「トランプ米政権が大学や研究機関の予算を大幅削減したあおりを受け、米国の大学に輸出していた和書の売り上げが減収に。民商に相談して、東京都への要請も力に、2400万円の融資の借り換えができて一息付けた。今度は、都の『事業環境変化に対応した経営基盤強化事業』で助成金獲得にも挑戦したい」―。こう話すのは、東京・豊島文京民主商工会(民商)常任理事の高橋雅人さん=学術図書出版=です。既存借り入れのあった信用金庫に申し入れ、セーフティーネット保証5号(業況の悪化している業種)認定を受けて、400万円の追加融資を含む2400万円の借り換えを実現。商売継続へ奮闘しています。
東京・豊島文京民商「㈱すいれん舎」高橋雅人さん=学術図書出版


「米国の大学図書館などに学術書などの和書輸出を行っている出版業者が、今年に入って軒並み、急激に売り上げを減少させている。融資や補助金などは受けられないか」―。高橋さんは6月、同業者とともに民商事務所を訪れ、こんな相談を持ち掛けました。高橋さんが経営する「㈱すいれん舎」のケースでは、昨年4~5月の売り上げが昨年同期の約4%まで大幅減に。年間売り上げの2割近くを失う事態となりました。「トランプ米政権による教育予算削減などが影響していると思う」と話す高橋さんに、熊谷雅敏事務局長は「外的要因による売り上げ減なら、セーフティーネット保証を活用できるのではないか」とアドバイス。周囲の同業者の多くも同様の状況に陥っていることから、民商は急きょ7月1日に、東京都産業労働局に要請しました。高橋さんが呼び掛け、会外の出版業者6人が参加。福手ゆう子、藤田りょうこ都議(ともに共産)も同席しました。
まず高橋さんが、米国の大学図書館などが日本の学術書収集に力を入れるようになった歴史的経過や、文化的・外交的な意義を説明。今年に入ってからの急激な売り上げ減少に苦しむ出版業者への救済措置を求めました。産業労働局は東京都の「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」などの支援策を紹介。「トランプ関税の影響を必ずしも直接、受けていなくてもよいと考えるが、個別具体的には申請内容で判断する」「売上高の減少や、決算で損失を計上している企業も助成対象となる」などと説明しました。参加者は「トランプ大統領による政策転換の影響を、自然災害などと同様に扱い、セーフティーネット保証の適用を」「損失補填や家賃補助も必要」などと要望しました。
高橋さんは、要請内容を踏まえて、早速、資金繰り対策に着手。既存債務のある信用金庫に対し、急激な売り上げ減少に直面したことを数字で示し、借り入れ条件の変更と追加融資を要望しました。その結果、セーフティーネット保証5号を活用し、400万円の追加融資を含む2400万円の借り換えができることに。高橋さんは「一定の資金繰り対策ができて、ほっとした。次は、9月1日から3回目の募集が始まる『事業環境変化に対応した経営基盤強化事業』に、同業者数人と挑戦し、助成金を獲得したい」と奮闘しています。
東京都・事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)
事業環境の変化への対応策として、事業を深化・発展させる事業計画を作成した場合、経費の一部を助成するとともに、専門家による運用改善などのアドバイスを実施するもの。
○助成対象者 次のいずれかに該当する都内中小企業、小規模企業など。
①直近決算期の売上高が「2023年の決算期」と比較して減少
②直近決算期において損失を計上③(新設)米国関税措置の影響を受けているまたは受ける見込みがある企業
○助成限度額 800万円
○助成率 対象経費の3分の2以内(賃金引き上げ計画を策定した場合4分の3以内。うち小規模事業者は5分の4以内)
○募集予定(第3回) 2025年9月1日~12日午後4時まで