【声明】税務相談停止命令制度創設に断固抗議し、納税者の権利擁護・発展への共同を呼び掛ける|全国商工新聞

全国商工新聞

2023年3月28日
全国商工団体連合会
会長 太田義郎

 岸田文雄政権は28日、大軍拡に突き進む2023年度予算案とともに、「税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令制度の創設等」(税務相談停止命令制度)を盛り込んだ税理士法の一部「改正」案を可決・成立させた。「戦争国家」づくりと軌を一にして、税金の集め方と使い道にもの言う納税者の自主的な活動の弱体化を狙う岸田政権に、満身の怒りを込めて抗議する。
 税務相談停止命令制度は、①規制対象が広範かつあいまいで、自主的な申告納税を支援する団体や個人の「税務相談」が有償無償を問わず対象になり得る②財務大臣や国税庁長官に広範かつ過大な裁量権が与えられ、「納税義務の適正な実現に影響を及ぼすことを防止するため」に「おそれ」の段階で恣意的に介入できる③憲法31条、39条の罪刑法定主義から要請される「明確性の原則」「過度の広範性禁止の原則」に反する④違反した場合には1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科し、命令の内容をインターネット上で3年間公開するなど、看過できない問題点を内包している。納税者同士の相談活動を取り締まるために悪用される危険性もぬぐえない。
 税金について相談し、教え合うことを財務大臣が厳罰で「停止」させることは、憲法11条(基本的人権)、13条(個人の尊重・幸福追求権)、21条(集会・結社の自由)、28条(団結権)に反する行為であり、「納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則」と定めた国税通則法16条を踏みにじるものである。

 全商連は、自由な自主申告運動を弾圧する悪法阻止の共同を呼び掛け、農民運動全国連合会、全国生活と健康を守る会連合会、全日本年金者組合、東京土建一般労働組合、納税者権利憲章をつくる会、自由法曹団、東京税経新人会とともに、自主申告運動の擁護・発展をめざす共同を進めてきた。
 3次に渡る国会行動を展開し、27日までのわずか3カ月で集まった16万人分を超える「納税者の権利擁護を求める緊急署名」を国会に提出してきた。衆参両院の財金委員に廃案にするよう要請するとともに、申告納税制度の趣旨と納税者の権利を尊重した対応を求める付帯決議の採択を働き掛けてきた。
 財務省へのヒアリングを繰り返し行い、税務相談停止命令の対象と目的の明確化、反論の機会などを設けるなど適正手続きを求め、納税者同士で行う自主申告運動への介入は許されないと迫ってきた。こうした共同行動と国会論戦を通じて、停止命令の目的と対象を限定させ、今後の活動に生かせる答弁を引き出したことは重要である。
 衆議院財務金融委員会(2月21日)で財務省は「究極的な目的は、不正に国税を免れさせること等による納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止すること。脱税指南等によって不特定多数の者が脱税を行う等の行為を防止すること」と答弁し(日本共産党・田村貴昭議員の質問)、参議院財政金融委員会(3月17日)では、「納税者同士で一般的な知識を学び合うような取り組みを対象にするものではない」と答弁し、命令処分を行うには、①税務相談の内容が脱税や不正還付の指南に該当し②納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼす場合―という二重の制約があり、命令処分の前に弁明(反論)の機会が与えられることも明らかになった(同・小池晃議員の質問)。

 今後のたたかいで重要なことは、署名運動で広げてきた世論と国会答弁を生かし、「脱税や不正還付の指南を取り締まる」ことを口実にした自主申告運動に対する国家権力の介入に歯止めをかけることである。
 アメリカでは税務相談は有償でない限りだれでも自由にできる。イギリスでは、家族・友人等に対する無償の税務代理は誰でも可能とされている。さらに諸外国では、市民の助け合いによる無償の申告支援や税務援助が当たり前に行われている。
 納税者の権利保護を明確に定めた納税者権利憲章の制定に背を向け、世界の流れに逆行する日本の税務行政を是正することは急務である。
 民商・全商連が取り組んでいる自主申告運動は、脱税や不正還付の指南とは一切無縁である。
 民商・全商連は、税務相談停止命令制度の創設にもひるまずゆるがない自主申告運動を推進するとともに、納税者権利憲章の制定や、市民の自由な税務相談を規制している税理士法の改正など、納税者の権利擁護・発展へ、さらなる共同の強化を呼び掛けるものである。

以上

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから