省エネ住宅の時代に向けて(上)断熱効果を試算してみる|全国商工新聞

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1級建築士 NARUTA建築事務所 主宰 
愛知・知多中央民商 成田完二さん

省エネ性能を計算

 今回は図の建物を例に、省エネ性能を計算してみましょう。外皮面積を算定します。屋根は天井断熱で50㎡、外壁は180㎡、開口部が15%の27㎡あるとして、差し引き153㎡、1階の床50㎡の合計が外皮面積=280㎡となります。
 仕様は、外壁はサイディング通気工法、断熱材は外壁、天井ともグラスウール(16K)100ミリ厚、床は根太内にポリスチレン40ミリ、アルミサッシはペアガラス(12ミリ以内)です。
 これで計算すると、建物の熱損失は262W/K(建物から逃げる熱量)となり、外皮面積で割ると外皮平均熱貫流率(UA値)=0.94です。これでは温暖な地域の基準UA値0.87以内をクリアしません。
 Q値(熱損失係数=値が小さいほど断熱性能が高い)は熱損失を床面積で割ります。床面積100㎡ですので、Q=262/100=2.62ですが、換気による熱損失を加えます。換気量を建築基準法の0.5回/時間で計算すると、0.4あまり下がるので、この家のQ値は3.0くらいになります。
 しかし、グラスウール等の断熱材は、密閉しないと十分な効果が出ません。この仕様では、グラスウールの外はすぐ外気ですので、半分くらいの断熱性能になると考えれば、Q値は4.0前後になるでしょう。

断熱性能を上げる

 断熱を強化しUA値を0.5にすれば、この家の熱損失は0.5×280㎡=140W/Kとなり、Q値は140/100㎡+0.4=1.8に下がります。換気設備を熱交換型にすれば、熱損失を半分くらいにできますので、0.2程度に抑えられ、1.6となります。3.0から、約半分になりました。
 Q値が下がるということは、冷暖房効率が上がることを意味します。単純ではありませんが、月2万円かかる冷暖房費が、Q値が半分になったことで、月1万円になるということです。

サッシは熱損失大

 屋根や壁の断熱性能を上げることは大事ですが、注目すべきはサッシです。この建物では熱損失の約半分の125W/Kが開口部から出ていく熱です。外皮面積の10%に過ぎない窓から半分逃げていくのです。
 ペアガラス入りアルミサッシの熱貫流率(U値)は4.65W/(㎡・K)、ドイツ製の三重ガラス入り樹脂製サッシはU値1.0以下です。同じ面積で、逃げていくエネルギーを5分の1程度に抑えられます。
 もう一つ大事なのが、断熱材の選択と施工方法です。断熱材にはそれぞれ特徴や性質があります。値段で選ぶのではなく、使い方に合った断熱材を選び、正しい施工をしましょう。
 断熱材は密閉しないと効果が十分出ません。空気を密閉すれば断熱効果はありますが、それだけでは対流が起きたり、赤外線が通ったりして熱が伝わってしまいます。対流防止だけならグラスウールで良いのですが、赤外線の遮断にはガラス繊維は期待薄です。光を通さない断熱材に軍配が上がります。

仲間と勉強しよう

 先進ドイツのまねをすれば良いわけではありません。ドイツには暑い夏がなく、郷土・風土に合った断熱、省エネ建築に取り組まない限り良いものにはなりません。仲間同士、勉強や実践を通してノウハウを積み、大企業に負けない地域密着の良質な建築をめざすことが、最善の方法です。

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