全国商工新聞

 自立的で個性豊かな地域社会の形成に、小規模企業の活力が最大限発揮されるよう、その「事業の持続的な発展が図られる」よう振興を行わねばならない―。2014年6月、小規模企業振興基本法(小規模基本法)が制定され、中小企業の9割を占める小規模企業(従業員20人以下)の振興に光が当てられました。この分野での基本法制定は、中小企業基本法以来、実に51年ぶり。その後、さまざまな課題を抱えつつ、全国の自治体で振興条例が広がる画期となりました。

小規模基本法を画期に振興条例の策定広げる

小規模基本法制定へ参院経済産業委員会で意見陳述する全商連の太田義郎副会長(当時)=2014年6月
オーストリア・ギュッシング近郊のシュトレーム村を訪れた全中連の欧州視察団=2012年10月

 1999年の中小企業基本法の改定は、その政策目的を「大企業と中小企業の 格差の是正」から「活力とやる気のある中小企業支援」へと転換を図るものでした。他方、同時期に欧州では小企業重視へと大きな政策転換が進み、2000年6月、EU理事会で「小企業は経済成長における中心的な活力である」との「欧州小企業憲章」が採択。同憲章は、小企業を①欧州経済を支える存在②雇用の源泉③ビジネスアイデアの苗床―と捉え、「小企業を最優先の政策課題として位置付けられて初めて、欧州がニューエコノミーの先駆けとなろうとする取り組みが成功する」と述べています。
 この動きをいち早く学ぼうと、全国商工団体連合会(全商連)などで構成する全国中小業者団体連絡会(全中連)は12年10月27日~11月5日、オーストリアとドイツの6都市を訪れる欧州視察団を派遣。その成果を踏まえ、中小企業政策の転換を求めて運動を進めました。
 EUの小企業憲章から下ること10年、日本でも民主党政権下で「中小企業憲章」が閣議決定(10年6月)。翌年の東日本大震災を契機とした生業再建の運動は、政権奪還をもくろむ自民党にも、中小企業政策の再構築を迫ることになりました。
 しかし、中小企業予算は増えず、大企業優遇が加速するなど、憲章の理念を生かした政策の展開もないことから、全商連は「日本版・小企業憲章(案)」を提案(11年7月14日)。多彩な団体と懇談を広げ、全国商工会連合会からは「『中小企業憲章』は具体化されていない。私たちは小規模企業に焦点を当てた基本法を作るべきだと提案している」との反応が寄せられました。
 一方、課題はありつつも民主党政権は、「中小企業憲章」の理念を生かそうと12年、「『ちいさな企業』未来会議」を設置。同年12月、自公への政権交代があったものの、「小さな企業にもう一度、焦点を当てていこうという動きが継続」(三井逸友・嘉悦大教授、「ちいさな企業」未来会議メンバー)され、14年3月の小規模基本法の国会上程に至ります。
 小規模基本法は、全商連の太田義郎副会長(当時)が、参議院で参考人・意見陳述を行ったこともあり、社会保険料の負担軽減などを求める付帯決議も付き、14年6月に成立。小規模企業の支援が国と自治体の責務になりました。
 全商連は同年9月、小規模基本法を生かした施策を提案しようと、全自治体要請を提起。翌年実施の「経営・暮らし・健康の向上」全会員調査結果も生かされ、住宅リフォーム助成の延長や、店舗リニューアル助成も広がりました。
 小規模基本法を受け、中小企業振興条例の制定が燎原の火のように広がり、新たに制定した自治体は25都道県に。小規模企業の支援を盛り込んだ改定・創設も相次ぎました。
 18年末までに京都府と高知県を除く、45都道府県で条例の制定と充実に結実。条例の検討委員に民商役員が選任され、群馬、静岡、愛知、奈良、広島の各県連が条例上の支援団体にも認定されました。
 しかし、“振興策”では一定、前進したものの、“規制策”では課題も残され、大企業による中小業者いじめは眼中に置かれませんでした。全商連は、大企業への民主的な規制と、公正な取引ルールの確立へ向け、業種別・問題別対策を強めていきました。


 >> 民商・全商連のこの10年(5)国保改善の運動

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