「核のごみ」候補地選定が進行 透明な議論と責任持った説明を|全国商工新聞

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 原発から出る「核のごみ」(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場をめぐり、北海道神恵内村と寿都町が、国の選定プロセスに応じることを正式に表明しました。
 両首長とも“調査に応じるだけ”と述べていますが、文献調査に最大20億円、その後、莫大な交付金もあり、一度応じればやめるのは容易ではありません。
 選定プロセスの第一段階(文献調査)は約2年、概要調査・精密調査に約18年、処分場立地が決まっても、操業は、その10年後の長期にわたります。「核のごみ」は約20秒で致死量に達する放射線を出すとされ、無害化するには数万年の間、地下深く閉じ込めておく必要があります。地震や火山活動が多発する日本で安全に管理できるのか懸念は消えません。
 寿都町が調査の応募を検討していることを受け、隣接する小樽地区の漁協組合長会は、「福島原発事故の後、風評被害を受けた漁業者にとって、処分場誘致は到底受け入れられない」と寿都町長に抗議文を手渡しました。
 北海道議会も2日、「核のごみは受け入れがたい」とする条例に基づき、寿都町や神恵内村、国に、透明性の高い議論を求める決議を全会一致で可決しました。寿都町では、調査応募の是非を問う住民投票条例制定をめざす運動が始まっています。
 今、「核のごみ」処分をめぐる問題が起きているのは、各地の原発や青森県六ケ所村の再処理工場に1万8千トン以上の使用済み核燃料が保管され、貯蔵の限界に近づきつつあるからです。原発再稼働を進めたい政府と電力会社にとって、「核のごみ」への対応は避けて通れない問題になっています。政府は、最終処分のあり方について国民に責任ある説明を行い、不安や疑問に答えていく真摯な姿勢こそ求められています。
 全商連は原発をなくし、再生可能エネルギーの活用を広げ、「原発ゼロ基本法」を制定し、使用済み核燃料を再処理して再稼働する「核燃料サイクル」の根絶を掲げてきました。
 福島原発事故による広範な未曾有の被害を踏まえれば、交付金などで自治体の弱みに付け込み、原発立地や処分場の誘導を強引に進めるやり方は中止すべきです。

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