「消費税は社会保障のため」はうそ? 国民負担が断トツ カフェ店主ナツさんに湖東税理士が解説|全国商工新聞

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 コロナ禍の中で、消費税の負担が重くのしかかっています。5年前にカフェを開業し、民主商工会(民商)に入会したナツさんも、悲鳴を上げています。「消費税は本当に社会保障のために使われたの?教えて、湖東先生」―。元静岡大学教授の湖東京至税理士がナツさんの疑問に答えます。

ナツさん:コロナ禍で消費税の納税が大変
湖東先生:膨大な滞納を生む欠陥税制です

 ナツ 湖東先生、聞いてくださいよ。今年の申告はコロナ禍の影響で売り上げが大幅に減って、赤字というのに、20万円以上の消費税を払わなくちゃいけないんですよ。赤字でも納めなきゃならない消費税って、本当におかしい。
 湖東 国税の新規滞納額で一番多いのは消費税です(図1)。そもそも膨大な滞納額を生み出す消費税は欠陥税制なんですよ。

 ナツ 社会保障のために消費税は必要と思っている人もいるでしょう。でも、民商で学習すると、消費税が導入されてから社会保障が充実するどころか、社会保障は改悪されていました(表1)。消費税導入以前の1988年と20年を比較すると、国民健康保険(国保)料・税(一人平均)は5万6372円から9万233円に値上げされ、病院に払う医療費は1割負担が3割負担に。国民年金の保険料(月額)は7700円が1万6610円と2倍以上も上がって、厚生年金の支給開始年齢も60歳から65歳に引き上げられました。

 湖東 そうなんですよ。これまで消費税は、社会保障費にほとんど使われていないんですよ。
 消費税法には「消費税は……医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」(1条2項)と書いてあります。この条文を見ると、消費税は全て社会保障費に充てられていると錯覚させられますが、ごまかされてはいけません。
 ナツ どういうことですか?

ナツさん:社会保障費はほとんど増えてません
湖東先生:金の穴埋めや一般歳出に

 湖東 消費税は社会保障のためにだけ使われる目的税ではなく、所得税や法人税と同じ一般財源として、全ての歳出予算に充てられる税金なのです。それなのに消費税法に「社会保障に充てるものとする」と書いたのは、国民をだますためです。一般財源であることは、政府の歳入・歳出の説明からも明らかです(図2)。

 ナツ じゃ、消費税は社会保障のために使われてないんですか?
 湖東 その証拠を示します。消費税が導入される前の1988年度と89年度予算の社会保障費と税収を比較すると(表2)、89年度の消費税収は3.3兆円。88年度の社会保障費は10.1兆円で、89年度は10.4兆円で0.3兆円しか増えていないので、消費税が社会保障費にほとんど使われず、国債発行額減少や、増加する一般歳出に使われたことが分かります。

 消費税が3%→5%の96年度と97年度(表3)、5%→8%の13年度と14年度(表4)を比べても、消費税収入が3.2兆円(97年度)、5.2兆円(14年度)と増えたにもかかわらず、社会保障費は0.2兆円(97年度)、1.4兆円(14年度)の増加にとどまりました。

ナツさん:じゃあ社会保障の財源って何?
湖東先生:なんと国債。給付は保険料で

 ナツ じゃ、社会保障費は何でまかなわれているのですか?
 湖東 それを明らかにするため、消費税導入から20年までの31年間の税収等の歳入合計と社会保障費合計を比較します。
 消費税や法人税、所得税、その他の税と国債発行額の31年間の合計は2583.9兆円。一方、社会保障費の合計額は688.3兆円ですから、339兆円の消費税だけでは到底まかなえませんね。社会保障費をまかなった主要財源は、何と947.7兆円(歳入合計の36.7%)の国債だったのです(表5)。

 ナツ えっ、そうだったんですか。びっくりです。
 湖東 しかもですね、社会保障給付を支えているのは消費税じゃなく、皆さんが負担している社会保険料なんですよ。
 消費税が導入された89年度の社会保障給付額は、88年度の42.4兆円から45.0兆円と2.6兆円増え(表6)、その分の財源は国民負担増(2.8兆円)でまかなわれ、消費税を含む公費負担は16.2兆円から15.3兆円へと、逆に減っています。

 3%→5%の96年度と97年度、5%→8%の13年度と14年度、8%→10%の18年度と20年度(19年10月から引き上げられたため、10%が1年間に及ぶ20年度と比較)を比べてみても、公費負担は0.4兆円増(97年度)、1.6兆円増(14年度)、ゼロ(20年度)と、微増か同額なのです。
 結論として言えることは、社会保障給付を支えているのは国民負担が断トツということです。つまり、皆さんが払っている社会保険料や年金保険料、介護保険料などによって支えられているのです。

湖東先生:世界の流れは消費税減税、法人税増税です
ナツさん:5%へ緊急署名を集めよう

 ナツ 「消費税によって社会保障は支えられている」というのは間違い?「消費税を増税しなければ社会保障はまかなえない」というのも、うそなんですね。コロナ禍で、この先、事業を続けられるのか、中小業者は崖っぷちですよ。消費税は減税すべきだわ。
 湖東 そうですね。コロナ禍の緊急経済対策として世界で56の国と地域が日本の消費税に当たる付加価値税を引き下げています。
 諸外国では、コロナ禍で法人税引き上げの動きもあります。イギリスでは、半世紀ぶりに大企業向けの法人税率を現行の19%から25%に引き上げる(23年4月から)ことを発表。アメリカのバイデン大統領も連邦法人税率を現行の21%から28%への引き上げを提案し、イエレン米財務長官は、各国の法人税引き下げ競争を終わらせ、G20が協力して共通の最低税率を設ける国際的な取り組みを呼び掛けています。
 日本では、菅政権は法人税引き上げや消費税引き下げに背を向けていますが、消費税引き下げは野党だけでなく、自民党内からも声が上がっています。
 ナツ 消費税5%への引き下げを求める緊急署名をもっとたくさん集めることですね。
 湖東 民商の皆さんの出番です。消費税を減税・廃止させるため、一緒に頑張りましょう。


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