自転車に「青切符」導入から1カ月 中小業者から疑問、不安も|全国商工新聞

全国商工新聞

 ながらスマホや信号無視、イヤホンの使用などの自転車の交通違反に対する「青切符」制度が4月1日に始まってから1カ月余り。「朝日」(4月19日付)の世論調査では、導入が「よかった」67%、「良くなかった」27%、「毎日」(同21日付)では、「妥当だ」62%、「厳しすぎる」20%と、いずれも肯定が否定を大きく上回りました。一方で、事業に自転車や自動車を利用する中小業者からは「自転車に乗るのが不安」「規制の内容が複雑で分かりにくい」などの声が上がっています。各地の民主商工会(民商)会員から寄せられた疑問などを踏まえて、自転車を安全に利用するための啓発や環境づくりに活動している「ぼちぼち自転車くらぶ」の、やまがなおこさん(自転車活用推進研究会会員)に解説してもらいました。

暮らし、生業に混乱 「自転車に乗るのをやめた」「狭い道では追い越せない」 民商、支部の会議で話題に

 自転車の交通違反の「青切符」制度が始まって1カ月余り。暮らしや生業に自転車を利用する各地の民商会員から不安や疑問の声が上がっています。
 東京・板橋民商の前野、上とき、中若の3支部は、4月11日に合同支部会議を開催。参加者同士が交流を深め、日頃の関心事について懇談しました。
 話題の一つとなったのが、自転車への「青切符」制度導入でした。参加者から「内容が複雑で分かりづらい」「自転車に乗るのが不安になった」などの声が相次ぎ、「学習する機会を設けよう」との声も上がりました。
 支部会議に参加した上原隆司さん=自動車板金=は、「今回の『青切符』制度が不安で、今年初めから自転車に乗っていません。”歩道は駄目”とか言われると不安です。多くの人が交通ルールをよく知らないのではないでしょうか。青切符導入や自動車のルールを変えるより先に、自転車も、車も安全に走れるように道路環境を整備してほしい」と話しました。
 石川・小松民商の役員会でも、自転車の「青切符」制度が話題に。
 その中心は、「青切符」制度導入と同時に施行された改正道路交通法(道交法)の「自動車等が自転車等の右側を通行する場合の通行方法」です。中でも、自動車と自転車の間の「十分な間隔」について、警察庁がその目安として「少なくとも1メートル程度間隔を空けることが安全」としていることについて意見が集中しました。
 会議に出席した役員からは「狭い道路では十分な距離が取れず、自転車を追い越せない。これでは仕事にならない」などの悲鳴に似た声も上がりました。
 民商理事の小藤太朗さん=林業=は「自転車が、通行量の多い車道を走るのは危ないのでは。人口が少ない地域では、自転車も歩道を走るのが安全だと思う。画一的なルールを全国一律で押し付けることに疑問を感じる」と話しています。

誰もが安心できる道路環境求め
ぼちぼち自転車くらぶ やまがなおこさんが解説

自転車のルール以前と変わらず

「自転車はクルマの仲間」と語る、やまがさん

 「青切符」制度導入から1カ月余り、この間に分かってきたことなど踏まえ、お話しします。
 まず、自転車の交通ルールそのものは、これまでと変わっていません。「自転車安全利用5則」といわれる自転車の交通ルール(①自転車は車道が原則、左側通行。歩道は例外、歩行者優先②交差点では信号と一時停止を守って安全確認③夜間ライト点灯④飲酒運転禁止⑤ヘルメット着用)をあらためて確認しましょう。
 「青切符」制度で変わったのは、自転車で危険な運転をして、警察による取り締まりを受けた後の対応です。具体的には、携帯電話使用(=ながらスマホ)▽遮断踏み切り立ち入り▽右側通行(車道の逆走)、信号無視▽イヤホンをしたままの運転、傘差し運転▽並走や2人乗り―など、重大な交通事故につながる交通違反で検挙された場合、従来は出頭・取り調べ、起訴されれば裁判などの手続きがありましたが、「青切符」交付で反則金納付により手続きが終了するようになりました(図)。

事故につながる違反には反則金

 制度導入前は、「歩道を走ると、罰金」などの情報もありましたが、これは正しくありません。たとえば神奈川県では制度開始から2週間で警告件数が3181件で、青切符の交付件数は19件。同様に佐賀県では警告件数が59件、青切符の交付件数が16件でした。兵庫県では青切符の交付件数は47件、福島県では21日までの3週間で同9件でした。いずれも、青切符を交付された主な違反は、携帯電話のながら使用、一時不停止や信号無視などです。
 一方、「青切符」をかたる詐欺が各地で発生しています。警察官がその場で反則金を受け取ったり振り込みや電子マネーでの支払いを求めたりすることはありません。不審なときは110番通報をしてください。
 さて、原則から確認すると、自転車は、道路交通法では軽車両にあたり、クルマの仲間です。そのため、「車道が原則」となっていますが、13歳未満または70歳以上の人、体に障害のある人、またそれ以外でも安全のためにやむを得ない場合は、歩道を通行することができるとされています。これをわたしは「歩道を通ってもいい、でも走ってはダメ」と捉えています。歩道は歩行者優先で速度を抑え、歩行者を脅かすような走り抜けなどはしてはいけないということです。
 自転車の関係する交通事故にはライフステージにより特徴があります。「自転車の交通安全教育ガイドライン」によると、中・高生は春から6月にかけて事故が急増、死亡・重症事故、歩行者との事故も多い。成人では、子ども乗せ自転車での転倒と飲酒運転事故が、高齢者では単独の路外逸脱や転倒の事故が多いとありました。
 商品の配達や仕入れなどで、事業者が自転車を利用する機会もあると思います。自らの体力や経験を過信せず、暗くなったら必ず点灯(あるいは運転を控える)、信号のない交差点でも周囲に注意を払う、車道と歩道の段差に気をつけるなど、自分も他人も傷つくことのないように心掛けましょう。なお、「自転車はクルマの仲間」ですから、事故に備え保険に入り(罰則はありませんが多くの自治体で義務化されています)、車検と同様、定期的な整備・点検が必要です。

自動車側ルール変更に困惑の声

 4月1日からは自動車側のルールも変更されました。自転車などの右側を走行する時に「十分な間隔を空ける」とのルールに、「これでは仕事にならない」との声が上がっています。幅の狭い道路などでは、自動車が自転車を追い越しにくい事態が生じるかもしれません。
 「自転車は車道が原則」とはいえ、残念ながら今の日本の道路は、自転車もクルマも、そして歩行者も安心して通ることができません。事故を減らすには、自転車専用通行帯の整備や生活道での速度規制、駐車の在り方の見直し、無電柱化など、道路環境を変えていく必要があります。大いに声を上げていきましょう。

自転車の交通違反の「青切符」制度

 16歳以上の自転車運転者の交通違反に3千円~1万2千円の反則金を課す交通反則通告制度のこと。自転車による交通事故につながる危険な運転行為や、警察官の指導警告に従わずに違反行為を継続した場合などの悪質・危険な行為が取り締まりの対象となるのは従来と変わりませんが、検挙後の迅速な違反処理と責任追及の実効性向上を目的に「青切符」が交付されることになりました。違反者には警察官から、反則行為となる事実などが記載された「青切符」と、反則金の納付時に銀行や郵便局の窓口に持参する「納付書」が交付されます。

自動車等が自転車等の右側を通行する場合の通行方法

 4月1日に一部が施行となった「改正道路交通法」に盛り込まれたもの。”自動車等が自転車等の右側を通行する場合(追い越す場合を除く)において、両者の間に『十分な間隔』がないとき、自動車等は、自転車等との『間隔に応じた安全な速度』で進行▽自転車等は、できる限り道路の左側端に寄って通行―しなければならない”としています。警察庁は、その目安として「少なくとも1メートル程度間隔を空けることが安全」「自転車等と1メートル程度の間隔を確保できない場合には、時速20~30キロ程度で運転しましょう」としています。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから