消費税廃止し、不公平税制正せ

トヨタ自動車に7千億円余りなど、輸出大企業に毎年、巨額の還付金をもたらす「消費税の輸出還付金制度」。その仕組みやカラクリを、元静岡大学教授の湖東京至税理士に解説していただきました。
大企業優遇の補助金に
元静岡大学教授・税理士 湖東京至さんが推算
なぜ、輸出大企業は巨額の還付金をもらえるのでしょうか。
政府は「輸出取引に日本の消費税は課税できない」と言いますが、この説明は正しくありません。輸出販売は「消費税が課税されない(=非課税)」のではなく、正しくは「ゼロ%の税率が課税」されているのです。「非課税」と「税率ゼロ%」は一見すると、どちらも「売り上げにかかる税金がゼロになる」という点で同じように思えますが、両者は全く違います。
消費税の納税額は、売り上げにかかる消費税額から仕入れや原材料、外注費、店の家賃、水道光熱費などで支払った消費税額を差し引いて計算されます。これを「仕入税額控除方式」と言います。
輸出販売に「ゼロ税率」が適用されると、売り上げのうち輸出した分にかかる消費税額は「売上高×ゼロ%=ゼロ円」となりますが、仕入れや経費にかかった消費税は通常通り、仕入税額控除の対象となります。その結果、納税額がマイナスとなり、仕入れなどに含まれていた消費税分がそっくり国から戻ってくる(還付される)仕組みになっているのです。
根源はフランス
輸出還付金の元凶とも言うべき仕入税額控除方式は1948年にフランスで導入されました。当時のフランスには、製品の出荷価格に10%課税する「製造業者売上税」がありましたが、製造者側は「原材料や部品ですでに同税が支払われており、税金に税金がかかる『二重課税』になっている」と主張しました。フランス政府がこの主張を受け入れ、他社が支払った税額を自社の納税額から控除する仕組み(=仕入税額控除)を導入したのです。それと同時に、輸出に対するゼロ税率と還付の仕組みも作られました。
当初、控除の対象となるのは、直接原価である仕入れに含まれる税額のみでしたが、54年の付加価値税導入に伴い、設備投資や経費にまで対象が拡大されました。
私はこの歴史を踏まえ、還付金制度や、仕入税額控除という不公平な仕組みを生み出した「諸悪の根源」はフランスにあると考えています。
負担がないのに
ところで、輸出大企業は仕入れや外注費を支払う際に、本当に消費税を負担しているのでしょうか。
経済取引における価格決定権は、立場の強い大企業側にあります。「下請け」企業など、弱い立場にある側は、消費税分の値引き(=元の価格の引き下げ)を求められれば応じざるを得ません。仮に、請求書に消費税額が記載されていても、実質的には消費税を支払っていないケースは存在するのです。
消費税は、価格への転嫁が取引上の力関係で決まる極めて不透明な税金です。輸出大企業は、実質的に支払っていない消費税を還付金として受け取っている、と言ってもいいでしょう。
これは、税制という枠組みで輸出補助金を出しているのと同じです。もし、還付を行うのであれば、実際に消費税を負担している「下請け」企業にも返還するべきですが、輸出をしていない事業者は還付を受けられない仕組みになっています。
例えば、消費者がトヨタの車を購入する時は、10%の消費税を支払っています。当然ながら、トヨタは国内販売分の消費税を納める義務があります。しかし、同社の輸出販売の占める割合は約78%にもなるため、輸出による還付金が、国内分の納税額を大幅に上回ります。結果として、トヨタは国内販売分の納税額を差し引いてなお、巨額の還付金がもらえる仕組みなのです。
赤字の税務署も
トヨタをはじめとする輸出大企業や国税庁は、還付金が幾らになるか公表していません。そこで私は、公表された決算資料を基に、各社の25年度の還付額を推計しました(図1)。推計ですので、実際の数字とは一致しませんが、ほぼ正しいと確信しています。
図2に示したのは、国税局が公表している税務署ごとの消費税の赤字額です。トヨタ本社を管轄する愛知・豊田税務署は、消費税収よりも還付金額が6464億円も上回る「赤字」になるなど、管内に輸出大企業を抱える税務署は軒並み赤字になっています。豊田税務署の赤字額は、管内の中小事業者約1万1千社が納税した645億円を差し引いた後の数字です。トヨタの還付金は、総額から算出して、約6753億円と推計できます。
これは、私が昨年試算した24年4月~25年3月期のトヨタへの還付金額6811億円とほぼ一致しています。
巨額還付なくせ
一方で、病院や診療所の社会保険診療報酬や、アパートの家賃などは消費税が「非課税」と規定されています。これらは非課税であるため、患者や入居者から消費税を受け取ることはできません。しかも、ゼロ税率が適用される輸出企業とは異なり、仕入税額控除による「還付」を受けることもできません。そのため、病院などは診療材料や設備などに含まれる消費税を全て自己負担せざるを得ず、実質的に一般消費者と同じ立場に置かれています。
このように、同じ「消費税がかからない取引」でありながら、還付がある輸出販売と、還付がない非課税制度との間には不公平があるのです。医師会などが「社会保険診療報酬への『ゼロ税率』適用」を求めていることも理解できます。しかし私は、輸出大企業に巨額の還付を与える不公平をなくすため、輸出販売も「還付のない非課税」にすべきと考えます。
一方で、多くの中小事業者は、赤字でも払わなければならない消費税の納税に苦しんでいます。そのため消費税の滞納は、国の税金では常に第1位です。日本経団連は消費税率をヨーロッパ並みの20%台へ引き上げるよう要望しています。彼らが税率引き上げを求めるのは、還付金の額がさらに増加するため、痛くも、かゆくもないからです。
輸出還付金がある消費税は、あってはならない最悪の不公平税制です。



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