全商連第4回常任理事会決議|全国商工新聞

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 全国商工団体連合会は3月26日、第4回常任理事会を開き、次の決議を採択しました。

大軍拡・大増税阻止、危機打開とインボイス中止の運動を広げ、組織拡大の抜本的強化を

一、政治経済の動向

 コロナ禍に続く物価高騰が個人消費を冷え込ませています。「電気代が家賃より高くなった」「もう節約するものがない」という時に年金が削られ、75歳以上の医療費窓口負担が2倍に引き上げられています。企業物価が前年同月比で24カ月連続上昇し、過酷な単価たたきが行われるなど中小業者へのしわ寄せが厳しさを増しています。仕入れや経費の増加分を価格に転嫁できない中小業者は経営を圧迫され、「物価高倒産」が8カ月連続で過去最多を更新する事態です。
 にもかかわらず、岸田自公政権は金融緩和や新自由主義政策を継続し、内部留保を500兆円もため込む大企業への支援を強めています。安全保障政策の改定を閣議決定だけで強行し、専守防衛を投げ捨てて敵基地攻撃を可能にする大軍拡もその一環です。1発5億円もする米国製巡航ミサイル・トマホーク400発など莫大な長射程ミサイルの配備と同時に、他国からの核攻撃を想定し、自衛隊基地約300カ所の強靭化工事をゼネコンに発注しようとしています。5年間で費やす軍事費43兆円の大半が、アメリカ政府と日本の大企業に流れる仕組みです。原発政策を大転換し、新増設や老朽原発を稼働させる計画も一握りの原発メーカーと電力会社を潤すために他なりません。
 犠牲になるのが国民・中小業者です。岸田政権は、軍拡財源に東日本大震災の復興財源を流用し、中小業者向けコロナ特別貸付の基金残金2350億円をはじめ国立病院や社会保険病院のための積立金746億円まで組み込もうとしています。コロナ感染による死亡者が増え続ける中、国保のコロナ特例減免予算が廃止されました。感染症法上の扱いを5類に引き下げ、コロナ治療に患者負担を持ち込むなど国の責任と負担を縮小しようとしています。
 ロシアのウクライナ侵略を機に、台湾有事への備えとして南西諸島の基地化を強行していますが、この地域には145万人が暮らし、中国と台湾には3万2千を超える日本企業の拠点があります。輸出入額の2割以上を中国が占め、アメリカを上回っています。台湾有事に集団的自衛権を発動し、米軍とともに自衛隊が参戦すれば、報復攻撃は避けられません。食料の約7割、エネルギーの約9割を輸入に頼る日本国民が恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する道は「戦争回避」以外にありません。
 戦争か平和かが鋭く問われる今日、改憲阻止に力を合わせ、戦争を未然に防ぐ平和外交を政府に迫ることこそ、「平和でこそ商売繁盛」を信条とする民商・全商連の歴史的使命です。

二、要求運動の重点

 2・19日比谷集会(全中連主催)と3・13重税反対全国統一行動を結節点に危機打開と納税者の権利を守る運動を展開してきました。
 地方創生臨時交付金(臨時交付金)を活用した支援策を自治体につくらせ、実利実益につなげてきました。全商連が行った自治体アンケートでは、エネルギー高騰対策の直接支援をはじめ、「コロナ特別貸付や市の制度融資を借りた中小業者に元本と保証料の一部を補助」など、中小業者に寄り添って地域経済を守ろうとする自治体の努力が明らかになっています。
 全中連の省庁要請が国を動かしています。予備費を活用した経済対策が検討され始め、自治体への新たな予算措置に期待が高まっています。資金繰り支援では、政策金融公庫が実施してきたコロナ特別貸付の借り換えを円滑化する「スーパー低利融資」などの申込期限が9月まで延長されました。
 急浮上した税務相談停止命令制度を阻止する共同に力を注いできました。衆参の財金委員に要請し、15万人分を超える緊急署名を国会に提出しました。日本共産党の議員団と連携した国会論戦で、命令制度の目的について「脱税指南によって不特定多数の者が脱税を行う等の行為を防止すること」と限定させました。さらに、命令処分を行うには、①税務相談の内容が脱税や不正還付を指南するものであるかといった要件の該当性について個別に確認した上で、②納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するため緊急に措置を取る必要があるかどうかについて個別具体的な事実関係に基づいて判断する―という二重の制約が課されることをはじめ、命令処分が行政手続法の対象になり、処分の前に弁明の機会が付与されることを明らかにしたことは重要です。
 インボイス中止では、「いま書くべきは登録申請書ではなく中止署名」と呼び掛け、国会請願署名や地方議会への請願運動を展開してきました。フリーランスをはじめ業者団体、税理士と力を合わせて世論と運動を広げ、「登録締め切りを9月末まで延長」させました。中止・延期を政府に求める意見書採択は、昨年12月末の145地方議会からさらに増え続けています。「公明党の市議が請願を提案」「全会一致で採択」など、与党会派も無視できない状況をつくり出してきたことも大きな成果です。
 こうした前進面を確信に、次の運動を推進します。

1、経営危機打開の運動と自治体対策の強化

 中小業者への直接支援と地域循環型経済づくりを自治体に迫ります。新たな臨時交付金も生かして、政策提案を積極的に行い、実現させた支援策を広く知らせ、活用を進めます。中小業者の厳しい資金繰りを支える融資相談を旺盛に開き、経営継続を支援します。
 9月にオンライン形式で開催する第22回中小商工業全国交流・研究集会(商工交流会)に多くの会員参加を組織し、業者自身が交流し学び合う機会として成功させます。連続開催している全商連の経営対策交流会も参考に、危機の中でも商売を維持・発展させる知恵と工夫の交流を民商活動に根付かせ、県や地域での商工交流会運動に結び付けます。業者青年の参加を促し、経営意欲を高め合います。
 約8割の自治体が国保料・税を引き上げようとしていることを見過ごすわけにはいきません。引き下げを求める共同を強め、減免相談と集団申請に取り組みます。
 学校給食や学用品の無償化、タクシー乗車券の配布や各種補助金などで、取得が任意のマイナンバーカードを持つ者だけに恩恵を与える自治体の対応は憲法の平等原則に反しています。問題の大本にある地方交付税交付金の趣旨・目的から逸脱した国の対応を批判するとともに、マイナンバーカードの有無による住民差別を許さない世論と運動を広げ、自治体の対応を正します。

2、税務相談停止命令対策とインボイス中止のたたかい

 納税者の権利を脅かす税務相談停止命令制度への対策を進めます。民商・全商連の自主申告運動は脱税や不正還付とは一切無縁です。仕訳や記帳の仕方、所得控除の変更点や申告書の書き方などを教え合うことは税理士法上も規制の対象外です。納めるべき税額は自分で計算し、申告する自主申告運動を組織的かつ自覚を引き出す取り組みへと発展させます。納税者権利憲章制定とともに税務相談や税務書類の作成を納税者同士が自由にできるよう税理士法の改正に力を合わせます。
 税務署や取引先からインボイス登録の勧奨が強まっています。安心して実効的な対策を打てるよう学習・相談活動を強めます。「納税額を売り上げの消費税の2割に軽減」「1万円未満の取引はインボイス不要」など限定的で時限的な負担軽減措置でインボイスの害悪を消し去ることはできません。フリーランスのグループは「6月に策定される骨太方針に中止・延期を書き込ませよう」と行動しています。全国に500を超える事務所に専従者がいて、16万人の会員を擁する民商・全商連が実施中止を諦めず、持てる力を発揮することが求められます。宣伝・署名・議会請願・議員要請を推進し、実施中止の道をこじ開けます。
 税務相談停止命令制度への対策やインボイス中止運動について意思統一する第21回税金問題研究集会(7月23日、東京)に全ての組織から参加し、全国的な運動強化を図ります。

3、平和と民主主義、個人の尊厳を守る活動

 敵基地攻撃によって日本が反撃されることを政府が認めたことは重大です。「大軍拡反対」「戦争国家許すな」の声を大きく広げ、改憲阻止の運動を強めます。平和行進や原水爆禁止世界大会への積極的な参加で成功に貢献し、核兵器禁止条約の批准を政府に迫ります。
 岸田政権は、国民に割り振った個人番号(マイナンバー)の利用範囲を拡大するマイナンバー関連法案を今国会で成立させようとしています。社会保障と税、災害対策の3分野に限定された用途を国会に諮らず大臣が定める省令の見直しで拡大できるようにする狙いです。マイナンバーカードと銀行口座の紐づけは、社会保障を「負担に見合う給付」にし、国民に負担増とサービス切り下げを迫るために個人資産を把握する必要があるからです。健康保険証が廃止され、「マイナ保険証」に切り替えられれば、マイナンバーカードを取得して保険証と紐づけるか、資格確認書の発行を求めない限り、無保険状態に陥ります。
 医療機関にはマイナ保険証を読み取る設備の導入が義務付けられ、対応できない開業医が閉院の危機に直面しています。国民を医療から遠ざける皆保険制度の大改悪につながる暴挙を許すわけにはいきません。プライバシーを侵害するマイナンバーカードの利用拡大に反対し、個人情報の自己コントロール権確立を求める共同行動を強めます。

三、組織建設の重点

 消費税・インボイスや自主申告への学習・相談と拡大の独自追求で、年度末増勢をめざしてきました。全国的には2月末までの2カ月間で、商工新聞読者は198人増、会員は107人増となり、前進に転じました。しかし、昨年3月末現勢を上回るのは、読者で70民商、会員で59民商にとどまっています。
 この間、インボイスによる取引排除や税務相談停止命令制度の害悪を告発してきました。怒りを燃やし、2カ月余に「納税者の権利擁護」緊急署名への賛同を、1会員当たり2人分を超えて集めた県連もあります。納税者の権利救済や申告の税務援助をめぐり、納税者の苦悩に心寄せる税の専門家との連携も広げました。たたかいの歴史や世界で広がる権利擁護の前進への学びが打って出る取り組みへの力になっています。
 班会や支部役員会の開催が増え、助け合い相談や自覚的な記帳会が広がりました。「自主申告を身に付けた会員が仕事仲間に民商を紹介し、入会につながった」との報告もあります。「自主申告への学習相談が民商の真骨頂」です。確定申告を踏まえ、班・支部への会員所属と班長・支部役員づくりを強めることも大切です。
 「アクションデー」「まちなかジャック」「民商の風」などの宣伝・対話で、民商に対する地域業者の注目を高めました。全商連ホームページへの訪問は、2月まで5カ月連続で20万人超となりました。SNSのツイッターでは、湖東税理士の解説動画が延べ5万人超に拡散されています。商工新聞宣伝紙やチラシを活用し、民商押し出しの情報を相乗的に発信することが求められています。
 全商連は昨年12月の県連拡大推進委員長会議で、第1次「成長・発展目標」が持続拡大にどう生かされているかを明らかにしました。◆営業動向調査や署名での要求の掘り起こし、◆経営交流や学習・相談への信頼、◆政治的対決の中での自主記帳・小法人の組織化、◆班・支部づくりと読者前面の拡大、◆県連での足並みと総合力、です。70年の歴史を力に、創造的な運動展開と会勢の全国的な前進に力を合わせましょう。

1、中間報を生かし、署名と学習・相談、商工新聞前面の拡大を

 会勢の今日的な到達は、春や秋の独自追求だけでは年間増勢を実現できないことを明らかにしています。「減らさず増やす」毎月の持続拡大に取り組むことが強く求められます。局面の打開へ5月から8月まで、月末報に加えて毎月15日を中心とした「中間報」に取り組みます。全会員対話を軸に、要求運動と組織建設の一体的推進を図ります。
 多くの県連・民商が総会を控えています。統一地方選挙の結果を踏まえた情勢討議と結び、8月末の全商連第2回理事会に向けて、持続拡大に足を踏み出すための第2次「成長・発展目標」を具体化します。
 署名と商工新聞で運動を組織する取り組みを強めます。徴税権力への警戒心と団結を強めて、日常的な自主計算活動と納税者の権利を守る学習・相談で仲間を増やす力を高めます。

2、班・支部を再建強化し、困難を乗り越える大学習運動を

 民商の機関には班・支部活動を直接、指導・援助する重要な役割があります。
 「集まって、話し合い、相談し、助け合う」活動を重ねることで苦労や喜びを共有し、広い視野から運動の焦点を学び合って、道理ある要求を班・支部で取り上げられるようにします。新会員歓迎学習会も、班・支部の仲間との信頼関係を高めるようにします。全商連は6月25日に、会員の活動参加を広げるため、「商工新聞中心の活動と班・支部建設」全国交流会を開催します。
 再延長する「制度学習大綱のコロナ特別措置」を生かして、困難打開の大学習運動を展開します。県連と民商でよく調整し、幹部学校や支部役員学習会、班長学習会の年間計画を持ち、積極的な開催を推進します。
 全商連は、事務局活動の継承発展へ、9年ぶりの第17回事務局員学校と昨年に続く第58回新事務局員学校を計画します。県連は2023年事務局員交流会を要項に基づいて開催します。学習・教育制度の根幹に、あらためて「基本方向」と「70年史」を位置付けるようにします。

3、連合会組織としての民商間の連携・再編の検討、総合力向上を

 民商・全商連は、連合会組織として、全国どこでも中小業者の苦悩に寄り添い、問題解決への助け合い相談を展開できるようにすることをめざしています。
 県連としても指導・援助を強めることで、拡大運動の独自追求に足並みをそろえ、民商間の相互信頼も培うようにします。全ての民商が地域で「中小業者運動のナショナルセンター」の役割を担えるよう、役員会の選任・運動財政の確立・専従事務局員の育成という「民商設立の3要件」を満たす再編・強化に取り組みます。業者青年への働きかけを進め、運動と組織の継承と持続的発展に向けた対策を強めます。
 コロナ禍での助け合い共済の役割に確信を深め、命と健康を守る活動に力を合わせます。第18回業者婦人決起集会(6月5日、東京)の成功を支援します。業者青年実態調査での対話運動を応援し、民商と青年部の魅力を伝えます。総合力を高め、商工新聞読者・会員・共済加入者・婦人部員・青年部員の5課題で新たな構成員を迎えるために相互の協力・共同を強めます。

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