一、情勢の特徴と政治転換の展望
物価高騰や消費の低迷によって中小業者の経営危機が深まっています。1~6月の企業倒産は4931件に達し、前年比で22%も増え、10年ぶりの高水準です。その9割が従業員10人未満で、従業員5人未満の小規模企業が75%を占める事態です。多くの中小業者が最低賃金や政策金利の引き上げに不安を募らせています。為替と株価の激動に翻弄され、インボイス・消費税をはじめ国保料・税の負担にあえいでいます。2014年6月に小規模企業振興基本法とともに採択された社会保険料の負担軽減策を求める付帯決議が無視されたままです。「社保倒産」が広がる中で、個人事業所すべてに加入義務化を拡大しようとしています。
一方で、大企業は軍拡や円安を追い風に大もうけしています。内部留保を過去最高の537兆円へと積み上げながら、人命や下請けよりも役員や株主への利益還元を優先しています。軍需産業大手の三菱重工業が2023年度に防衛省から受注した額は1・6兆円を超え、前年度比で4・6倍に跳ね上がっています。型式認証の不正を隠してきたトヨタ自動車は、単年度で5兆円もの営業利益を上げながら、6千億円に上る消費税還付を受けています。電気自動車を作れば作るほど法人税が軽くなる仕組みも創設されました。豊田章男会長が受け取った役員報酬16億2200万円に対する社会保険料の負担率はわずか0・08%です。
重要なことは、悪政転換をめざす世論と共同が広がっていることです。財界やアメリカを後ろ盾にする政権も、国民の支持を失えば退陣に追い込まれることが明らかになりました。民商・全商連が繰り広げてきた政治資金パーティーによる裏金・脱税事件の告発をはじめ、経済無策や不十分な減税策への批判と商工新聞による追及が、政権の支持率低下に寄与したことは間違いありません。
次の総選挙は、立憲主義を壊して敵基地攻撃や殺傷兵器の輸出を容認し、カネの力で政治をゆがめ、民意を無視して原発回帰や社会保障の削減を推し進める、自民党政治に終止符を打つチャンスです。
総会方針と私たちの要求を実践に生かしつつ、秋から春に向けて要求運動と組織建設を一体で推進し、新たな前進をめざしましょう。
二、要求運動の重点
1、相談活動に全力を挙げ、商売交流に挑戦を
高騰する物価や人件費の転嫁対策をはじめ、消費税減税・インボイス廃止、国保料・税や社会保険料の減免、資金繰り対策など、中小業者の切実な要求が渦巻いています。相談活動に全力を挙げ、経営継続、事業継承への助け合いを強めます。
全中連は10月1日に「消費税減税・インボイス廃止!保険証残せ!」の国会行動に取り組み、省庁・国会議員への要請を行います。中小業者の実態と要求を持ち寄るとともに、連帯した集会や自治体要請などを各地で計画します。全商連が行う「経営対策交流会」で商売の知恵と工夫を学び合い、民商や県連、班・支部で商売交流の開催に挑戦します。
2、全自治体要請を徹底し、支援策の実現を
政府は、秋に策定する経済対策の一環として、中小企業や地域経済の支援を「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」の拡充により、きめ細かく講ずることを検討する方針です。臨時交付金の活用を担う自治体の動き待ちにならないよう、間髪を入れずに働き掛けることが決定的に重要です。全商連が作成した「要請書(ひな形)」や総会で確認した「私たちの要求」を活用し、物価や燃料高の負担軽減対策や賃上げへの直接支援をはじめ、国保料・税の減免策などの成果にも学び、「実施してほしい施策」をまとめて全自治体に提案します。
3,自主申告の担い手づくりを進め、運動の発展を
税理士法を悪用した自主申告運動への介入をはね返す最大の力は、納税者本人が所得と税額を決めることです。「自主申告サポーター学校」を参考に、全会員が自主計算パンフを活用し、運動の担い手を増やします。 確定申告書控えへの収受日付印の押印や申告書送付の廃止など、デジタル化に便乗した納税者の権利侵害に断固反対し、税務署・国税庁に是正を迫ります。9月20日に国会内で行われる「3・13統一行動の発展をめざすシンポジウム」の参加・視聴を強め、25年春の重税反対全国統一行動を幅広い納税者との共同で発展させるよう、秋から準備を始めます。
4、自民党政治を終わらせる共同の再生・強化を
大企業と富裕層を優遇して生業をつぶし、アメリカ言いなりの大軍拡で平和を壊す自民党政治を断じて許すことはできません。
国会議員の任期延長を可能にする緊急事態条項や自衛隊を9条に書き込むことを狙う改憲策動を打ち破り、戦争国家への暴走を阻止することは急務です。
次の参議院選挙まで1年を切り、解散・総選挙も取り沙汰されています。自覚的な民主勢力が共同で提唱する「さようなら自民党政治」の大運動に呼応して、「市民と野党の共闘」の再生・強化を地域で進めます。世論と運動を広げ、中小業者・国民の営業と生活を守る政治への転換をめざして力を合わせます。
三、組織建設の重点
1、会員対話を軸に、会勢前進にむけた持続拡大を
消費税減税・インボイス廃止の統一署名に賛同を広げ、会員比2%の商工新聞読者と同じく1%の会員の拡大に挑戦します。読者にも民商運動への共感を広げ、署名への賛同や「読者から入会」に結実させます。「民商の強みは何か」を深め、学習相談と打って出る取り組みで持続拡大を推進し、新会員を歓迎して仲間に迎え入れます。県連への結集と民商間の連携を強めて、宣伝や拡大行動、情報交換を促進し、班・支部づくりにも踏み出します。
24年12月末と25年3月末での読者・会員の年間全国増勢へ、「減らさず増やす」を全民商の体質とし、仲間増やしに班・支部の力を引き出します。
2、商工新聞の活用を強め、学習・教育の充実を
商工新聞から困難突破事例や自治体施策、インボイス対策を学び合うことで、相談の担い手として自信を深めることができます。機関会議で読み合わせ、感想を出し合います。会員の頑張りや民商に寄せられた相談と解決の取り組みをニュースにまとめ、県連・全商連に送付します。
12月末までの「『総会方針学習と実践討議』促進期間」の取り組みを発展させます。「総会方針」音声データや「総会への常任理事会報告」動画を、県連主催の支部役員学習会や幹部学校に役立てるとともに、ブロック別やオンラインでの総会方針学習会の開催も工夫します。全民商で「ようこそ民商へ」DVDを視聴し、新会員歓迎学習会や班長学習会を開催して活用をすすめます。
3、班・支部との連携と財政活動の強化を
会員の結び付きを取り戻し、悩みや要求を結集して解決に知恵を集められるよう、班・支部活動と機関会議の連携を強めます。調査や徴収での立ち会いを強め、新会員を歓迎して身近な支部役員の存在を知らせます。民商の機関会議では要求運動と持続拡大の到達を見える化し、月単位での行動計画に基づいて会員参加を増やします。
「民商の財政活動を強めるために」を役員会と事務局で学び、団結費としての会費の性格や、地域と全国の運動を結んで発展させる商工新聞の役割、民商への介入や弾圧を許さない自主計算の意義について理解を広げます。年末や年度末を節目として、未収克服を計画的に進めます。
4、全会員参加で「あるべき姿」の探求を
会員の悩みや要求を、国・自治体への要請でも取り上げられるのが連合会組織です。地域業者が気兼ねなく助け合う運動の灯を守るためにも、県連への結集と民商間の連携を強めます。
民商の再編を検討せざるを得ない場合にも、民商の存在意義や役割を確認し、理解と納得に基づいて役員が適切な任務分担に当たれるように配置し、会員主人公を実現できるよう班・支部の再建に力を注ぐことが大切です。
役員と事務局員の信頼関係を育み、協力し支え合って、組織者としての役割を相互に発揮します。道理を見失うことなく団結を宝とし、地域と全国を統一した運動を守ります。
5、総合力発揮へ、共済・婦人・青年の支援強化を
「全商連共済会40年のあゆみ」DVDを視聴して確信を深め、民商健診や健康祭り、家族参加のレク企画を充実させます。班の共済係、支部の共済役員づくりをすすめ、「目くばり、気くばり、心くばり」でいのちと健康を守り合う取り組みを強めます。会員加入率が安定的に8割を超えるよう助け合いの輪を広げます。
業者婦人の商売交流を促し、女性施策の拡充に向けた自治体要請を支援します。国連・女性差別撤廃委員会で大いにアピールできるよう、所得税法56条廃止の意見書採択を増やします。全婦協50周年を節に、民商運動の歴史と婦人部のあゆみについての学習を促し、総会に向けた婦人部拡大を支援します。
10月5~6日の第17回全国業者青年交流会の成功へ、「プレ企画」を支援して若手の参加を増やします。開催地の岩手県知事から交流会に歓迎の意が示され、業者青年施策に関する貴重な意見交換も行われました。民商・県連役員と青年部員・役員の懇談など、日頃から若手の声を聞く機会をつくり、交流会後の報告会をはじめ、業者青年の要求を生かした魅力ある民商づくりを強めます。