安心して商売できるよう力を合わせ
業者婦人の仕事内容や課題、やりがいを確認しながら、事業を営む中で直面したジェンダー差別や、家族従業者の給与を経費として認めない所得税法第56条による不利益などの問題を明らかにします。
商売に家事に多忙56条の不利益半数
業者婦人は、家族経営の一員として事業に従事するだけでなく、家事・育児・介護などのケア労働も担っており、1日の時間の使い方は極めて複雑です。
早朝からの仕込みや開店準備、閉店後の片付け・帳簿作業など、表面的な営業時間以上に長時間労働が常態化しやすく、そこにケア労働が重なることで、身体的負担や健康リスクが高まり、廃業意向とも連動していると考えられます。1日10時間以上働く人は6%もおり、副業を持つ人の8・4%は副業だけで8時間以上働いています。
従事している業務を三つまで尋ねたところ、業者婦人が複数の業務領域を受け持つマルチプレイヤーであることが分かります(図)。持続可能な働き方と経営を両立させるためには、労働時間の見直しや代替人員の確保、地域内でのケア支援策など多面的な支援が必要です。
家業で自分が働いた分の報酬(給料)について、38・7%が取れておらず、「専従者控除のみ」が11・2%、特に白色申告者では「とれていない」が49・8%と高い状況です。「
56条があることで報酬が認められず、不利益を感じたことがある」と回答した人は半数以上に上ります。具体的には「融資」の際を挙げた人が14・4%に上りました。保険加入や保育所の入所など「保障面」で不利益が生じたという回答も10人に1人が寄せています。
「事業を営む業者婦人の実態」分野の分析に当たった、名古屋市立大学の宮下さおり教授は、56条の問題を「税法上の認定は、支払う税金の額を左右するということを超えて、まさに公的な意味合いをきわめて色濃く持ち、社会に広い波及力を持つのです。その人は就労しているのか。どの程度のものなのか。働いている事実があるのに公的な証明はこれを認めない―こうした事例から分かるように、現行の税制は業者婦人の苦境を作り出している」と述べています。

開業の動機は多様労働と家庭を両立
開業の動機は「自分のペースで働ける」38・7%、「好きな仕事」37・0%、「自分の能力・資格を生かせる」29・9%といった主体的・積極的な動機が上位にある一方、「家業を継いだ」15・1%、「勤務先から独立」7・8%など、地域社会の産業構造や家族経営を承継する起業も一定の割合を占めます。注目すべきは「家事・育児・介護と両立できる」8・0%、「結婚・出産」1・5%といったライフステージと連動した理由が存在する点です。
地域社会とのつながりを維持しつつ、労働と家庭生活を両立しやすい働き方として自営業の道を選択する傾向が見えています。
女性事業主が経験したジェンダー差別は「融資関係」で4・4%、「取引関係」で5・7%、「従業員との関係」でも2・8%が経験しています。「許認可関係」で不利益やハラスメントを受けたことがあると回答した人は38人もいました。許認可は公的機関が関わっている領域であり、女性の起業を支援する自治体が増えても、実際の公的支援が性差別的な意識を引きずりながら行われていることは注視しなければなりません。
今回の実態調査は、業者婦人が経済的役割と社会的役割を多面的に担う地域社会になくてはならない存在であることを改めて確認するものとなりました。
自営業で良かったと思うことでは「年齢に関係なく働ける」55・5%、「自分のペースで仕事ができる」50・2%と高い一方、「もうかること」は1・9%に過ぎません。経済的利益よりも、柔軟性・自律性・地域とのつながりといった非金銭的な価値が”働く動機”となっている実態が浮かび上がります。
同時に、業者婦人に低所得層が集中し、税や社会保険料の重い負担で利益が出にくい構造になっていることや、国民健康保険制度に傷病手当・出産手当が無いなどの矛盾、56条による不利益、ジェンダー差別が根強く残る労働分担の問題なども浮き彫りにしました。
調査結果から業者婦人の困難の背後にある政策課題を明らかにし、業者婦人が安心して商売ができるように力を合わせることが求められます。
寄せられた「ひとこと」から
◎…設計事務所をやっていますが、まだまだ女性ということで差別され(取引会社、施主など)、良い提案をしても契約までいかないケースが多い。(福岡・建設関連・60代)
◎…女性への差別が、雇用、子育て環境、地域活動、政治活動に残っています。少子化が進む中で、女性の職場環境の改善が急務です。男性の多い政治の現場に、女性議員をもっと増やすべきだと思います。(山口・生活関連サービス・70歳以上)
◎…子育てがしやすいように、税金を減らして収入を増やし、休める時間が必要だと思います。児童手当は1人当たり月に1万円(3歳以上高校生年代まで)で足りるわけがありません。幼少期の食事はとても大事です。給食の質を良くしてほしいです。(長崎・製造・販売・39歳以下)

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