2024 年下期 営業動向調査 物価高で利益増えず 業者へ直接支援は急務|全国商工新聞

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 「物価高騰が長引き、利益を増やすのが困難」「消費税のインボイス(適格請求書)は、昨年3カ月分だったが、今年は4倍となり、納税できるか不安」―。全商連付属・中小商工業研究所が10月23日に公表した「2024年下期(9月)営業動向調査」の結果から、物価高とインボイスの負担にあえぐ中小業者の姿が改めて示されました。

かつてない長期化 物価高の影響

 今期(24年下期)の原材料・商品の仕入値DI値は全体で88.2に達しました。同DI値は、22年下期に86.1となって以降、80台という高い値が5期連続(2年半)も続いています。01年上期から集計している同DI値で、このような高い値が、ここまで長く続いたことは過去にありません。物価高騰の影響が長期化していることは明らかです。
 単価・マージンDI値は今期7.6で、22年下期に初めてプラス(0.6)に転じて以降、プラス基調が続いています。売上DI値は今期がマイナス35.0で、ここ数期の同DI値もマイナス30台の半ばから後半で推移しています。利益DI値は今期、マイナス45.8で、ここ数期の同DI値はマイナス40台の半ばから後半を推移してきました。
 長期化する物価高騰の影響で、利益を増やすことが困難となってきています。利益を増やすことの困難性は、利益DI値から売上DI値を引いた「差」が開いたままなことから読み取れます(図1)。この「差」は、原材料・商品の仕入値DI値が80台となった22年下期から広がりはじめました。今期も10.8ポイント差で、利益DI値が売上DI値に追い付かなくなってきています。ひとこと欄でも「商品価格を値上げしたが、仕入れの上昇に追いつかず、再値上げせざるを得ない」(食料品製造)、「電気代や部品、材料代の値上がりを単価に反映できない」(金属製品)など、繰り返される材料仕入れの値上げや燃料費・光熱費の高止まりなどによる、厳しい経営実態が記されています。
 この間、取り組んだ経営対策の上位は、「経費節減」「販売価格(単価)引き上げ」「サービス強化」「営業活動の強化」「得意先・親企業との交渉」でした。収益確保のための経営対策に多角的に取り組んでいることがうかがえる結果となっています。

納税額4倍に不安 インボイスの影響

 消費税のインボイス(適格請求書)制度の影響では、回答者の62.9%が「課税事業者でインボイス発行事業者」で、インボイス発行事業者になったことの影響で、売上高1千万円以下の事業者は「消費税を納税できるか心配」の回答が32.2%となっています(図2)。ひとこと欄には、「昨年は3カ月分だったが、今年は4倍の納税額となり、払えるか不安」(職別工事)、「売り上げ1千万円以下でも、登録せざるを得ず納税が大変」(専門サービス)などの声が寄せられています。
 こうした状況下で、政府や自治体には、物価高騰対策や賃上げ対策としての直接支援策の創設や、借り換えなど資金繰りへの支援策の円滑な実施が求められています。

【調査概要】

〈調査期間〉2024年8月16日~9月16日〈有効回答〉686人(調査対象モニター人数:47都道府県1112人、有効回答率61・7%)
〈回収方法〉郵送記入〈業種構成〉建設業(建築設計含む)28.8%、食料・繊維・木製品・印刷関連製造業8.5%、金属製品・機械器具製造業14.3%、流通・商業18.8%、宿泊・飲食業9.1%、サービス業20.4%
〈事業形態〉個人61.8%、法人38.2%
〈事業規模(事業主本人を含む全従業者数)〉1人23.3%、2~3人41.8%、4~5人16.5%、6~9人9.9%、10人以上8・5%

DI値

 ディフュージョン・インデックスの略語。企業の景況感などを「良い」「悪い」といった定性的な指標で数値化したもの。「良い」と回答した企業割合(%)から「悪い」と回答した企業割合(%)を差し引いた値。

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