全国商工新聞

 安倍政権は12月21日、「2019年度税制改正大綱」を閣議決定しました。消費税10%引き上げは「確実に実施する」と明記する一方で、売り上げ減少を懸念するメーカーや業界に配慮し、住宅や自動車購入時の減税措置を拡充。研究開発費減税の拡大などを盛り込んで大企業をさらに優遇しようとしています。全国商工団体連合会(全商連)は共同を広げ、消費税10%中止の運動を進めています。

全商連 増税中止へ運動

 「大綱」は、消費税増税の影響を抑えるとして住宅購入者への税制上の支援と自動車税の減税を盛り込みました。住宅ローンの控除期間を現行10年から13年に延長。11年目以降の3年間は税率2%引き上げ分の負担に控除額の上限を設けるなどです。減税される住宅や自動車は、10月以降の購入に限られており、すでに住宅や自動車を購入した人や、購入しない人には全く無関係です。

一部業界だけバラマキ減税

 こうした減税策は、消費税増税後の消費の落ち込みを抑えたいとする大企業や業界から強い要望を受けたもの。政治資金収支報告書(2017年)によると、日本自動車工業会は自民党の政治資金団体に最多の8040万円、不動産協会も4000万円を献金。減税策はその見返りともいえるものです。消費の落ち込みを心配するのであれば、財界いいなりのバラマキ減税をやめ、増税そのものをやめるべきです。
 消費税10%への引き上げによる負担増は4・6兆円。1世帯当たり年8万円に上り、赤ちゃんからお年寄りまで国民一人当たり年3万6000円の負担増がのしかかります。消費税が8%に増税されてから1世帯(2人以上)当たりの実質消費支出は年25万円も減少し、労働者全体(パートを含む)の実質賃金は18万円も減っています。こうした下で消費税を10%に増税すればどうなるか-。内閣官房参与を務めた藤井聡・京都大学教授は「日本経済は壊滅的な大打撃を受けることになる」と警鐘を鳴らしています。
 政府は低所得者に配慮し、食料品などを8%に据え置く軽減税率制度を実施するとしています。軽減分は1兆円といいますが、国民1人当たり月額660円程度に過ぎません。
 また、軽減税率実施による税収の減り分を、インボイス(適格請求書)制度実施に伴う免税事業者への新たな負担増(増収を2000億円と試算)や社会保障費の抑制などに求める構え。免税事業者に取引排除による廃業か、課税業者になって消費税負担するかを迫るものであり、不安が広がっています。

富裕層優遇も手をつけずに

 一方、アベノミクスによって株で大もうけをしている富裕層の優遇税制は手つかずのまま。株でもうけた金融所得は他の所得と分離して計算ができ、税率は一律20%。そのため所得が1億円を超えると所得税の負担率が低下する不公平が拡大。25%にする案もありましたが、政府は株価への影響を気にして改正を見送りました。

個人事業主の事業承継税制

 中小企業の分野では、個人事業主の事業承継税制を創設し、10年間に限って承継にかかる贈与税・相続税を100%納税猶予します。贈与税・相続税が負担できず廃業せざるを得ないケースも少なくなく、納税猶予を求める声が広がっていました。また、頻発する大規模自然災害への対策として中小企業防災・減災投資促進税制が創設されました。
 一方、「大綱」は大企業優遇の研究開発税制を拡大。共同研究や委託研究費用は全企業を対象に控除の上限を5%から10%に引き上げ、一定の要件を満たしたベンチャーは40%に引き上げます。
 仮想通貨やインターネット取引で無申告の利用者の情報を、インターネットの仲介業者や仮想通貨の交換業者に照会できるようにすることも明記。「悪質な税逃れを防ぐ」ことを目的としますが、事業者の対象拡大など、なし崩しになる恐れもあります。

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