
税務署による強権徴収に対し、各地の民主商工会(民商)は、国税通則法などに基づく「納税緩和制度」を活用し、経営と暮らしを守る取り組みが広がっています。3月末に入会した名古屋北部民商の秋山聡さん(仮名)=サービス業=は4月15日、名古屋国税局による「換価の猶予」への不当な担保要求を民商の仲間とともにはね返し、「営業の展望も湧いて、一安心した。民商に入って良かった」と喜んでいます。
5年遡及の調査で2千万円以上の追徴課税を受けた秋山さん。その後、法人を設立し、個人の納税分に対して認められた税務署長の裁量による「職権型換価の猶予」で、法人の役員報酬から毎月7万円の分納を行っていました。
これに対して、名古屋国税局は①個人の「換価の猶予」を申請するには、法人の担保が必要②1年以内に全額支払わなければ、「換価の猶予」を取り消す―などの言い掛かりを付けてきました。法人の納税額も多額のため「それが支払えなければ、個人の換価の猶予にも影響する」と脅しまがいの発言も。法人の売掛金の差し押さえも、ちらつかせていました。
秋山さんは、国税局の”分納さえも許さない”という圧力を感じ、家族のクレジットカードを借りて納税していました。
秋山さんは、同業者の紹介で知った民商に相談・入会し、この間の国税局の対応を検証。国税庁の「猶予通達」が、事業の継続または生活の維持に著しい支障を与えると認められる場合に「担保を徴しないことができる」としていることや、「1年以内に完納が見込まれない場合」などの対処について示していることを学びました。
自宅に来た国税局職員に「あたかも必要条件のように、なぜ担保を求めたのか」「1年での完納が見込まれない場合、2年目以降も延長に対応する仕組みになっているのではないか」と、民商事務局員とともにただした秋山さん。「そもそも『猶予通達』の目的である『納税者から即時に納付することが困難である旨の申し出等があった場合には、実情を十分調査し、納税者に有利な方向で納税の猶予等の活用を図るよう配意する』というスタンスに立っているのか」と毅然と主張しました。
国税局側は「換価の猶予と、法人の担保は全く別です」と明言。「2年目も、毎月7万円を納付してもらえれば、法人の差し押さえ等もありません」と「換価の猶予」の申請用紙を置いていきました。秋山さんは「ようやく”晴れ間”が見えてきた。夜も眠れて、食欲も戻りそう。何よりも民商で勉強したことで、税務署から一方的に言われ続け、疑問だったことに対し、税法に基づいた主張が言えました。要望が通り、うれしい」と声を弾ませています。