全国商工新聞

 今年の確定申告では基礎控除額が従来の38万円から48万円に引き上げられています。それに併せて、給与所得控除は10万円引き下げられてしまいました。そもそも基礎控除とは何か。引き上げに連動して、給与所得控除が引き下げられていいものなのか。税理士の菅隆徳さんが解説します。

生存権を守るため、大幅な引き上げ必要

 日本の税金の負担の在り方を考えるときに重要な二つのことが、日本国憲法にあります。一つは憲法14条です。「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と述べて、法の下の平等を規定しています。法の下の平等は税金の面でいえば、形式的な平等ではなく、実質的な平等を言っています。つまり、税金はそれぞれの人の能力に応じて平等に負担すべきだと言っているのです。応能負担原則といいます。「能力に応じた負担」は1789年のフランスの人権宣言以来、税金の常識として受け継がれてきた原則です。
 もう一つは憲法25条です。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と述べて、国民の生存権を規定しています。これは税金の面でいえば、国は最低生活費には課税してはならないということを述べているのです。生計費非課税の原則といいます。
 この最低生活費には課税しないということを、具体的に保障しているのが基礎控除なのです。つまり、その人の所得から、基礎控除などの人的控除を差し引いて課税することによって、最低生活費には課税しないということが保障されているのです(所得控除方式)。だから基礎控除額は、その人の最低生活費を意味しています。
 それにしては38万円はあまりに低すぎると感じます。ドイツの憲法裁判所は1992年、生活扶助基準を大幅に下回っていた当時の課税最低限は違憲という判決を出しました。その後ドイツでは、基礎控除額は大幅にアップしました。欧米の基礎控除額は表を参照してください。日本でも現在の生活扶助基準を参考にすれば、基礎控除額は180万円程度まで引き上げるべきです。

 給与所得控除はサラリーマンの必要経費として収入の一定割合の所得控除を認めるものです。必要経費とは勤務のための費用だけではなく、「明日もまた働き続けられる」という労働力維持のための費用だと考えられています。現行水準(年収500万円の場合は144万円)でも足りないくらいです。基礎控除の金額とは連動するものではありません。政府税制調査会はかつて、収入金額の約30%の現行の給与所得控除について、10%程度であるべきだといいました。
 「所得税改革」の中で、今一番狙われているのは、給与所得控除の圧縮・増税です。政府は基礎控除の10万円引き上げを口実に、給与課税のさらなる増税を進めようとしているのです。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから