2025年下期営業動向調査 高騰長期化で収益低迷 インボイス登録強要も|全国商工新聞

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 「仕入れ値高騰の長期化で収益が低迷」「インボイス特例廃止を見越した動きも」―。全商連付属・中小商工業研究所は先ごろ、2025年下期(9月)営業動向調査の結果を公表しました。

小規模企業ほど経営の困難増す

 今期(25年下期)の主要DI値は、全体(全回答者計)で、総合経営判断DI値(前期▲50.7→今期▲51.0)、売上DI値(前期▲38.6→今期▲39.5)、利益DI値(前期▲50.7→今期▲49.0)と、依然として水面下の深い位置で推移しています。中小業者は、単価・マージンの確保に努めているものの、原材料・商品の仕入値DI値(86・3)が7期連続(3年半)で80台を超えており、仕入れ値高騰の長期化が、収益低迷の主な要因と考えられます(図1)。
 従業者規模別(従業者5人以下と6人以上)で見た場合、5人以下の売上DI値(前期▲40.9→今期▲44.1)と利益DI値(前期▲51.9→今期▲52.0)は、水面下の深い位置にとどまり、6人以上の売上DI値(前期▲25.8→今期▲15.6)と利益DI値(前期▲43.8→今期▲32.0)は、改善しています。単価・マージンDI値は5人以下が横ばい(前期6.2→今期6.3)なのに、6人以上は上昇(前期22.2→今期29.3)しています。仕入値DI値が高止まりするなか、5人以下と6人以上では、主要DI値の差が広がり、小規模事業者ほど経営が困難になっています。価格転嫁を通じた価格形成を、いかにして進めるかが、今後の大きな経営課題となっています。

インボイス負担軽減措置継続を

 消費税のインボイス(適格請求書)に関して、「インボイスの未登録を理由に、課税業者が一方的に取引を停止してきた」(前期17.9%→今期23.5%)と、「課税業者が価格引き下げや取引停止などを引き合いにインボイス登録をするよう一方的に通知をしてきた」(前期10.7%→今期23.5%)と回答する免税事業者が増えています(図2)。
 ひとこと欄にも、2026年10月から特例制度(2割特例、8割控除)が縮小されることを見越し、「インボイス登録を求められている。未登録を理由に値引きされた」(小売り)、「インボイスに登録しないと取引できないと言われた」(卸)など、課税事業者が免税事業者にインボイス登録を促している実態も報告されています。インボイス制度の廃止まで、特例制度が継続されなければ、小規模事業者の利益回復は、ますます困難になりかねません。

DI値

 ディフュージョン・インデックスの略語。企業の景況感などを「良い」「悪い」といった定性的な指標で数値化したもの。「良い」と回答した企業割合(%)から「悪い」と回答した企業割合(%)を差し引いた値。

【調査概要】
〈調査期間〉2025年8月13日~9月16日
〈有効回答〉695人(調査対象モニター人数:47都道府県980人、有効回答率70.9%)
〈回収方法〉郵送記入
〈業種構成〉建設業(建築設計含む)30.6%、食料・繊維・木製品・印刷関連製造業8.0%、金属製品・機械器具製造業14.3%、流通・商業19.4%、宿泊・飲食業8.2%、サービス業19.7%〈事業形態〉個人62.5%、法人37.5%
〈事業規模(事業主本人を含む全従業者数)〉1人22.2%、2~3人41.0%、4~5人16.0%、6~9人13.5%、10人以上7.3%

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