全国商工団体連合会(全商連)が5月8、15日の両日、東京都内の商店街で実施した「消費税減税」アンケートでは、引き下げる税率や財源などについて疑問や意見が寄せられました。Q&Aで考えてみました。
Q1 中小業者にとって、「食料品ゼロ%」の効果は?
A 食品・飲食への効果は限定的。「一律5%への引き下げ」なら約2倍の減税効果。インボイスも廃止できる
食料品にかかる消費税がゼロ%になれば、食料品の卸売業者や小売店は、仕入れにかかる消費税負担は軽くなります。しかし、効果は限定的です。例えば、ペットボトルの水の場合、中身の水は消費税ゼロ%ですが、ボトル容器や運送費の消費税は10%のままだからです。食材を仕入れる飲食店でさえ、効果がないため(図1)、値下げは困難。建設、サービスなどの他業種への効果も、ほぼ「ゼロ」です。
物価高対策と言うなら、消費税廃止をめざしつつ、「一律5%への引き下げ」が一番、現実的です(図2)。減税効果は「食料品ゼロ%」の約2倍です
単一税率になれば、「複数税率の下での正確な消費税納税のため」というインボイス実施の口実も無くなります。


Q2 消費税は下げてほしいが、社会保障の財源が心配…
A 消費税は社会保障ではなく、法人税・所得税の減収の穴埋めに使われた
自公政権は「消費税は社会保障の財源。法律にも、そう書いてある」と言います。
確かに、消費税法には「消費税は(中略)医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」(1条2項)と書いてあります。
しかし、消費税は、復興特別所得税のような明確に使途を限定する「目的税」ではなく、所得税や法人税などと同じ一般財源として、全ての歳出予算に充てられる税金です。一般財源であることは、政府の歳入・歳出の説明からも明らかです。社会保障費の主要な財源は国債であり( 36.7%、2020年時点)、社会保障給付は、保険料などの国民負担で支えているのが実態です。
1989年に消費税が導入されて以降、2024年までの消費税の税収は累計539兆円。同じ期間の法人3税の減収は318兆円。所得税と住民税の減収は295兆円。消費税は、法人税と所得税の減収の穴埋めに使われてきたのが実態です(図3)。

Q3 財源は「国債発行」で大丈夫?
A 国債は国の借金。借金に頼らない財源を
国債は「国の借金」です。2025年度予算で国債の利払い費はすでに10兆円を超え、9兆円弱の軍事費を上回っています。国債利払い費と軍事費が物価上昇率を上回る一方で、中小企業対策費や社会保障費は物価上昇を下回り「実質削減」です(図4)。

消費税の「食料品ゼロ%」で5兆円、「5%への引き下げ」で15兆円、「廃止」で31兆円もの巨額な財源が必要です。
これ以上、国債を発行すれば、利払い費がさらに増えます。国債を増発しなくても、日銀が金利を引き上げるだけで利払い費は増えます。
国の財政も、商売も「借金頼み」でいいはずはありません。国債(国の借金)に頼らない財源作りが必要ではないでしょうか。
Q4 「借金に頼らない財源」はある?
A 「不公平な税制」を本気で正せば、十分賄える
消費税減税のための財源は、国の借金(国債)に頼らなくても、「不公平な税制」を正せば、十分、賄えます。
法人税は、租税特別措置など大企業を優遇する税制があり、大企業の実質負担率は中小企業の半分です(図5)。株の配当や譲渡益にかかる所得税は、他の所得と分離して一律15%(住民税5%)の税率が適用されるため、株で大もうけしている富裕層は所得が1億円を超えると、所得税負担率が下がります(1億円の壁、図6)。
こうした不公平な税制を本気で正せば、消費税の5%減税どころか、廃止も可能です(図7)



Q5 「消費税減税は高所得者ほど優遇」とも言われますが…
A 負担の重い低所得者ほど減税の効果は大きい
確かに、高所得者が高額消費をすれば、その際の減税額は大きくなります。しかし、あらゆる物やサービスの「対価の一部」として課せられる消費税は、子どもや年金暮らしの高齢者、被災者にもかかり、低所得者ほど重く、高所得者ほど軽い逆進的な不公平税制です(図8)。従って、消費税減税の効果は、低所得者ほど大きくなります。

高所得者が有利と言うなら、憲法に定められた応能負担の原則に基づき、「1億円の壁」など不公平な税制を正し、高所得者の負担能力に応じた税金を求めれば済む話です。
Q6 消費税「減税」「廃止」を巡る各政党の立場は
A 反対しているのは自民だけ
自民党以外の各党が、物価高や景気対策として「消費税減税」を主張しています(図9)。
