国の責任が最大の焦点 「生業を返せ、地域を返せ福島原発訴訟」 最高裁で結審|全国商工新聞

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最高裁前をデモ行進する原告団(中央が中島孝団長・相双民商会員)

 東京電力福島第1原発事故で生活と生業が奪われた住民らが国と東電に損害賠償を求めた「生業を返せ、地域を返せ福島原発訴訟」(生業訴訟)の上告審弁論が4月25日、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)で開かれました。最大の焦点は、最高裁が原発事故について、国の責任をどう判断するかです。
 原告と国の双方が弁論を行い、結審しました。
 国側は、国の機関が2002年に公表した地震予測「長期評価」に基づく津波の予見性を否定し、防潮堤設置などの対策を取ったとしても事故を防げなかったと、規制権限不行使の違法を認めた高裁判決の破棄を求めました。
 原告側は、「長期評価」が発表されてから東電に対して何もしなかった経済産業省の旧原子力安全・保安院の対応は、「東電による不誠実ともいえる報告を唯々諾々と受け入れることとなったものであり、規制当局に期待される役割を果たさなかったものと言わざるを得ない」との原審の判決を引用しながら「規制法令の期待も、被害住民の期待も裏切るものだった」と指摘。「国の主張は、何もしなかったことを後付けで合理化しようとするものだ」と厳しく批判しました。
 事故当時、福島第1原発から7キロの富岡町で理容業を営んでいた原告の深谷敬子さんが意見陳述。「自宅も店も、生きがいだった仕事とお客さんとの交流も奪われた。人生を返してほしい。それが無理なら、何が、どこが悪かったのか、明らかにしてほしい。そうでなければ、またいつか、同じような原発事故が繰り返される」と訴えました。
 同訴訟では、二審仙台高裁が20年9月、国と東電の賠償責任を認め、国と東電に約10億1千万円の支払いを命じました。国と東電、原告の双方が上告していましたが、最高裁は3月2日付で東電の上告を退け、賠償額は確定しています。最高裁が国の責任をどう認定するかが注目されます。

6月に判決が

 福島第1原発事故を巡っては、福島県内の住民や事故後に各地に避難した住民らにより全国で30の集団訴訟が提訴されました。これまでの高裁判決では、国の責任を巡り、判断が分かれています(表)。福島、前橋、千葉、松山の4訴訟のうち、福島、千葉、松山の3件は「対策を講じていれば事故は防げた」と国の責任を認めていますが、前橋訴訟の東京高裁判決は、国の責任を認めていません。
 最高裁は、これら4件の集団訴訟について、弁論で意見を聞いた上で、国の責任に対し、統一の判断を6月頃に示す見通しと言われます。生業訴訟原告団の中島孝団長(相双民商会員) は「裁判所がいま裁こうとしているのは、“責任はないんだ”の一点張りを続けてきた国の問題です。皆さんと力を合わせて、この裁判を勝ち抜きたい」と話します。

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