原油価格・物価高騰対策 6月議会で臨交金1兆円の支援策次々 燃油補助、水道料免除など 9月議会へ自治体要請を|全国商工新聞

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 政府が、2022年度補正予算で1兆円を組んで創設した「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分)」(以下、臨交金)。それを活用した自治体の支援策が6月議会を経て、つくられています(表)。各地の民主商工会(民商)は、制度の学習会を開催したり、内容の充実や申請方法の改善などを求める自治体要請に取り組んでいます。

 原油価格高騰対策として、燃油代が多くかかる運送業などへの補助が目立ちますが、三重県津市は業種に関係なく、今年1月から6月のいずれかの月のガソリン、灯油、軽油、重油、電気およびガスにかかる経費が20万円以上の小規模事業者は10万円、同じく10万円以上20万円未満には5万円を給付する事業者支援策を始めました(7月11日から)。
 他にも、「1事業者5万円、運送事業者は10万円上乗せする『原油高騰対策支援金』を実施」(北海道津別町)、「売上高に応じて最大20万円を交付する『原油価格・物価上昇対策支援金』を創設」(鹿児島県大崎町)、「申請不要で水道料金を免除」(埼玉県鳩山町、奈良県生駒市など)などが広がり、必要書類を「確定申告書第1表又は住民税申告書とする」など簡略化する工夫(前出の津別町)も見られます。「金利・保証料自己負担なしで区があっせんする『原油価格・物価高騰等緊急対策資金』を実施(限度額300万円)」(東京都墨田区)した自治体もあります。
 一方、すでに募集期間が終了したり、予算を使い切って事業が終了した制度もあります。支援制度の継続実施とともに、中小業者の実態に見合う使い勝手の良い制度への改善・充実を求める自治体要請がますます重要です。9月議会に向け、仕入れ高騰アンケートに取り組むなど地域の業者の実態と要求を明確にすることも大切です。
 政府は、臨交金について「原油価格・物価高騰に直面する生活者や事業者に対して、自治体が実施する事業に幅広く活用することが可能」と説明しています。臨交金を活用した事業実施計画の第2次締め切りは7月29日ですが、内閣府地方創生推進室・臨時交付金担当は「物価高騰の状況によって3回目の実施計画の募集はあり得る。最終受け付けは冬頃に予定している」としています。

8業種以外も対象に 群馬・前橋民商 前橋市に要請

「原油価格・物価高騰支援金」の改善や申請の簡素化などを求めた前橋民商の前橋市への要請

 群馬・前橋民商は1日、国の臨交金を活用して前橋市が「原油価格・物価高騰支援金」を創設したことを受けて、制度の改善や申請の簡素化などを求めて要請しました。松本賢一会長=内装工事、中山誠二副会長=ピアノ調律=ら3人が参加し、市産業政策課の2人が応対しました。
 申請の際に必要な書類として申告時に提出義務のない「収支内訳書」や法人の「個別注記表」などが記載されており、任意提出の書類を求めないよう要望。市は「(収支内訳書など)無いものは提出しなくてもよい」「代替書類で済ませられるものがあれば対応する」と回答しました。
 対象を建設、製造、運輸など8業種に限定した理由について、「この間の支援制度の対象にならず、原油価格と物価高騰の影響を受けている業種だ」と説明。民商から「コロナ禍や原油高で大打撃を受けている運転代行業が対象外なのは、おかしい。同じサービス業でも、産廃業は対象に入っている」と指摘し、対象とするよう強く求めました。市税完納が要件になっていることに対しても、「国の持続化給付金や事業復活支援金は要件としていない」ことから要件の撤廃を要請しました。
 いずれの要望についても、市は改善を約束しなかったことから、民商では制度を活用しつつ、再度、要請を行う予定です。

コロナで需要減・物価高で粗利減 2重苦を乗り越えよう 岩手・一関民商 経営力強化学習会

「原価計算表」で経費の削減なども検討した一関民商の経営力強化学習会

 「コロナ禍による需要減と、物価高による粗利益の減少という『2重苦』を経営革新で乗り越えよう」―。岩手・一関民主商工会(民商)は6月30日、「経営力強化学習会」を開催し、7人が参加しました。時々の情勢に対応した経営戦略を策定していく目的で、2016年から民商が継続的に開催しているもの。
 はじめに、直近の一関市民の所得分布で所得50万円以下の市民が51%に達する状況を基に討論しました。理事のTさん=クリーニング=は「地域の所得が下がっていることを強く実感している」と話し、「外部から入ってきた大規模店が不当に安い価格を掲げて、そこにお客さんが集中する構図になっている」と指摘。また、Aさん=ギター・アンプ製造=は「域内のみでは、高価格商品の販売は難しい」と述べ、「地域の所得が上がらない限り、業者は真っ当な対価を得られない。業者の努力だけでは間尺に合わない」と問題提起しました。
 物価高騰に関しても情報交換を行い、一関での中小業者の営業に欠かせないガソリンが13%、電気が18%、ガスが22%、食品も小麦17%、食用油36%などの値上げの実態を交流。初参加のSさん=自転車販売・整備=が「自転車の仕入れ値が一気に25%も引き上げられ、売り上げが鈍っている」と報告し、「物価高と連動して給与が上がればいいが、上がるのは物価だけ。どうしようもなくなる」と悩みを告白。Yさん=デザイナー=は、「デザインの仕事は影響が軽微かと思っていましたが、印刷をはじめ外注の単価が上がり、利益率が下がっています。価格への上乗せは難しく、困っている」と厳しい現状を打ち明けました。
 「原価計算表」に基づいて経費を削減する方法がないか検討し、生産性の向上や業務の効率化で原価を圧縮する方法や、新製品や新規サービスの開発・提供で、原材料の高騰分を価格に転嫁する方法なども学習。しかし、挑戦しようにも「費用を簡単に調達できない」との悩みが出されました。国の「小規模事業者持続化補助金」や市の「農商工連携補助金」などが紹介されると、「ぜひ挑戦してみたい」「落ち込んでばかりはいられない。新しいことをしながら、これまでの事業を守っていきたい」と話していました。
 民商では、今後も学習会を開催し、それぞれの実践例を学び合い、危機打開への備えを強めていくことにしています。

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