全国商工新聞

 民商・全商連はこの10年間、事前通知に「例外規定」などを設けた「改正」国税通則法の下で、不当な税務調査とたたかってきました。強権的な税務行政に対しては、差押禁止財産である児童手当を差し押さえた滞納処分を違法と断罪した判決を勝ち取り、自治体の滞納整理マニュアルを改善させました。一方、消費税が二度にわたって増税される中で、「申請型」換価の猶予など「納税緩和制度」の活用を大きく広げ、負担を軽減させてきました。

強権的徴収とたたかい猶予制度活用し負担減

鳥取県が児童手当を差し押さえたのは違法と断罪した広島高裁判決を喜ぶ原告団と支援者たち=2013年11月27日、広島高裁松江支部前
納税の猶予申請書を集団で提出した静岡・藤枝民商=2015年3月27日、藤枝税務署

 2011年秋の第179回臨時国会。民主(当時)、自民、公明の3党は、国税通則法改悪法案を強行成立させました。更正の請求と、全ての更正処分への理由付記とを引き換えに、質問検査権について帳簿書類などを提示・提出させ、留め置きできると明記し、これまでになかった強力な権限を新設しました。見逃せないのは、調査の事前通知が法律に明記されたものの、「事前通知を要しない場合」が規定され、税理士以外の立ち会いを「調査の遂行に支障をきたす恐れ」などと例示したことです。
 全商連は12年1月27日、「国税通則法対策・消費税闘争全国交流集会」を開き、45都道府県から318人が参加。「改悪部分を形骸化させ、『納税者の権利憲章』(第2次案)や『税務調査の10の心得』を身に付け、納税者を守るたたかいを広げよう」と決意を固め合いました。各地の民商では、自主記帳・自主計算を学び、税務調査では「事前通知がない理由を示せ」「第三者の立ち会いは納税者の権利」などと主張し、不当な調査とたたかいました。
 強権的な徴収も強まりました。鳥取県では08年6月11日、鳥取民商の瀧川卓也さん=不動産=の預金口座に差押禁止財産である児童手当13万円が振り込まれた9分後、県は預金口座を差し押さえ、滞納税金に充当しました。瀧川さんは民商の仲間と立ち上がって裁判をたたかい、鳥取地裁は13年3月29日、「権限を乱用した違法」と県を断罪。県は控訴しましたが、広島高裁は同年11月27日、「児童手当法の趣旨に反し違法である」として県に13万円の返還を命じました(判決は確定)。
 瀧川さんは「金を取り戻すためでなく、差押禁止財産を差し押さえる不当行政に歯止めをかけたかった。民商の仲間の支えがあったから頑張れた」と喜びを口にしました。
 平井伸治県知事は同年の12月県議会で、瀧川さんに謝罪し、滞納整理マニュアル改善を約束。総務省も「(滞納処分は)滞納者の個別・具体的な実情を十分に把握した上で…」とする指示文書を地方自治体に発出(14年1月24日)。これを受け、滞納整理マニュアルを改善する自治体が増えました。全商連常任理事・税金対策部長の服部守延さんは「命を奪うような強権的な徴収が広がる中で、預金口座に振り込まれた児童手当を狙い撃ちにした差し押さえを違法とした判決の意義は大きい。鳥取のたたかいが全国の仲間を励まし、徴収行政を改善させる力になった」と強調します。
 一方、国民健康保険(国保)料・税や消費税、地方税の負担を軽減させる「納税緩和措置制度」(納税の猶予、換価の猶予、滞納処分の停止)を積極的に活用し、「安心して分納できる」「資金繰りに余裕ができた」などの声が広がりました。
 14年4月からの消費税8%への大増税によって滞納が急増し、15年度の新規滞納発生額は4396億円と13年度の1・6倍に。そのことを見越して、15年4月に従来の税務署長による「職権型」に加えて新設された、納税者の申請による「申請型」換価の猶予は3万6609件(16年7月~17年6月)の申請に対し、3万5179件が許可。許可率は96%を超え、申請すれば、ほぼ認められました。
 15年9月、安倍自公政権が安保法制を成立させるなど「戦争する国づくり」と改憲策動が強まる中、全商連は17年11月26日、「納税者の権利宣言」を16年ぶりに改訂し、第5次案を発表。国家の根幹をなす「税の在り方と使い道」を根本から正すことを提起し、「たたかってこそ権利は守られる」と呼び掛け、会内はもとより会外からも宣言は、「法とともに広範な中小業者・国民のたたかいの有力な道具となる名品」(浦野広明税理士)など期待の声が寄せられました。

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