福島原発事故後初の新設計画 原発回帰許さず再エネ普及こそ|全国商工新聞

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 関西電力は7月22日、福井・美浜原発の敷地内で新しい原発の建設に向けた地質調査を始めると明らかにしました。2011年の東京電力福島第1原発事故後、原発新設計画の具体化は初めてです。
 政府は2月、第7次エネルギー基本計画を閣議決定。福島原発事故後に掲げてきた「原発依存度を可能な限り低減する」との表記を削り、原子力の「最大限活用」や原発の新増設を明記するなど原発回帰を鮮明にしました。関西電力の森望社長は同日の会見で、基本計画が後押しになったと述べました。
 福島では、事故から14年たっても住民約5万人が帰還できないまま、損害賠償が打ち切られました。原発事故と放射能汚染で生業や、住まいと家庭生活、地域のつながり、安全な環境など全てを奪われた人々の言葉に尽くせない苦痛と怒りが渦巻いています。現状を直視するなら、原発の新増設など、ありえません。
 政府は”電力の安定供給と脱炭素との両立”を口実に、原発依存を高めようとしています。しかし、地震大国の日本に安全な原発立地場所は無く、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分方法も未確立で、事故時の避難計画に実効性がないなど問題は山積みです。投資規模1兆円とされる原発新設は、安全対策や資材高騰などで、さらに上振れする見込みです。政府は維持費を含めて20年間、電力会社に収入保証を行う制度を導入し、消費者の電気料金に転嫁する方針です。
 脱炭素と言うなら、ひとたび事故を起こせば、深刻な放射能汚染を起こす原発ではなく、再生可能エネルギーこそ最大限活用すべきです。しかし現実には原発稼働が最優先され、再エネは「出力抑制」されています。環境省の調査でも再エネの潜在量は、現在の電力使用量の7倍です。太陽光や小水力、風力など”地域密着・地産地消”型の再エネこそ優先使用を義務付けるべきです。断熱住宅など省エネ推進も併せて地域の雇用を増やし、中小業者も力を発揮できます。
 参院選では、原発回帰の自公与党を過半数割れに追い込みました。しかし、野党にも原発固執の勢力がいます。世論と運動で原発回帰の逆流を押し返し、原発ゼロと再エネ普及をめざしましょう。

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