改正下請法が成立 全商連の政策提案が生きる 日本共産党が国会で紹介・質問 有益な大臣答弁引き出す|全国商工新聞

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 「改正下請法」が5月16日、参院本会議で賛成多数で可決、成立しました(2026年1月1日施行)。衆参の国会審議では、全国商工団体連合会(全商連)の政策提案や、全商連付属・中小商工業研究所の調査活動が紹介され、「形式的協議のみで一方的に価格決定する行為は法に違反」(伊東良孝内閣府特命担当大臣)、「小規模事業者振興に全力で取り組む」(武藤容治経産大臣)など、有益な大臣答弁を引き出しました。いずれも、日本共産党の辰巳孝太郎衆院議員、岩渕友参院議員の質問に答えたものです。

「形式協議のみは改正法に違反」伊東内閣府特命相
辰巳孝太郎衆院議員の質問に

 辰巳孝太郎衆院議員(共産) は4月16日、経済産業委員会で、下請法改正案に関わって質問しました。辰巳議員は、全商連付属・中小商工業研究所の「下請け事業者の価格転嫁・価格(単価)交渉緊急アンケート」の結果を引き「親事業者からの価格に関する話し合いの申し入れが『無かった』が76・2%に上る」と指摘。「仕事量が減ったり、取引停止されると困る」と価格交渉を諦めているとの回答もあり、「下請け事業者が弱い立場に立たされていることは明らかだ」と強調しました。下請け事業者との価格協議について「形式的な協議だけで、代金据え置きや引き下げなどが懸念される」と指摘しました。
 伊東良孝内閣府特命担当大臣は「形式的な協議を行うのみで、実質的に協議に応じていないと認められる場合は、改正法に違反する。改正後の運用基準などによって、想定される問題事例を示すことなどを通じて、違反行為の未然防止のため十分な周知を図りたい」と回答しました。

「小規模事業者の振興に全力で」武藤経産相
岩渕友参院議員の質問に

 岩渕友参院議員(共産)は5月15日、経済産業委員会で、下請法改正案に関わって質問しました。岩渕氏は、今年3月に閣議決定された「小規模企業振興基本計画3期の見直し」に関連して、5人以下の小規模事業者の地域、日本経済における役割と「特段の配慮の必要性」について質問。
 武藤容治経産大臣は、小規模事業者は「多様な事業を創出し、地域経済を支える重要な存在。生活関連サービスの提供、地域文化の担い手など地域コミュニティーに欠かせない存在だ。中でも、従業員数5人以下の小企業者は事業環境変化に脆弱なため、特段の配慮が必要だ。引き続き、小規模事業者の振興に全力で取り組む」と答弁しました。
 岩渕氏は「小規模事業者への支援として、賃上げへの直接支援と、社会保険料の負担軽減を」と求めました。

改正下請法

 正式には「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」。
 今国会で「発注者・受注者の対等な関係に基づき、事業者間における価格転嫁及び取引の適正化を図る」ことを目的に改正された。

〈主な改正点〉

●協議を適切に行わない代金額の決定の禁止(価格据え置き取引への対応)

 代金に関する協議に応じないことや、必要な説明または情報提供をしないことによる、一方的な代金額の決定を禁ずる。

●手形払い等の禁止

 手形払いを禁止する。電子記録債権やファクタリングなども、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは禁止。

●用語の見直し

 「下請事業者」を「中小受託事業者」に、「親事業者」を「委託事業者」に改める。※全商連は「取引関係をあいまいにする懸念がある」と指摘。

〈施行期日〉
 2026年1月1日(ただし、一部の規定は本法律の公布の日から)

小規模企業振興基本計画3期の見直し

 「小規模企業の事業の持続的な発展」などを基本原則として、2014年6月に施行された小規模企業振興基本法の推進を図るために定められた計画。情勢変化などを踏まえておおむね5年ごとに変更するとされており、昨年末、3回目(第3期)の事務局案が示された。
 全商連は、パブリックコメントで「小企業者等への配慮」に関する記述が欠如していることを指摘し、盛り込むよう求めたところ「小企業者の円滑かつ着実な事業の運営が確保されるよう特段の配慮を払う」と明記された。

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