2021年版中小企業・小規模企業白書を読み解く〈全3回〉①中小企業白書 コロナ後の戦略が重要に|全国商工新聞

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 4月に公表された、経済産業省・中小企業庁「2021年版中小企業白書」「小規模企業白書」では、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)が中小企業・小規模事業者に与えた影響や、この危機を乗り越えるために重要な取り組みとして、事業環境の変化を踏まえた事業の見直し、デジタル化、事業承継・M&Aに関する取り組み等について、豊富な事例を交えながら調査・分析を行っています。コロナ禍は、社会・経済に大きな影響を与えています。感染症流行による消費者の意識・行動の変化に着目し、中小事業者は経営戦略を立てていくことが求められます。白書の内容を紹介しつつ、特に経営の見直しや事業計画の策定に役立つポイントなどを3回にわたり解説します。

 21年版中小企業白書は、「令和2年度(2020年度)の中小企業の動向」「危機を乗り越える力」「令和2年度において講じた中小企業施策」の3部構成です。

小規模ほど経営厳しく

 第1部では、中小企業の多様性を踏まえ、役割・機能によって中小企業を「グローバル型」「サプライチェーン型」「地域資源型」「地域コミュニティ型」の四つに分け、それぞれの類型に応じて、現状分析と支援の方向性を述べます(図1)。

 感染症が売上高や資金繰り面に与えた影響について従業員規模別に分析し、規模が小さいほど売上高の落ち込みが大きいこと、業種別では宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業で影響が深刻で、建設業では低いことを明らかにします。
 売上高減少に伴う資金繰り等の支援については、持続化給付金は423万件、約5.5兆円(2月末)、家賃支援給付金は約101万件、約8800億円。雇用調整助成金は267万件、2.9兆円の支給を行ったこと。さらに、金融機関における資金繰り支援も実行率が99%を超えており、これら支援により「倒産件数の増加を抑えた可能性がある」と評価します。
 しかし、「資金繰り支援は将来の要返済額を減らしたわけではなく、支援を受けた中小企業は今後の返済に備える必要がある」と、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナを見据えた経営戦略策定の重要性を強調します。

「回復」企業は3割超も

 第2部では、感染症の影響を小さく抑えられた企業や、感染症流行下でも回復を遂げている企業の特徴を分析し、それらの企業では「経営計画の見直しや、感染症流行による事業環境への柔軟な対応」がなされていることを豊富な事例で示します。
 「同業他社と比較した業績回復の状況」(図2)では、同業他社と比べて「回復しているという認識を持つ企業は業種を問わず3割以上存在する」との指摘は注目されます。

 利益率の高い企業(総資本利益率2%以上)の企業では、「新規顧客開拓」「生産効率改善」「高付加価値製品・サービスの拡充」(図3)が行われ、経営計画改善のPDCAサイクルが回されています。事業環境が急速に変化する中、まずは足元の資金繰りの確保。その上で「自社の財務基盤について点検し、支援策も活用しながら、落ち着いて事業継続に向けた策を検討する体制を整えることが重要である」と指摘します。

 併せて、デジタル化推進、事業承継とその一つであるM&Aも強調しますが、中小企業者等にはまだまだ敷居が高く、環境整備が前提になります。
 「多くの企業がIT人材を育成する体制を整えられていない現状が分かった」との指摘のみで、有効な打開策は示せていません。デジタル格差が一層広がる懸念は払拭されません。

中小企業・小規模事業者

 白書の中小企業は①製造業・建設業・運輸業その他の業種(以下の②~④を除く)資本金3億円以下、常時雇用する従業員300人以下(以下同)②卸売業1億円以下、100人以下③サービス業5千万円以下、100人以下④小売業5千万円以下、50人以下。うち小規模企業者は、常時雇用する従業員が①製造業・建設業・運輸業その他の業種20人以下、②卸売業③サービス業④小売業5人以下を指します。


 >> 2021年版中小企業・小規模企業白書を読み解く〈全3回〉②小規模企業白書 環境変化に強い企業とは

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