大阪市が消滅!? 「都」構想に反対を 11月1日住民投票|全国商工新聞

全国商工新聞

 「大阪都」構想の是非を問う、大阪市民を対象にした2回目の住民投票の期日が11月1日に迫っています。5年前の投票で「反対」多数だったにもかかわらず「都」構想にこだわり続ける「大阪維新の会」は相変わらず”「都」構想=二重行政の解消=大阪の成長”というイメージを振りまいています。しかし、実際は”「都」構想=大阪市廃止・分割”であり、財源・権限が府に奪われ、住民サービスが維持できなくなります。「都」構想ノーの声を広げるため、今求められることは―。

財源・権限消える対話広げて中止に
大阪商工団体連合会(大商連)会長 田中武久さん

 130年の歴史を積み重ねてきた大阪市を廃止・分割する「都」構想を通したら、大変なことになります。難しいことを考える必要はありません。シンプルに訴えれば、「おかしい」と気付く人は増えます。
 商店街で対話すると、「生野区が天王寺区になるん? 知らんかった。住所が変わるのは嫌やな」という反応が返ってきます。「各区にある温水プールや公共施設が減らされる」と分かれば、「困るよね」という話に。分割後の4特別区は財源も権限も奪われることを知ると、「市民には何のメリットもないね」となる。一つでもデメリットや矛盾に気付けば、対話が広がります。
 討論会に出た維新の松井一郎市長は、何年も前に試算したデータを元に「二重行政の解消」などと言っています。しかし、新型コロナ感染拡大で社会・経済情勢は激変しました。見込みの税収額やカジノ・巨大開発をめぐる皮算用は、そのままでは通用しなくなりました。
 民商会員の皆さんの力をお借りしながら、「都」構想ノーの審判を下すため、民商・大商連も頑張ります。

「都」構想ってなに?市民の暮らしはどうなるの? 疑問に答えます

 「そもそも『都』構想ってなに?」「市民の暮らしはどーなるの?」「経済が本当に発展するの?」―。大阪市内で青果店を営むアキラさんは、「都」構想にさまざまな疑問を感じています。11月1日の住民投票では、大阪維新の会が「『都』構想が実現すれば二重行政の無駄がなくなり、大阪の経済が発展する」と幻想をバラまいていますが、世論調査(朝日)では7割が「行政の説明が十分でない」と回答。内容や問題点が、市民に正確に伝わっていません。民主商工会(民商)の学習会に参加した居酒屋店主のサクラさんが、アキラさんの疑問に答えてくれました。

「都」構想ってなに? Point1

アキラ サクラさん、久しぶりやな。「都」構想に賛成か、反対かを問う住民投票がまたあるんやろ? 「都」構想って分かるようで、分からんのや。
サクラ あのな、「都」構想というのは大阪市を廃止して淀川区、北区、天王寺区、中央区の四つの「特別区」に分割するんや。「都」構想いうても、都にはならず、府のままやで。
アキラ その「特別区」になったら、どうなるん?
サクラ 市の財源も権限も府に奪われて、「対等」な関係から「従属」の関係になってしまう(図1)。「特別区」になったら歳入8602億円のうち2014億円(23%)が府に入って「特別区」は6588億円(77%)に減るらしいわ(図2)。
アキラ 今の歳入の4分の3になるということやな。


サクラ しかも「特別区」の歳入の53%は府から交付される「財政調整交付金」やねん。その金額は毎年府議会で決めるけど、特別区選出の議員は全体の3割しかいないから、年々減額される可能性が高い。つまり住民サービスが確実に低下するんや。しかもな、「特別区」にするには莫大なコストが発生する。初期費用に241億円、運営費は年56億円かかる。特別区への支援金年20億円(10年限定)を引いても36億円が持ち出しなる(図3)。

狙いはカジノ誘致や大型開発をやりやすくすること。 Point2

アキラ 今よりあかんやん。なんでそんなことするんか?
サクラ 狙いはズバリ府知事の下で、カジノ誘致やベイエリアなどの大型開発に巨額の税金を注ぎ込めるようにすることや。大阪維新の会は「大阪が東京都のようになって経済が発展する」て言うてるけど、全くの幻想。東京の特別区は都に入る税収が豊かだからやっていけてる。その特別区でさえ、「市になりたい」と求めている。
アキラ 隣のケンちゃんが、一度やらせてみたらいいやん。ダメやったら元の大阪市に戻せばいいって言うてたで。
サクラ 大阪市を廃止したら、もう元には戻れん。今の法律に特別区が市になる手続きは定められてないんや。

市民・中小業者の暮らしはどーなる? Point3

アキラ それで、俺たちの暮らしはどーなるんか。
サクラ これまで政令都市として実現してきた独自の市民サービスが削られるわ。子どもの医療費助成、給食費無償化、敬老パス、中小企業支援…(図4)。病院や消防、水道、命と暮らしに直結する大切な施設や動物園、文化施設も府の所有になって特別区は自前で維持・改善がでけへんようになる。

維新「改革」のウソ Point4

その1「大阪の成長を止めるな」

アキラ この間、テレビを見とったら、維新が「大阪の成長を止めるなー」って言うてたで。
サクラ 大阪の経済はもうガタガタや。維新政治の下で大阪府の経済成長率は全国と比較しても落ち込んでる(図5)。中小企業振興予算は07年から10年間で9割もカットして中小企業や小規模事業者を切り捨ててきた(表)。
アキラ 維新はカジノを誘致しようとしてるんやろ?


サクラ 万博(25年)をきっかけにカジノを誘致して、大阪経済を活性化させることを経済戦略の中心にしてる。コロナ禍で世界のカジノは閉鎖や休止に追い込まれ、カジノそのものが成り立たたんようになってるというのに、松井一郎市長はカジノ誘致を積極的に進める姿勢を変えてへん。
アキラ カジノはバクチやろ。ギャンブル依存症が増えるかもしれん。そもそもバクチで経済をよくしようとする発想そのものが間違ってるわ。
サクラ アキラさん、たまには良いこと言うな。

その2「二重行政」の無駄をなくしたら成長できる

アキラ 府と市があるのは無駄なんか?
サクラ 維新が二重行政の無駄と統廃合したのが病院、公衆衛生研究所、保証協会…。どれも市民生活や中小業者の営業にとって大事なもんばっかりや。
維新が二重行政の象徴として、よう持ち出す「旧WTC(ワールドトレードセンター)ビル」と「りんくうゲートタワービル」は、府も市も巨大開発にのめり込んで失敗したもの。政策の誤りで「二重行政」が原因ではない。

「反対」意見を排除する維新の会

アキラ 「都」構想に反対か賛成か、迷っとる人も多いやろうな。
サクラ 多くの市民は賛成、反対の意見、メリット・デメリットの両方を見て判断したいと思ってるはずや。それなのに、大阪市が作成した資料はメリット一色。住民説明会でも反対意見を排除して都合の悪いことは隠そうとしてる。市民の税金を使って、市民の知る権利を侵害するなんて、民主主義を踏みにじる行為や。

お粗末なコロナ対策

アキラ 俺は「都」構想より、コロナ禍の方が心配や。吉村洋文知事は「うがい薬で治ります」てアホなことを言うてたけど。
サクラ そうや、コロナ対策の方が重要や。府内の陽性者や死者の割合は、圧倒的に大阪市が多いのに、テレビに出てくるのは吉村知事ばっかりで市は動いてない。自分たちで二重行政を批判してきたから、市は対策が打てない。「都」構想はコロナ対策にも深刻な影響を与えているわ。

「都」構想・カジノをやめたら大阪は良くなる! Point5

アキラ どうしたら大阪の経済が発展するんか。
サクラ 財源はある。「都」構想を止めたら801億円。カジノ誘致を中止したら990億円。財政調整基金も1500億円ある。大阪商エ団体連合会(大商連)は三つの対案を出してる。①コロナ・自然災害に負けない大阪②インバウンド頼みから内需拡大③福祉・教育サービスの充実を―。
アキラ サクラさん、よう分かった。大阪市がなくなったら大変や。内容を知らせて住民投票で「都」構想は「反対」に投票する人を増やさんといかんな。俺、頑張る。
サクラ そうや、アキラさんの出番や。期待してるで。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから