子育てママらの居場所づくりでサロンを開業 体の不調を癒やし、相談も|全国商工新聞

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 「気持ち良すぎました。細やかな気配りに癒やされ、施術も確かで、調子の良い状態が続いています」「30分コースなのに、子どもの”ギャン泣き”が落ち着くまで待ってくれた。肩が軽く、目がすっきりした」―。大分市内に、子育て世代の女性を中心に人気のリラクゼーションサロンがあります。オープン2年目、大分民主商工会(民商)青年部の吉田ゆきのさんが営む「Vive(「生きる、生き生きとした」の意味)」です。2歳と5歳の男児を育てながら、夫の剛毅さんが代表を務める造船関連会社「㈱吉辰」のサロン部門として営業。屈託のない笑顔の裏には「子育てママを癒やせる場所をつくりたい」という強い思いがあります。

青年部での交流に期待
大分民商青年部 吉田ゆきのさん=リラクゼーションサロン「Vive」

お客に優しく声を掛けながら施術する、大分民商青年部の吉田さん
施術台の隣にベビーベッドを置いています
遊び盛りの子ども向けにキッズルームを用意
お客一人一人にウエルカムボードを手書きしています

 Viveが提供する「ドライヘッドスパ」は、水やオイルを使わずに頭部をマッサージする施術。髪を濡らしたり、乾かしたりする必要がないため、手軽に利用できます。肩・首の凝りや頭痛、眼精疲労や不眠症状などを改善し、「施術後は視界が開く感じがする」と好評。1~2週間、効果が持続します。ベビーベッドやキッズルームを完備し、「お子様連れ大歓迎」をアピール。顔や全身のマッサージにも対応し、20~60代の女性リピーターをつかんでいます。

人ごとに思えず

 行動力がある、ゆきのさん。2017年に製菓の専門学校を卒業し、パティシエとして沖縄の小浜島(竹富町)のリゾートホテルに就職しました。しかし、「テレビの天気予報の地図で、画面上には大分と沖縄が近くに配置されていたので、割と近いと思い込んで…。行ってみたら、飛行機を乗り継いで8時間かかりました」と、そそっかしい一面も。
 2019年に妊娠が発覚しましたが、相手の男性が認知せず、単身で大分市の実家に戻ることを決断。翌20年4月、未婚の母となりました。
 それから大変な日々が始まりました。一日中、子どもから目を離せず、思い通り動ける時間は皆無。日中、人と話す機会は減り、夜は眠れず、孤独を感じるように…。子どもを連れて美容室に行くと煙たがられ、サロンには連れても行けませんでした。
 「今思えば、産後うつ予備軍だったと思います。子どもをあやめてしまうお母さんのニュースを見ると、人ごとに思えませんでした。『ママ、大変だったんだな…もう限界だったんだな。ニュースではママのことばかりを取り上げるけど、パパはどこ行ったの?』って」
 その後、アルバイトを始めたコンビニエンスストアで、常連だった剛毅さんと出会い、2022年に結婚、翌23年2月に第2子が誕生、家族が増えました。

最年少で資格を

 「私の場合、両親と兄に支えられて何とか頑張れたけど、孤独なママはたくさんいる。世の中のママの支えになりたい」。そう考えるようになった折に、知人の紹介で「ドライヘッドスパ」の存在を知り、「子連れで行けるサロンを作ろう!」と決意。資格を取得するため、朝、子どもたちを保育園に送った足で、近場では熊本県にしかなかったアカデミーへ向かい、本格的なドライヘッドスパの講習を午前11時~午後3時まで受講。再び、3時間かけて家に戻り、ママとなって家事・育児をこなしました。「講習を受けたら、すぐに夫の頭で練習。サロンのメニュー化のため、とにかく数をこなしました」。2カ月後、最年少の26歳で資格を取得し、2024年8月にViveをスタートさせました。「育児との両立や資金繰り、集客など、困り事がたくさんありましたが、背中を押してくれた夫に、とても感謝しています」
 「お子様連れ大歓迎」を打ち出すと「子どもの近くで施術を受けられて安心」と喜ばれました。施術中、日頃の疲れから眠ってしまう人もいますが、せきを切ったように子育ての悩みを打ち明ける人も。自身の体験談をアドバイスしています。「私自身も、こういう場所が欲しかった。この仕事を始めて良かった。忙しいけれど楽しい毎日です」
 美容業界最大の展示会「ビューティーワールドジャパン」に2度、出店し、経験を積みました。技術講師ができる資格も取得。
 「サロンを開業したい」という大分在住のママたちが、近隣で資格を取得できる環境づくりをしています。

時代に合う商売

 民商には昨年4月、労働保険加入の相談で剛毅さんが入会し、その後、ゆきのさんが青年部に入部しました。同じ民商青年部で、全商連青年部協議会(全青協)で副議長を務める井上優治さんは「吉田さんはインスタグラムの使い方もうまいし、時代に合った商売をしている。今、民商でSNS委員会を立ち上げる相談をしていて、吉田さんも誘ったら、快諾してくれました。自分なりの”民商の良さ”を、ゆっくり見つけていってほしい」と期待を寄せます。
 11月16日に開催される全青協第50回定期総会に参加する予定です。「青年部がどんな活動をしているか、まだよく知らないので、各地の取り組みを聞きたい。同世代の業者の皆さんとの交流も楽しみです!」
 笑顔が、ひときわ輝きました。

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