立憲民主党が主張し、自民党新総裁が制度設計に言及した「給付付き税額控除」が政治の焦点に浮上しています。給付付き税額控除は、減税と給付を組み合わせた負担軽減措置です。あらかじめ減税する対象範囲と減税額を決め、所得税から控除します。減税しきれない場合は、残りの控除額を給付する仕組みです。例えば、税額控除額10万円の場合、所得税が15万円の人は納税額が5万円となり、所得税が1万円の人には、引ききれない税額控除額9万円を給付します。
立憲民主党は7月の参院選で「一人2万円の給付を行い、食料品の消費税を1年間ゼロ%にした後で給付付き税額控除を実施する」と公約していました。問題は、立憲民主党の消費税減税案はあくまで時限措置で、元に戻すことを前提としていたことです。消費税減税に反対する自公や財務省の立場に近く、消費税の廃止という中小業者の願いとかけ離れています。
これまで立憲民主党は、給付付き税額控除について、低所得者ほど負担が重くなる消費税の「逆進性対策」と主張してきました。野田佳彦代表は9月21日放送のテレビ番組で「消費税を還付する制度」と語っています。ならばなぜ、逆進性のある消費税の減税・廃止に手を付けようとしないのでしょうか。いくら食料品をゼロ%にしても、逆進性という消費税の害悪を消し去ることはできません。減税や給付をするために個人の税情報が必要になるなどプライバシーにも影響が及びます。
自公与党と立憲民主党が協議を続け、消費税が温存されれば、税率引き上げの可能性が生まれるだけでなく、インボイス制度の廃止も遠のきます。消費税が持つ害悪の解消は、新たな制度によってではなく、消費税そのものを減税・廃止することで実現するべきです。7月の参院選では、消費税減税、インボイス制度廃止を掲げた野党の議席が過半数を占めました。同時に、選挙区で当選した自民党議員の33%が消費税減税の立場を明らかにしています。
いま、野党第1党の立憲民主党に求められているのは、選挙で示された民意に正面から応え、消費税減税、インボス制度廃止に向け、国会内で合意を広げることです
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