全国商工新聞

自由法曹団 前幹事長・弁護士 加藤 健次さん

 小池東京都知事は、都内の接待を伴う飲食店で新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることを受け、警視庁に感染防止対策の徹底のために協力を要請した。この要請を受け、警視庁は、7月24日、風俗営業法(風営法)に基づく立ち入りと称して各店舗への立ち入りを開始した。
 風営法は、「警察職員は、この法律の施行に必要な限度において」立ち入ることができると規定しているが(37条2項)、感染拡大防止は明らかに風営法の範囲外である。
 風営法は、保護法益や要件があいまいであることから、警察の権限乱用による営業の自由の侵害が懸念されてきた。実際に、不当な逮捕・捜索などが起こっている。そのため、警察の立ち入りは、目的達成のため必要最小限とすべきことが強調されてきた。2018年1月30日の警察庁生活安全局長通達は、この趣旨を確認した上で、「保健衛生上の見地からの調理場の検査を行うこと等は、認められない」としている。この点からも、今回の警察の立ち入りは法の限界を超えたものというほかない。
 風営法違反に対しては、営業停止等の行政処分と刑事処分が定められている。警察が店舗に立ち入ることは、実質的には強力な制裁を背景にして、感染防止対策を強制することにならざるを得ない。また、警察は、感染拡大防止に関する専門知識や技術を有しているわけではないから、実際の効果にも大いに疑問がある。
 東京都は、従業員のPCR検査の実施や感染拡大防止策の徹底を行わないまま、接待を伴う飲食店への営業自粛要請を全面解除した。このことが、その後の感染拡大の原因となっていることは否定できない。いま、東京都と政府がなすべきことは、この経過をしっかり検証し、検査の拡充と感染防止対策の徹底への協力を真摯に求めること、そのために保健所などの公衆衛生部門の拡充を図ることである。
 警察の力を借りた対策は、筋違いであって、真の感染拡大防止策とはなり得ない。

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