国保など特例減免で乗り切ろう 自治体要請で減額も|全国商工新聞

全国商工新聞

 「国民健康保険(国保)料・税の減免は、現金を手元に残せる点で給付金と同じくらい助かる」「コロナ減免を活用し、危機を乗り越えよう」―。今年度の国保料・税のコロナ特例減免の実施や傷病手当の拡充などを求め、各地の県商工団体連合会(県連)や民主商工会(民商)、婦人部が自治体要請を繰り広げています。今年度は、コロナ特例減免への国からの財政支援が2~8割へと減らされたにもかかわらず、「特例減免を今年度も実施する」「今年度に限って平等割を半減」などの成果を勝ち取っています。

「今年度も実施」回答 神奈川県婦協が21自治体に

真鶴町の松本一彦町長(左)に要請した神奈川県婦協役員ら

 神奈川県連婦人部協議会(県婦協)は「コロナ禍から暮らしを守るために、県内の全33自治体へ要請しよう」と、これまでに21自治体に要請、懇談しています(5月26日時点)。
 県婦協は4月26日、目黒千惠美会長、内藤登喜子副まなづる会長ら3人が箱根町、真鶴町、湯河原町、大井町に要請しました。
 「今年度も国保特例減免を実施する」と回答した大井町の担当者は「国からの財政支援は2割程。残り8割の自治体負担は町の積立金で、しっかり対応していく。コロナ禍の影響を考慮し、今年度に限り、国保加入者全世帯の平等割を2分の1に減額することを決定した」と述べました。昨年度からは、18歳以下の子どもの均等割全額減免を実施し、町民の命と健康を守る施策を進めています。
 松本一彦町長が応対した真鶴町では、「小規模事業者を守る責任は重々受け止めている。コロナ対応の国保制度の認識が十分でなく、早急に担当者から実情を聞く。今後も皆さんの意見を伺いながら、黒岩範子町議(共産)の力も借り、可能な限り対応したい」と前向きな姿勢を見せました。
 昨年度、111件の減免申請があった箱根町は「自治体負担は厳しいが、今年度も対応する」、湯河原町は「町が8割負担し、減免を継続する」と回答しました。
 大和民商婦人部は3月26日、小川さおり部長ら3人が座間市、海老名市、綾瀬市、大和市に要請しました。
 綾瀬市は国保課長が「財源が厳しいが、小規模業者の厳しい経営環境はよく理解できる」と前向きな回答をしたものの、「国の財政支援が2割で今年度の減免実施は財政的に非常に厳しい」(大和市)、「国が全額負担するわけでないので」(座間市)と消極的な自治体も出ています。
 目黒会長は「国保減免や自治体独自の支援施策を受けて『助かった』と喜ぶ仲間の様子を伝えると、自治体の担当者もやりがいを感じる。今後も、業者の実情を訴え、自治体と力を合わせて困難を乗り越えたい。限られた財政で工夫しながら頑張る市町村に負担を押し付けるのでなく、国は全額補助してほしい」と話します。

「22年4月まで」決定 北海道・帯広民商が1市2町に

要請書を手渡す帯広民商の志子田英明会長(中央)ら

 北海道・帯広民商は5月12日、国保のコロナ特例減免を引き続き実施するよう、幕別町に要請しました。
 志子田英明会長や藤田郁子副会長ら5人が参加しました。
 今年度のコロナ特例減免は、国の財政支援が2~8割と自治体によって違いがあり、市町村によっては財政難を理由に実施しないことも予想されることから、改めて要請したもの。
 幕別町では、「22年4月まで特例減免を実施する」と議会で決定したことが報告されました。
 懇談には、日本共産党の中橋友子、酒井はやみ町議が同席しました。
 民商は、帯広市や音更町にも特例減免の実施を要請しました。
 それぞれの国保課から「決定ではないが、財政支援も踏まえ、昨年度と同じ要件で減免できるように前向きに進める」との回答を得ています。

「積み上げ基金の活用を」 埼玉県連など県社保協 県国保医療課と懇談

自治体への働き掛けや財政支援を求めた埼玉県社保協と県の懇談

 埼玉県商工団体連合会(県連)も加盟する埼玉県社会保障推進協議会(社保協)の国保部会は5月11日、県国保医療課と懇談。県連の金澤利行副会長など8団体9人が参加し、①県内の全市町村にコロナ特例減免を積極的に実施するよう働き掛ける②県も自治体に財政支援を行う③国が全額支援するよう粘り強く働き掛ける―の3点を要望しました。
 金澤副会長は「中小業者は、コロナ禍で収入が減って生活が苦しくなり、国保のコロナ特例減免や支援金を受け、何とかしのいでいる状態。コロナ特例減免の申請基準では、20年度と21年度の事業収入比で30%以上減少した世帯とあるが、この20年度の収入は、実働の収入で比較するので、支援金は入れない方向だと思う。一方で、国保料・税の算定は、これらの支援金を所得として計算するため、厚労省が言うように『収入が減っているから国保料・税も低くなる』とは限らない。こんなに、おかしな話はない。国保料・税は下がらない一方で、特例減免を受けられる世帯が激減し、払えない人が増えるだけではないか。県内の市町村の国保基金が3月時点で約195億(前年比32億5千万円増)に積み上がっている。これらを活用し、困っている住民を救う対策を」と要望。県は「昨年度の特例減免は、県内63自治体中62自治体で実施され、1万9千件超、23億円超となった。今年度は国からの財政支援が20%にとどまる自治体が多数を占めると予想される。『未定』はあるものの『実施しない』と回答した自治体は今のところない。今以上の県の財政支援は難しい。市町村へ周知し、国へ財政支援を求めていく」との回答にとどまりました。
 要請行動には、日本共産党の柳下礼子、村岡正嗣、秋山文和、前原かづえ、守屋裕子の県議5人が同席。県からは国保医療課の課長を含め3人が応対しました。
 終了後、「6月末から実施する社保協主催の自治体要請キャラバンで、住民に寄り添った対応を求めていくことが大事」と話し合いました。

国保料・税のコロナ特例減免

 新型コロナの影響で収入が減少した国保加入者の国保料・税、介護保険料、後期高齢者医療保険料を減免する制度。①おおむね30%以上の減収(見込み可、ただし、厚労省は、持続化給付金などの支援金は収入に含めないとしている)②合計所得金額1千万円以下③事業収入等以外の所得合計額が400万円以下―の全てに該当する世帯が対象。国保料・税、後期高齢医療保険料の減免割合は、所得300万円以下100%、400万円以下80%、550万円以下60%、750万円以下40%、1千万円以下20%。介護保険料の減免割合は所得210万円以下100%、210万円超80%。主たる生計維持者が事業等の廃止や失業、新型コロナで死亡・重篤な疾病を負った場合、所得にかかわらず免除されます。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから