全中連 コロナ危機打開を 消費税減税、インボイス制度実施中止、業者支援強化など求める|全国商工新聞

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インボイス導入中止を 国会内集会、幹事会

衆院第2議員会館で開かれた全中連の国会内集会

 国会内集会では、岡崎民人事務局長(全国商工団体連合会事務局長)が司会を務め、住江憲勇代表幹事(全国保険医団体連合会会長)が開会あいさつ。辞任を表明した菅義偉首相について「政権を投げ出し、逃げ出した」と述べ、「無為無策、後手後手続きのコロナ対策」を批判しました。
 国会情勢を報告した大門実紀史参院議員(日本共産党)は、菅政権の“自滅”を「安倍・菅政治全体が追い詰められたもの」と指摘。「消費税減税、インボイス中止は、政権交代で実現するしかない」「歴史が動くとき、野党連合政権に向け、大きな運動を広げましょう」と訴えました。
 東京商工リサーチの友田信男常務取締役の講演に続き、各業界の実態と要求について交流しました。
 「10月からインボイスの登録が始まるが、建設業界の一人親方は単価切り下げや取引からの排除を心配している」(全建総連東京都連)
 「昨年来、大規模イベントなどがほとんどなくなった。入場者を50%減らせというなら、50%分の補償をしてほしい。文化芸術基本法の改正を」(日本エンターテイメント連盟)
 「潜在的に廃業・倒産の恐れがある中小企業が多い。消費税の5%への減税が一番効果がある」(東京税経新人会)
 「今年はコメが大暴落している。こんな中でインボイス導入は大打撃だ。総選挙でアベ・スガ政権を終わりにしよう」(農民連ふるさとネットワーク)

全中連

 全国中小業者団体連絡会(全中連)は1972年10月、71年の「ドルショック」などの影響による中小業者の困難を打ち破ろうと、結成されました。中央団体は全商連、全国保険医団体連合会、全国FC加盟店協会で構成し、県連絡会や県商工団体連合会(県連)なども地方団体として参加。春秋に開く業者大会、業界懇談会、議員要請・省庁交渉などで共同行動を広げています。

【講演】コロナ対策に消費税減税を
東京商工リサーチ常務取締役 友田 信男さん

 コロナ対策の影響で、今のところ倒産件数は抑制されているように見える。しかし、今後ゆっくり増えていく可能性がある。
 企業倒産は、不景気だから増えるのではなく、業績悪化と資金調達にずれが生じることから起きる。20 21年上半期(1~6月)の倒産の9割は、先の見えない破産が占めている。
 同時期、銀行の107行中87行が「貸倒引当金を積み足している」と回答した(グラフ)。これはリーマンショックの時より多い。つまり、回収不能な融資が増大している。
 実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」が増えたが、中小企業の3社に1社が「過剰債務」と訴えている。とりわけ、飲食、宿泊、娯楽、洗濯・理容・美容・浴場、衣類など小売り、生活関連サービス業などでは6割以上が「過剰債務」だ。
 「廃業を検討していますか?」というアンケートには、コロナ禍になってから中小企業の8%程度が「考えている」と回答している。アパレル、飲食などでの廃業検討の比率が高い。
 国税の新規発生滞納額では、20年は税額で消費税が3456億円と最も大きい。約6割を占めている。
 ドイツでは20年、付加価値税の税率を半年間引き下げたことで、GDP(国内総生産)を上向きにすることができた。日本で消費税を10%から5%に引き下げれば、その効果は年間13兆円、全国民に対する10万円支給に相当する。
 個人消費の引き上げのため、一番手っ取り早いのは消費税率の引き下げ、そして給与の引き上げだ。中小企業は、大企業と違い、内部留保がなく、業績を上げないと給与も上げられない。経営者の方々が将来のビジョンを話せるようになることが大切だ。

業者支援の強化を求め6省庁と交渉
解消されない不備メール 意味不明の定型文見直す 経産省・中企庁 支援金の対応改善へ

不備ループが解消されない現状を訴え、改善を求める、新宿民商の福祉美容師の会員(画像一部加工)

 経済産業省・中小企業庁交渉では、岡崎民人・全中連事務局長を団長に6人が参加。新型コロナウイルス感染症の拡大と長期化により苦境に立たされる中小業者に対する支援の改善と拡充を求めました。
 冒頭、「パラボラアンテナの取り付け工事業者に自社製品の画像を求める不備メールが来る。申告書に収入記載がない場合は収支内訳書での代替が認められるにもかかわらず、申告書を出せとメールが来る」など、一時・月次支援金で、従前と変わらない対応が続いている事例を挙げ、「もう一段、二段、実情に合った対応が求められている」と重ねて改善を求めました。
 移動美容車を購入し、東京都世田谷区などから美容許可を得て、訪問美容を行う新宿民商の福祉美容師の会員は、「通帳とひも付く毎月の請求書・領収書を出せと言われる。出せる書類は全て出したが、事業自体を疑われているようだ。出したものを見てくれているのか。コロナ禍で仕事を自粛せざるを得ない状況で、支援金を得られるかどうかは死活問題。6年間まじめに仕事してきたが、私が給付に値しない人間だと、全て否定されているように感じる」と不備ループが解消されない現状を訴えました。
 中小企業庁の担当者は「事務局で対応不十分なところがあって申し訳ない。疑っているということではなく、領収書・台帳の整合が取れないということで連絡させていただいていると思うが、振り込みの手数料が入っている・いない、領収書の日付がずれているなど機械的に見て審査を行っている可能性もあるので、確認させていただきたい」と善処を約束しました。
 不備ループ解消については「日々改善させていただいているが、定型文で分からないところを無くすよう対応していくようにする。おかしいのではないかと指摘を受けた申請者については事務局で対応するようにする」と述べました。
 持続化給付金の「再審査について」は「法律的に『処分』に当たらないと考えており、任意の再審査をという要望だが、現状は委託事業者の事業は終わっており、再審査する場合に、どこに委託するのか、予算はどうするのか、現時点で、そのめどが立っていない」と再審査できないとの考えを明らかにしました。

財務省 公庫の条件変更柔軟に対応する

財務省に要請書を渡す全中連の富塚昇代表幹事(左)

 財務省では、消費税5%への引き下げやインボイス制度の中止、日本政策金融公庫の「特別貸付」延長などを要請しました。「持続可能な社会保障制度のため税率引き下げは考えていない」「複数税率の下で、適正課税のためにインボイスは必要」などの回答に、富塚昇代表幹事らは怒りを込めて実態告発。「社会保障は改悪と負担増ばかりで、法人税引き下げの穴埋めに使われたのが実態」「免税業者を取引から排除し、廃業を加速させるインボイスが適正課税のためというのは本末転倒」と訴え、「コロナ禍で大変な時こそ消費税減税、インボイス中止が必要」と迫りました。
 省側は政策公庫に対し、事務連絡「事業者の実情に応じた資金繰り支援策等の徹底について」を発出していると述べ、「緊急事態宣言の再延長等の影響を踏まえ、積極的な資金ニーズの確認や、資金繰り相談など、きめ細かな支援を行う」「条件変更は、返済期間・据え置き期間の延長など柔軟な対応を継続する」と答えました。

金融庁 資金繰り支障がないよう万全に

 金融庁では、岩瀬晃司代表幹事が、新型コロナ感染の急拡大・長期化を踏まえ、①新規融資や追加融資、既往債務の据え置き期間や返済期間の延長②金融機関がコンサルティング機能を発揮し、中小業者の経営を支援すること―などを要望。「コロナ禍で経営危機に直面している中小業者への資金繰り支援が求められている」と訴えました。
 庁側は「事業者への資金繰り支援の徹底が重要と考えている」「金融機関に対して、コロナ禍の影響を受けている事業者への新規融資や条件変更など最大限柔軟な対応を要請してきた。現場に浸透させ、資金繰りに支障が生じないように万全を期したい」と答えました。

総務省 不当な事例には考え方回答する

 総務省は、生存権を否定する納税誓約書を書かされている自治体をはじめ、「年金の全額差し押さえや分納中に売掛金を全額差し押さえする、納期限を前倒しする繰り上げ徴収」など不当な徴収行政の実態を告発。「滞納整理は、実情を的確に把握し、滞納実績も踏まえて臨むことが基本」「現場で起きていることに対して、通知の文言や研修の場などで、地方団体により分かりやすく伝わる方法を工夫したい」と回答。「不当な事例があった場合は、総務省企画課に問い合わせれば、法解釈上の考え方について回答する」と約束しました。

デジタル庁 個人番号カード取得強制しない

 デジタル庁では、運営に際し、国民が自ら情報をコントロールできる権利を保障し、プライバシーをはじめ個人の尊厳を守ることなどを要望。庁側は「マイナンバー(個人番号)カードの申請が4割、交付が約37%となっている」と述べ、「個人情報保護を図りながら、データの利活用を推進する」「マイナンバーカードは強制されて取得するものではない」「デジタル化に対応できない国民を、行政サービスから排除することはない」と答えました。

厚労省 自治体の判断で国保減免は可能

 厚労省では、公立・公的病院の統廃合計画の見直しや、病床削減計画中止の要望に対し、「必ずしも一律に病床削減を求めるものではない」と答えました。
 国民健康保険(国保)制度のコロナ特例減免の対象について、2019年分との比較で、売り上げが30%以上の減少にまで広げることは「公平性の観点から適当でない」としつつ、「自治体の個別判断により、保険料の減免は可能」との考えを示しました。
 滞納処分については、市町村は個々の状況を把握し、納付相談を行い、分割納付に応じるなど、きめ細かに対応することや、生活を著しくひっ迫させる恐れがある場合は、滞納処分の執行停止を適用させることなどを自治体職員に周知していると回答しました。

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