どう見る高市内閣 ③社会保障|全国商工新聞

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社会保障研究者 芝田英昭さん

 122兆円を超える戦後最大の予算案の審議は衆議院で59時間足らずで可決され、参議院へ送られた。衆院議席の3分の2以上を占める巨大与党は非民主的姿勢をあらわにし、国民生活を破壊しようとしている。政府が国会提出した「健康保険法等一部改正法案」の主な問題点を指摘する。

OTC類似薬は約5割の負担に

 OTC(市販)類似薬の鼻炎、腰痛・肩こり、解熱・痛み止め、風邪症状全般等の77成分、約1100品目の処方薬を対象に、薬剤費の4分の1を保険給付外とする「一部保険外療養」を創設するとした。70歳未満の現役世代の場合、薬剤費に対して現在3割の一部負担が実質的に約5割(47.5%)となり、受診抑制が懸念される。同様の成分効能をうたう市販薬があると、医師が処方した薬剤を保険給付対象外とする手法の導入は、今後、他の薬剤や療養給付本体にも拡大される可能性が高い。
 後期高齢者医療の保険料や一部負担金算定に、金融所得(金融資産)を反映させるとするが、将来、全世代に拡大される可能性もある。被用者医療保険では、保険料が給与所得のみを反映していることから、制度間の整合性を損なう。現役世代も、いずれ高齢世代になることを考えれば、世代間対立をあおりつつ、まずは高齢者から改悪を狙う政府の思惑が透けて見える。
 そもそも日本の税制は財産運用・不労所得等を分離し、低い税率を課していることに大きな問題がある。金融所得を「保険料や一部負担算定に反映」させるのではなく、総合累進課税を課すなどの税制改革として議論を進めるべきである。
 国民健康保険(国保)の子どもに係る均等割保険料の5割を軽減する対象を高校生までに拡大する改正は国民的運動の一定の成果と言える。
 しかし、均等割そのものに大きな問題がある。国保料は応能分(所得割、資産割)と応益分(被保険者均等割、世帯別平等割)から構成されるが、均等割は世帯人数が多くなるほど増える極めて不平等な「人頭税」である。合計特殊出生率の低下に危機感を持つ政府が、世帯人数が増えると国保料が増す仕組みを維持するのは「子どもを産み育てるのを諦めろ」と圧力をかけることで、大きな矛盾である。国保の応益割の廃止こそ必要である。
 重度な病気・怪我や長期治療が必要な場合に、患者の負担を一定額までに抑える高額療養費制度は、厚労省の計画では、今年8月と来年8月の2段階で引き上げ、70歳未満では所得に応じて7~38%、引き上げる。これまで月単位だった上限額に、新たに年上限額を設定する。年収約370万円未満の70歳以上の高齢者の外来医療費の月上限を設定する「外来特例」は、現在の月1万8千円を8月から月2万2千円にし、来年8月から2万8千円と1.55倍に引き上げる。厚労省の試算では、これらにより約2450億円の医療費を削減し、うち約1070億円を「受診控えによる効果」とする。必要な人が、いつでも、どこでも医療が受けられる「皆保険体制」を掘り崩す大改悪と言わざるを得ない。

保険料減わずか命が犠牲になり

 上野賢一郎厚労大臣は3月6日の記者会見で、こうした改革等で社会保険料が加入者1人当たり年間約2200円削減されると示したが、月当たり180円程度である。一方で、高額療養費制度の見直し、OTC類似薬の負担見直しが、国民の受診抑制を伴う改革であることを勘案すると、わずかな保険料削減のために国民の命が犠牲になることは到底容認できない。
 今回、高市政権で設置された「社会保障国民会議」は何ら法的根拠を有しない首相の私的会議体である。給付付き税額控除や食料品の消費税率ゼロを含めた「社会保障と税の一体改革」など社会保障の重要な課題を丸投げするのは、国権の最高機関である国会審議を軽視した巨大与党の傲慢と言わざるを得ない。

 >> どう見る高市内閣 ①税制改革
 >> どう見る高市内閣 ②大軍拡

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