大阪・関西万博工事代金未払い 下請け業者の救済を 全商連110番に 被害総額4億3千万円超|全国商工新聞

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 「万博の海外パビリオンの工事代金1億2千万円が未払いに…。売れるものは全て処分し、下請けや従業員への支払いに充てた。残っているのは、私の命だけ。残された時間に猶予はない」―。大阪・関西万博の関連工事で発生した未払い被害者の悲痛な声です。海外パビリオンの建設に関わった下請け事業者に工事代金が支払われない事例が相次ぎ、全国商工団体連合会(全商連)は急きょ、ホームページに「大阪万博工事代金未払い110番」を開設。寄せられた声を基に7月16、28の両日、国土交通省、経済産業省、内閣府など6府省庁に対し、「国家プロジェクトとして推進してきた政府は、責任を持って下請け事業者を救済せよ」と要請しました。

「立て替え払い急げ」 全商連が6省庁要請 国の責任を追及

「売れるものは全て処分…」「残っているのは、命だけ」

 各社の報道も併せると、未払いとなっているのは、アメリカ、ドイツ、インド、セルビア、マルタ、アンゴラ、中国、ルーマニアなどのパビリオン工事。全商連の110番に寄せられた事例は11件、被害総額は4億3千万円超に上ります(図)。

 16日の要請には当事者の5事業者をはじめ、全商連の藤川隆広副会長=包装資材製造=ら12人が参加し、日本共産党の大門実紀史参院議員、辰巳孝太郎衆院議員が同席。オンラインで当事者など6カ所と結びました。

切実な声相次ぐ
未払い解決を訴える当事者

 藤川副会長は「4月13日の万博開幕に間に合わせようと、寝食を忘れて工事をした事業者に代金が支払われず、倒産の危機に脅えている。政府は被害者の声を聞き、支援してほしい」とあいさつ。
 事前に送付した要請項目を基に各省庁が回答。当事者からは「政府は見て見ぬふりはしてほしくない」「元請けとの話し合いは、腐るほどしてきたが、らちが明かない」「金融機関では『未払いだから』と新規融資を断られている」「頼んでいる職人から『支払ってもらえないと、うちはおしまい』『マンションを追い出された』との声が上がっている」「昼夜を分かたず工事して、まばたきする間に夢を見るような状況で完工したが、代金がもらえない」など切実な訴えが相次ぎました。
 国土交通省は「建設業法に基づく指導・監督権限を最大限発揮し、工事代金の未払いを至急解決すること」などの求めに対し、「個別事案に即して納得いく解決が重要。双方の協議が行われるよう努力している。話し合いを、あっせん・仲介する紛争審査会もある。各省庁が、それぞれの立場で支援策を紹介している。大阪府などから相談があれば連携して対応する」などとし、具体的な解決策を示しませんでした。参加者は「建設業法のレクチャーを受けに来たわけではない。省として、責任を持って元請けを指導してほしい」と強調しました。

資金繰り支援を

 資金繰り支援や納税緩和措置の適用については「金融機関に適時適切な融資相談に乗り、申し込みを断念させないよう要請している」(金融庁)。「日本政策金融公庫に、丁寧に対応するよう繰り返し要請」(財務省)、「セーフティーネット保証など別枠で対応」(中企庁)、「一括納付できない場合、納税緩和制度を適用するが、納付意思がない場合は差し押さえを行う」(国税庁、厚労省)など一般的な回答にとどまり、参加者から「今回の事例の特殊性が分かっていない」など怒りの声が上がりました。
 万博の主幹省庁である内閣府と経済産業省には「政府・国際博覧会推進本部および主催者である万博協会は連帯して、未払い工事代金の立て替え払い、または未払い工事代金相当額の無利子貸し付けを未払い被害者に対して直ちに行うこと」や「未払い工事代金の即時支払いを最上位元請けに要請すること」などを要請。経産省側は「民間と民間で解決すればいいとは思わない」としつつ「第一義的には未払い当事者が支払うべきで、代わりに払うことではないと考えている」と政府の責任で解決することについては、否定的な見解を示しました。

個別対応を要請
政府に要請する全商連の藤川隆広副会長(右)=7月16日

 当事者は「大阪府の吉村知事は『民・民の問題』と冷たい態度だったが、経産省が明確に”民・民の問題ではない”と言及したことだけでも大きな進歩だ」「現状では、立て替え払いや具体的な金融支援などが出されておらず、引き続き交渉したい」などとしつつ、「私たちは何一つ悪いことはしていない。行政のルールは承知しているが、今回は異常事態だ。時間はあまり残されていない。責任を持って対応してほしい」と訴えました。
 全商連の中山眞常任理事は「被害者に共通している問題は資金繰りだ。そこを一番に支援すべきだが、時間がかかっている。国家プロジェクトで推進した事業で政府は責任を取るべきだ。被害者の皆さんと協力しながら、問題の解決に取り組みたい」と決意を述べました。
 当事者は要請後、未払い金額、最上位元請けなどを明記した「解決を求める要請書」に、請求書控えを添付し、国土交通省、内閣府、経済産業省に手渡し、個別対応を求めました。

“万博倒産”の危機全商連が2回目要請早期解決求め

 「万博工事費未払い問題の解決に向け、政府は役割を果たせ」―。全商連は7月28日、国会内で国土交通省、経産省、内閣府に、大阪・関西万博の建設工事費未払い問題の早期解決を要請しました。日本共産党の辰巳孝太郎、堀川あきこ両衆院議員、大門実紀史参院議員が同席しました。
 要請は、全商連が同16日に被害業者らとともに、国交省、財務省、経産省などに要請したのに続いて2回目。前回の要請以降、被害業者ら2社に経産省が個別に聞き取りを行うなど新たな動きも出ていますが、解決に向けた具体的な進捗はありません。被害業者からは「もう、もたない」「解決を急いでほしい」などの切実な声が寄せられています。
 要請では、被害業者からの個別要請書を改めて3府省に提出し、早期解決を要請。「国家プロジェクトと位置付け、政府が進めてきたのが大阪・関西万博だ。各省庁が持てる権限を全て生かして、問題の早期解決を図るべきだ」「”万博倒産”を出してはいけない。支払うべきものを全て支払って、『万博は成功した』と言える」などと追及しました。
 この日の要請では、最上位の元請けが未払い問題を解決しないまま、海外パビリオンの解体工事を請け負う可能性があると判明。大門議員は「最上位元請けに責任を果たさせ、未払い問題の解決を急ぐべきだ」と指摘し、「最上位元請けが被害救済に動くよう手を尽くせ」と要請しました。被害業者の資金繰り支援として「コロナ禍の”ゼロゼロ融資”のような特例措置が必要だ。政府の決断が求められる」と提起し、対応を促しました。辰巳議員は「国会での閉会中審査も含めた審議が必要ではないか」と述べました。
 全商連は要請に先立ち、衆院の内閣、国土交通、経済産業の各委員会の委員長と与野党の筆頭理事の議員事務所を訪問。国会閉会中でも委員会を開催し、未払い問題の解決や資金繰り支援について審議するよう要請しました。

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