全国商工新聞

コロナ支援の成果還元

 最低法人税率を15%で導入することで、国際合意が成立する見通しとなったことが、法人税率引き上げにも影響を与え始めている。イギリス政府は今年3月3日、2023年4月から、大企業向けの法人税率を現行の19%から25%に引き上げると発表した。現行の19%という法人税率は、OECD加盟国の中でも12・5%のアイルランドに次いで低い。それを転換して法人税率を引き上げるのは、1974年以来、約50年ぶりという。
 その理由は、コロナ禍で国民の生活を支え、経済を回復させるために、政府が投じた巨額の対策費用の財源を調達することである。では、なぜ他の税ではなく、法人税増税なのか。
 英国のスナク財務大臣は議会に対して、政府支援のおかげでコロナ禍にもかかわらず、企業は収益基盤が回復したのだから、その成果の一部を法人税という形で政府に還元してほしい、しかも、企業利益の大きさに応じて税負担を分かち合うのが公平だと述べている。
 アメリカもまた、バイデン政権が法人税率を現行の21%から28%へ引き上げる方針である。これは、今年3月に発表された「米国雇用計画」と名付けられた約200兆円にも及ぶ巨大なインフラ投資計画の財源を賄うためである。

引き下げ競争の終焉へ

 両国とも、巨額の財政支出を賄う財源調達手段として、法人税増税を考えているわけだ。だが単独での法人税増税は、自国からタックスヘイブンや低課税国への企業流出を引き起こすかもしれない。そうした事態を防ぐためにも、米英両国にとって国際的に共通の最低法人税率で、合意が成立する必要があったのだ。
 もちろん、各国で格差拡大が進んでおり、低所得者に重い負担を課す消費税(付加価値税)や、勤労者に重い負担となる所得税や社会保険料負担の引き上げが困難な状況だということも、法人税増税が選択される理由となっている。実際、コロナ禍で旅行業、観光業、飲食店など接触型サービス業が大打撃を受け、多くの人々が職を失って貧困に陥っている。
 対照的にアメリカでは、コロナ禍でもGAFA(グーグル、アップル、フェィスブック、アマゾンの4社)等のデジタル大手企業は、業績を大きく伸ばしている。これに対して、政府の財政赤字は各国とも大きく膨らんでおり、当面は公債発行で乗り切るが、いずれ、それを誰がどれだけ、どのような形で負担すべきなのかという問題に直面せざるを得ない。
 英米両国における法人税増税論議はこの問題に一石を投じるものである。また、過去40年以上にも及ぶ「法人税引き下げ競争」時代に終焉をもたらす可能性もある点で、日本にとって目が離せない。

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