22年度政府予算(案)の特徴(下)不公平税制そのまま 財政破綻の危険性も|全国商工新聞

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 岸田首相が「新自由主義からの転換」を掲げましたが、「1億円の壁」を生み出している株式売却益などの課税強化など、富裕層優遇の金融所得課税の是正は見送られました。
 欧米は、コロナ対策に伴う財政支出拡大を、大企業や富裕層への増税で賄おうとしています。バイデン米大統領が、施政方針演説で大企業や富裕層への増税を打ち出し、欧州連合(EU)も環境関連の新税の導入を相次いで検討し始めています。
 一般会計税収を過去最大額の65兆2350億円と見込みますが、税種別にみると、最も大きな割合を占めているのが消費税です。所得税、法人税、消費税の基幹3税のうち、所得税の最高税率や法人税率が引き下げられる一方で、導入時3%だった消費税率が段階的に引き上げられ、安倍晋三政権下で税率を2度引き上げ、20年度以降、3年連続で最多の税収となっています。
 所得の低い人ほど負担の重い消費税は最悪の不公平税制で、是正が求められます。世界ではコロナ禍で国民の負担を減らそうと、付加価値税を導入している75の国と地域(導入国の4割以上)で税率引き下げの動きが広がります。岸田政権は、消費税減税の要求にも背を向け、小規模事業者やフリーランスに新たな消費税負担を迫るインボイスの推進予算を計上します。
 賃上げ減税が盛り込まれましたが、赤字企業や少額しか法人税を納めていない企業には恩恵がなく、賃上げ効果は見通せません。
 年金も0・4%の削減。中小企業予算も、農林水産予算も削減され、米価の大暴落への有効な対策もありません。

大企業向けに大盤振る舞い

 予算案の中で大胆な重点化が図られているのが「イノベーション」「デジタル」「経済安全保障」です。「新たな成長推進枠」として特別扱いされ、関連する大企業には大盤振る舞いされています。
 9月に発足したデジタル庁は、初の通年予算として4720億円を盛り込みました。総務省は、デジタル庁の予算とは別にマイナンバーカードの普及に1027億円を計上しました。
 高速炉の技術開発など原発依存を続け、水素・アンモニアの混焼技術の研究開発(約1千億円)など、気候危機打開に逆行する石炭火力の延命を狙います。
 各紙も指摘するように、政府予算は財政規律が弛緩し、深刻な状況に陥っています。歳入の34・3%が国債による借金で、歳出の22・6%を債務の償還と利払いが占めます。国債残高は21年度末で1千兆円を超えます。
 ひとたび金利が上昇すれば、負の連鎖で財政破綻に陥る懸念なども否定できません。巨額の財政赤字が生み出す潜在的なリスクを、改めて認識した対応が求められます。


 >> 22年度政府予算(案)の特徴(上)不十分なコロナ対策 軍事費は異常な突出

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