全国商工新聞

販路開拓や新事業創出

 小規模企業白書も、同じく3部構成です。第2部は「消費者の意識変化と小規模事業者の底力」をテーマに、コロナ禍での小規模事業者を取り巻く環境の変化と対応、環境変化に強い小規模事業者の特徴を分析しています。
 コロナ感染症流行拡大の影響は、業種別に見ると、宿泊業や飲食サービス業で大きく、売上高50%未満に減らしている事業者が28.6%(宿泊業)、11.9%(飲食サービス業)です。さらに「50以上75未満」が46.8%(宿泊業)、50.5%(飲食サービス業)おり、合わせると75.4%(宿泊業)、62.4%(飲食サービス業)が、売り上げを4分の1以上減らしていることが明らかにされます。
 「感染症流行前の水準に戻る時期」について、「既に戻っている」とする回答より、「戻ることはない」と回答する事業者の割合が高いことも注目されます。
 そして、消費額の推移により「交際費」や「外食」「被服及び履物」「教育娯楽サービス」などの支出が低く抑えられていることも明らかにします。
 これらを踏まえ、「事業の見直しと対応」の方向を教訓的に示します。
 それは「変化に柔軟に対応」することだと強調。柔軟対応の事業者は、感染症をきっかけに「既存商品・サービスの見直し」「営業活動・商談等のオンライン化」「販売対象の見直し」「ECサイト等による販売・予約受付」「新たな商品・サービスの開発」「SNSを用いた宣伝広告」を顧客の維持・増加のために取り組んでいると述べます。そして、オンラインツールの活用により、約半数が「大いに効果があった」「ある程度効果があった」と回答。この取り組みを行ったことにより、商圏が「広がった」と回答しています。
 「感染症流行下での販路開拓、新事業創出の概念図」(図)は、事業戦略の関連性を分かりやすく整理しているので、参考になります。

 小規模事業者が白書で最も役に立つ部分は、この戦略の九つの具体事例です。①地元需要の掘り起こし②既存商品・サービスの提供方法の見直し③販売対象の見直し④移住や起業⑤新たな商品・サービスの開発⑥事業分野の見直し⑦オンラインツールの活用⑧事業者間連携⑨支援機関の活用-です。
 白書は、この九つについての具体例も紹介します。
 例えば、①地元需要の掘り起こしでは、感染症流行のために首都圏、関西圏の仕事が困難になった北海道北見市の映像情報製作・配給業者が、苦境に陥った事業者を支援するために無償で3分ほどの動画を製作。その動画がSNS、YouTubeで見られるようにし、影響は支援した店舗だけにとどまらず、同社の認知度が上がり、仕事確保にもつながったことが紹介されます。
 ②既存商品・サービスの提供方法の見直しでは、テイクアウトのみの営業にシフトした飲食店が、テイクアウトで店の味を知った新規顧客が店内飲食に訪れる固定客となり、店内営業再開以降もテイクアウト需要が落ち込まず、売り上げを伸ばしている埼玉県川口市の事例などが紹介されます。

説得力のある「計画」を

 2部の2章では「経営環境の変化に強い小規模事業者の特徴」をテーマに、感染症の影響を受けながらも、回復している小規模事業者の特徴を4点に整理しています。回復が見られる事業者は、A「日頃から経営分析」を行い、B「常連・上顧客・地域とのつながり」を強め、C「ブランド化」、D「SDGs」も意識していると述べています。
 「経営計画」は、店なり事業所の経営方針を文書にしたものです。自分のために作る経営計画の他、金融機関に説明するためのもの、補助金などを獲得するためのものなどがありますが、他者に提出するための経営計画は、客観的で説得力のあるものにする必要があります。
 自社の強み・課題分析を客観的にすることを前提に①から⑨を戦略の視点、AからDの戦術上の各ポイントを意識しながら「経営計画」に落とし込み、アピール度の高いものにすることが求められます。
 しかも計画は、固定したものにすることなく、定期的に見直す、顧客意見を反映させつつ「(計画に)取り入れていく」、そして「計画策定、実行、見直し」のPDCAサイクルを回すことが、コロナ禍の対応としても有効であることが強調されます。
 白書のこれらの指摘は、コロナ対応のための「事業再構築促進事業」などに1兆1500億円弱の巨額の予算が充てられていることからも、最近の中小企業政策のトレンドとして強調されてきたもので、特に目新しいものではありません。これらを参考にしながら、説得力のあるアピール度の高い経営計画を策定し、チャンスを広げていきたいものです。


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