全中連が10省庁、国会議員に要請 中小業者の実態伝え施策拡充を|全国商工新聞

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 全国中小業者団体連絡会(全中連)は3日、幹事会を衆院第二議員会館で開催。会議後、消費税5%以下への減税やインボイス(適格請求書)制度の廃止などを求めて、国会議員や財務省、経済産業省など10府省庁などに要請。省庁要請には54人が参加し、物価高騰や最賃引き上げへの対応に苦慮する中小業者の切実な実態を伝え、施策の拡充を要望しました。

内閣府 万博未払い問題の解決 「できること全てやる」

要請書を手渡す三戸部尚一幹事(左側)

 内閣府には、「定額減税の不足額給付を行き渡るようにすること」「大阪・関西万博の未払い被害の解決」などを要請。万博未払い問題について、内閣府は「できることは全てやっていく」と回答しました。
 不足額給付について、岩手県からの参加者が「市職員の誤った解釈で給付されないようなことがないよう技術的指導をしてほしい」と訴え。内閣府は「調整給付に対する『受贈の意思』(受け取りを承諾する意思表示)を示さなかったことについて、やむを得ない事由があれば、給付対象とすることはできる」とし「自治体職員が独断で判断しないようにしている。県を通じて質問してもらえれば、答える」と約束しました。

国交省 適切な単価や賃金確保 「基準下回る発注禁止」

 国土交通省には、「適切な単価や賃金確保に向け、価格転嫁を後押しすること」や「大阪・関西万博の工事代金未払い問題を、責任を持って解決を図ること」などを要望。
 省側は「適正な労務費基準を示し、著しく下回る発注を禁止している。法定福利費などの内訳を明示した見積書の活用を図り、違反事例は『下請けGメン』が調査している」「万博協会を窓口に相談を受け付けている。元請けと下請け双方の事情を聞き、最上位元請けの許可行政庁である都道府県にも助言を行っている」などと答えました。
 参加者は「価格決定権は下請けにはない。2次、3次下請けにも労務費が行き渡る方策を」(千葉)、「改正建築基準法で、リフォーム工事などの基準緩和を行ってほしい」(広島)などと重ねて求めました。

金融庁 柔軟な資金繰り支援 「きめ細かな支援徹底」

 金融庁には、金融機関関連で7項目、損害保険関連で2項目などを要請・要望しました。
 「中小業者に対する最大限柔軟な資金繰り支援」について、庁側は「資金繰りの相談に丁寧に対応するなど、事業者に寄り添った、きめ細かな支援を徹底する」と回答。既往債務の条件変更や借り換えについても①申し込みを断念させるような対応を取らない②返済負担の軽減を図る―ように金融機関に要請していると述べました。
 参加者からは「債務の条件変更に際し、高い手数料を要求される事例もある。監督指針に反する恐れがある」(静岡)、「損保代理店に対する手数料ポイント制度によって、中小代理店の収入が激減した。このままでは中小代理店は無くなってしまう」(埼玉)といった実態や危惧が示されました。

公取委 改正下請法の運用強化 「指導できる省庁広げ」

要請書を手渡す河合章代表幹事(左、FC協会長)

 公正取引委員会(公取委)には、下請法改正に伴う調査・指導・勧告の強化やインボイス制度導入後の取引実態の調査と是正、フランチャイズ(FC)本部による優越的地位の乱用の防止などを要請しました。
 公取委側は「下請法改正で、正当な理由のない価格据え置きや価格交渉の協議拒否も”買いたたき”と認定可能になり、助言・指導できる省庁も広げる」と説明。10月1日の運用基準改訂で「協議に応じない」具体例も示していると回答。インボイス関連の不公正取引も引き続き調査しており「2026年度の”2割・8割特例”の終了・縮少に伴ない不正事例が増えないか、注視している」と述べました。「FC法制定は公取委の管轄外」としつつも「独禁法の枠内で、いかに価格転嫁を促すか、議論している」と述べました。

総務省 「自治体に丁寧な滞納処分を要請」

 総務省には、納税者の生存権を脅かす地方税の滞納処分をやめる▽法人県民税などの申告書への収受日付印の押印を継続するよう自治体に周知する―などを求めました。
 省側は、滞納処分について「納税者の実情を把握した上で丁寧に対応するよう自治体に要請している」「4月には『地方税法、同法施行令、同法施行規則の改正等について』を各自治体に発出した」と答えました。
 鳥取の参加者が「県税務課が法人税の収受日付印を押さないと決めた。要請を行った結果、当面は『依頼されれば押印する』となったが、他にこのような事例はあるか」と質問し、省側は「初めての例と承知している。省から”日付印を押さないで”とは要請していない」と述べました。

厚労省 「物価高騰は承知 必要な支援検討」

 厚労省には、国民健康保険(国保)の都道府県単位での保険料水準の統一反対や物価高に見合った診療報酬の引き上げ、紙の健康保険証復活などを求めました。
 診療報酬の引き上げに、省側は「物価高騰の影響は承知しており、必要な支援を検討している」と回答。参加者は「来年の診療報酬改定では間に合わない。2年に一度の改定を待たずに、期中改定すべきだ」と強く求めました。
 国保料について、参加者から「保険料水準の統一を先行した奈良県では、差し押さえ件数が70倍に激増した。差し押さえありきでなく、高過ぎる保険料を引き下げるべきだ」などと訴えました。

経産省・中企庁 物価高対策など 直接支援を要請

中小業者の実態について発言する花井 正幸代表幹事(前列左から2人目)

 経済産業省・中小企業庁には、物価高騰対策や賃上げへの直接支援、資金繰り支援などを求めました。
 庁側は「中小企業の自立的発展には、生産性向上や稼ぐ力を付けてもらうことが重要」として「ものづくり補助金」や「よろず支援拠点」による省力化アドバイスなどを紹介し、直接支援は「検討していない」と回答しました。
 岩手県の参加者は「岩手県の賃上げ支援制度は画期的だが、県独自では限界がある。国として直接支援を」と要望。熊本県の飲食業者は「飲食業はコロナ禍より、ひどい。ロボット化やIT化などに縁のない小さな事業者には、直接支援を」と強調しました。静岡県から参加した自動車修理・販売業者は「『生産性向上』を強調するが、そんなことは既に取り組んでいる。町に出て、中小業者の状況を、よく観察してほしい」と強く要望しました。

財務省 インボイス廃止、消費税は減税に

 財務省には、消費税率の5%以下への引き下げ、インボイス制度の廃止と、廃止されるまでの間の「2割特例」と「8割控除」の継続などを求めました。
 各地から「インボイス導入で、売り上げが200万円や300万円の中小業者からも消費税を吸い上げていく。大企業から税金を取るべき」(福岡)、「煩雑な事務負担をこなして納税する中小業者の声を聞いてほしい」(富山)と口々に訴えました。
 省側は、消費税減税やインボイス廃止は「考えていない」と一蹴。「2割特例」「8割控除」の継続は「目的等を踏まえて慎重に検討する必要がある」と答えるにとどまりました。

国税庁 収受日付印押印 再開強く求める

 国税庁には、確定申告書控えなどへの収受日付印の押印再開や、一方的に経費を否認する税務調査を行わないことなど求めました。
 収受日付印の押印廃止による弊害について「保険会社への申請などで、収受日付印のある申告書控えを求められる」(大阪)などと訴えました。
 沖縄の参加者は、税務署が納税者に「接待交際費領収書等の集計表」を送り付け「記入して提出しなければ、経費として認めない」と脅した事例を告発。「納税者の権利を侵し、『納付すべき税額が納税者のする申告により確定する』と定めた申告納税制度を否定するものだ。経費を否認する場合の立証責任は税務署側にある」と追及しました。
 庁側は「収受日付印の押印を行わないことに、理解を」と繰り返し、「経費否認調査」について「必要経費かどうかの確認ではないか」と強弁しました。

国会議員要請 「消費税減税」を託し

白川容子参院議員(左、共産)に署名を託す御堂耕三さん(愛媛県連副会長)ら

 国会議員要請には、13都道府県の38人が参加。地元選出の国会議員を中心に①消費税減税とインボイス廃止②インボイス廃止までの間、経過措置の継続を求める―二つの請願署名の紹介議員になるよう要請し、議員12人が引き受けました。
 愛媛県の参加者3人は、地元選出の国会議員5人を訪問。署名3225人分を受け取り、紹介議員を快諾した白川容子参院議員(共産)は「臨時国会で消費税を減税させたい。署名が一番の力、引き続き奮闘を」と激励しました。取引先などから署名700人分以上を集めた御堂耕三さん(愛媛県連副会長)は「呼び掛ければ、会員以外も署名に応じてくれる」と、期待の高まりを実感していました。
 神奈川県の参加者9人は、衆参議員37人に要請。国会閉会中で、全て秘書の応対でした。中小業者やフリーランスの厳しい実情を伝え「参院選で示された民意を反映し、消費税減税とインボイス廃止を」と訴えました。
 比例代表南関東ブロック選出の志位和夫衆院議員(共産)の事務所では署名を受け取り、紹介議員を引き受けることを約束しました。翌4日には、西岡義高衆院議員(国民)から紹介議員を引き受けると連絡がありました。

幹事会 要求に応える政治に

あいさつする太田義郎代表幹事(全商連会長)

 3日の全中連の幹事会には47人が参加し、今後1年間の運動の重点を確認し、新役員を選出しました。
 太田義郎代表幹事(全国商工団体連合会会長)が主催者あいさつ。「消費税5%以下への減税とインボイス廃止を求める多くの声に応える政治に変え、地域で資金が循環し、豊かに暮らせる社会をめざそう」と呼び掛けました。
 日本共産党の辰巳孝太郎衆院議員があいさつ。「国民の願いは、自民党政治と大本で対立する。消費税減税・インボイス廃止など、共同を広げ、暮らしを守る政治を共に実現したい」と表明しました。
 インボイス制度を考えるフリーランスの会(STOP!インボイス)の小泉なつみさんは「来年9月にインボイス制度の2割納付などの特例が廃止されれば、消費税負担は2倍以上に。生活の最低限を奪うのがインボイスだ。インボイス制度を多くの人が知るようになったのは運動の力だ。引き続き、廃止をめざし、皆さんと運動していく」と連帯あいさつしました。
 牧伸人事務局長が、この間の取り組みを報告。今後の運動の重点と新役員などを提案、満場の拍手で確認されました。
 討論では「9月に地域の各団体を訪問し、消費税減税への賛同を働き掛けた。社会保障の削減を許さず、減税を実現したい」(京都)、「衆参両院で野党が多数を占める情勢を生かし、減税など中小業者・国民のための政治を実現させたい」(福岡)、「今こそ、生活費非課税原則を実行させよう」(富山)などの発言がありました。
 森元主税代表幹事(全国保険医団体連合会副会長)が閉会あいさつ。「政府の社会保障削減策の根底には『高齢者に金を使うな』という考えがある。大きな運動を起こし、政治を変えよう」と呼び掛けました。

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