全国商工新聞

看過できない租税回避

 先進7カ国(G7)の財務大臣会合は6月5日、世界の最低法人税率を15%にすることで合意した。これは、税率の決定が各国の自由な裁量に委ねられてきた状況からの大きな転換となる。興味深いことにグーグル、アップル、アマゾンなども、この合意に賛意を表明した。
 過去数年間、OECD(経済協力開発機構)を中心に法人税の在り方について国際的な改革論議が積み重ねられてきたのは、多国籍企業の租税回避が、もはや看過できないレベルに達したからだ(表)。彼らはタックスヘイブンを活用しつつ、複雑な租税計画を構築することで、グローバルな税負担の極小化を図る。他方、国家は多国籍企業を惹きつけるため税率の引き下げ競争に走った。結果、国家は税収を失って福祉を支えられなくなり、税制は逆進的となってしまった。

 この背景には、経済のグローバル化とデジタル化がある。多国籍企業は国境を越えて、最も有利な国に立地する。その際、税負担の多寡が多国籍企業の立地にとって重要な考慮事項となる。主要国で法人税率が12・5%と最も低いアイルランドに、アメリカの多国籍企業の欧州本社が集中しているのは、その証左である。
 だが国家権力は、国境を越えて、タックスヘイブンに計上された多国籍企業の利益に課税する権限を持たない。そこで近年、国際協力の枠組みで効果的に多国籍企業利益に課税できる仕組みを創設すべきとの認識が強まっていた。

国際的な機運最高潮に

 これに応えようとしたのが、OECDにおける法人税制の改革論議である。具体的には2点ある。
 第一は、台頭するデジタル企業の収益に対し、アメリカ以外の国々が課税できない現在の国際課税ルールを修正し、新たに課税できるようにする「デジタル課税」の導入提案である。
 第二は、際限のない租税競争に終止符を打つため、国際的に共通の最低法人税率を導入する提案である。
 トランプ前政権の下でアメリカは、OECDでの議論に距離を置いたため、国際合意は座礁するかに思われた。だが、バイデン政権の成立で局面は一挙に打開された。新政権が「租税競争を終わらせる」ため、国際合意に前向きな姿勢に転じたからだ。彼らは上述の15%での最低法人税率を提案したほか、利益率と売上高を基準に、世界で100社程度に絞ってデジタル課税を実施する提案を行った。
 幾つかの課題は残るものの、アメリカを含め国際合意への機運が、これほど高まった瞬間は他にない。来月に予定されているG20会合で新しい国際課税ルールで最終的な合意が成立するか、大いに注目される。


 >> 最低法人税率G7で合意(下) 英米で引き上げ先取り 京都大学大学院教授・諸富 徹さん

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