建設資材が急騰 契約後の値上げも… 約款・法に基づき話し合いを|全国商工新聞

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(記事とは関係ありません、画像一部加工)

 ウッドショックやウクライナ侵略などの影響で、建設資材の急激な高騰が起きています。建設資材物価は2021年1月と比較して16%上昇しており(土木部門11%、建築部門20%上昇、建設物価調査会総合研究所)、建設コストは8~10%上昇しています。
 全商連の緊急アンケートでも「工事見積もりをしてから工事に入るのが通常の流れだが、工事の着工時には見積もりした時より値上がりしており、採算が取れない」「工事を受注した時の材料の値段と比べ、2カ月後に工事を開始する時には材料は20%アップしている。『材料がアップした費用をもらえませんか』と言っても出してくれない」「原材料の上昇分が請け負い単価に反映されず、かといって人件費は削れず、私(事業主)が耐えるしかない状況だ」など、建設業・建築業の深刻さが際立っています。価格転嫁では「きちんと転嫁できている」は23%にすぎず、「一部転嫁」が45%、「ほぼ転嫁できていない」が18%に上ります(図)。

 資材の高騰・品不足に伴う価格上昇・工事遅延等が発注者に適切に転嫁されるようにすることが必要です。
 建設工事の請け負い契約は、その契約の当事者の合意によって成立しますが、建設業法は、請け負い契約の適正化のための規定(法第3章)を定めるとともに、中央建設業審議会(中建審)が、当事者間の具体的な権利義務の内容を定める「標準請負契約約款」を作成し、その実施を当事者に勧告しています。
 公共工事用として「公共工事標準請負契約約款」、民間工事用として「民間建設工事標準請負契約約款」、下請け工事用として「建設工事標準下請契約約款」を作成しています。事業者は、これを順守した契約の締結が要請されます。
 住宅の建設工事などの請け負い契約は、契約締結後に、資材や労務費の値上がりや見込み額に違いがあったとしても、契約通りの請け負い代金で工事を完成させなければ債務不履行となりますが、同約款では、契約後、工事期間中の資材価格高騰、納期遅れなどにつき、柔軟な条件変更が可能となるように特則を設けています。
 建設事業者の元請けで構成する日本建設業連合会(日建連)は4月13日、政府に対し、①公共工事においては、標準約款どおり物価スライド条項を運用いただけるよう、地方公共団体等への指導②民間工事においては、標準約款どおりに工事期間中の請負代金変更条項を契約に盛り込むよう民間発注者への指導等―を要請しています。
 事業者が請け負い契約を結ぶ場合には「物価、賃金が変動し、請負代金が適当でないと認められるときに工事金額を変更することができる」規定を設けておくことが必要です。
 政府も「事業者団体に対し改めて価格転嫁への協力」を求めています。特則を設けていなかった場合にも、その趣旨を踏まえ、話し合いを求めていくことです。
 相談窓口「建設業フォローアップ相談ダイヤル」を全国10の地方整備局等に新たに開設しています。

「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」抄

 (工事又は工期の変更等)
 第三十条 発注者は、必要があると認めるときは、工事を追加し、又は変更することができる。
 5 受注者は、この契約に別段の定めのあるほか、工事の追加又は変更、不可抗力、関連工事の調整、近隣住民との紛争その他正当な理由があるときは、発注者に対して、その理由を明示して、必要と認められる工期の延長を請求することができる。
 (請負代金額の変更)
 第三十一条 発注者又は受注者は、次の各号のいずれかに該当するときは、相手方に対して、その理由を明示して必要と認められる請負代金額の変更を求めることができる。
 五 契約期間内に予期することのできない法令の制定若しくは改廃又は経済事情の激変等によって、請負代金額が明らかに適当でないと認められるとき。
 六 長期にわたる契約で、法令の制定若しくは改廃又は物価、賃金等の変動によって、この契約を締結した時から一年を経過した後の工事部分に対する請負代金相当額が適当でないと認められるとき。

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