全国商工新聞

 新型コロナウイルスの国内の感染者数が45万人に迫り、死者数は8500人を超えました(14日時点)。東アジアの中でも被害が大きくなっています。その原因は「日本政府のコロナ対策が無策だから」と批判するのは、国際ジャーナリストの伊藤千尋さん。人々の命を救うため、減税で負担軽減する世界の国々に学び、「日本でも消費税を減税すべき。まずはマスクや医療用品から消費税をゼロに」と訴えています。

日本の被害拡大は政府の無策のせい

 今、世界で1億人以上が新型コロナウイルスに感染しました。日本でも45万人近くが感染し、亡くなった人も8500人を超えました。東アジアを見ると、台湾は死者数が10人。人口が約1億人もいるベトナムでさえ、死者数が35人。人口が日本の10倍の中国の死者数は日本のほぼ半分です。東アジアの中で日本の被害がとりわけ大きいのは、政府が有効な対策を何もしなかったからです。
 台湾は初めから水際政策を成功させました。2020年1月時点で、中国からの入国者を制限しました。全国一律の休校をせず、各学校に体温計を配り、登校する生徒の体温を測った。学級で感染者が1人出ると学級閉鎖、学校で2人出ると学校閉鎖という基準を設け、保護者も安心して子どもを学校に通わせることができました。飲食店も閉鎖や休業をしていません。台湾は人命と経済を守ることを行った。その両方をやっていないのが日本です。
 ベトナムは、保健所が感染症対策を行いました。ベトナム国内の保健所は約1万1100カ所。日本は469カ所と桁違いに少ない。この30年間でほぼ半分に減らされました。

韓国は人命を優先 戦闘機購入先送り

コスタリカ政府は、社会で最も弱い立場にあるホームレスの人々が手を洗えるよう、街角に水のタンクや給水車を繰り出した=2020年4月、同国在住の原田信也さん提供

 各国は、飲食店などへの休業要請に対し、給付金を支給しました。日本政府はなかなかやろうとせず、実施しても、わずかな金額でした。すぐに給付金を実施した韓国は、アメリカからのF35戦闘機購入(1機約100億円超)を先延ばしにし、そのお金を給付金に充てました。日本でも、アメリカからF35戦闘機を100機余り、計1兆円以上買う計画があります。戦闘機を買うことが今、必要なのか。韓国は人命優先の政策を取ったわけですよ。
 逆に、政府が国民から金を取らないというやり方もあります。中南米の平和憲法の国、コスタリカは国民から水道料金の徴収をやめました。感染を防ぐには手洗いが重要です。水は、ただで手に入るものではない。貧しい人々は水道料金が払えず、手を洗えないから感染しやすい。だったら水道料金を、ただにしようじゃないかと。みんなが手を洗えるようにして、感染拡大を防いだわけです。
 日本は水道料金にも消費税10%がかかっています。「水道料金をただにする」「せめて水道料金から消費税を取らない」―。政府はそんなことをやらないし、考えようともしません。
 コロナ禍で世界の56カ国・地域が消費税(付加価値税)を引き下げました。税率0%の国もありますが、多くの国が一番必要なところ、例えばマスクや消毒液など医療用品を0%にしたり減税しました。イタリアやフィンランドではマスクや医療用品の税率をゼロに、フランスでは5・5%に引き下げました。
 アルゼンチンでは昨年12月、「連帯による特別支援金の給付法」が成立しました。連帯税(富裕税)と呼ばれ、富裕層にお金を出してもらい、国民に分け与えようというものです。日本でも、消費税を引き下げ、少なくともマスクや医療用品はゼロにすべきです。確定申告の控除対象にもすべきです。
 スウェーデンの当時15歳の少女、グレタさんは国会前に一人で座り込み、数年で世界で400万人がデモをする行動に発展しました。今はSNSで一人の呼び掛けが、あっという間に広がります。「気候変動が地球をおかしくし、このままでは、人類が地球に住めなくなるという間違いを取り消せなくなるまで10年もかからない。私はまだ15歳、私の未来を返して」との言葉に、誰もが共感しました。
 秋までに行われる総選挙で政権を代えることが必要ですが、今から国民が声を上げる。「マスクや医療用品の消費税をゼロにしよう」という訴えは、人々の心に届くと思います。

むやみな開発やめ 命と地球を大事に

 コロナ禍は、社会のさまざまな矛盾を突き付けました。その一つは、被害が弱者に集中したことです。アメリカは白人が人口の60%、黒人が13%を占めますが、感染者数では白人が35%と人口比の半分、黒人は25%と約2倍です。黒人は現場での3密仕事が多いから感染しやすい。感染すると、金持ちは病院で治療を受けられますが、貧しい人々は受けられず、亡くなってしまう。貧富の格差が命に直結しています。
 そして新自由主義です。政府は企業を規制せず、やりように任せようというもので1973年、チリでクーデターを起こした軍事政権が採用して以来、中南米で世界に先駆けて新自由主義が広がりました。その中南米がコロナ禍でひどい状況に陥っています。中南米は世界人口の約8%ですが、感染者は世界の約20%、死者は約30%を占めます。なぜこうなったかといえば、貧困と格差の広がりです。新自由主義の実験場となったため、貧しい層がどんどん亡くなっている。それが中南米の現実です。コロナ禍は、世界中を困らせている原点が、新自由主義だと知らしめました。そこを変えねばなりません。
 国連環境計画(UNEP)は、コロナ禍の要因について、森林破壊、気候変動など五つを挙げています。「人間がウイルスを巣から引っ張り出した」とも言われます。コロナ禍が終息しても、自然開発や気候変動につながる動きをやめなければ、同様の問題が繰り返されます。地球は、私たちの大切な家です。大企業の思惑で開発し、資源を奪うことは、私たちの首を絞めることです。そのことをコロナ禍が気付かせてくれた。地球を大事にし、世界の一人一人の命を大切にしよう。私はそのことを強く訴えます。

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