2025 年上期営業動向調査 物価高の影響深刻 長期化が利益を圧迫|全国商工新聞

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 「物価高騰の長期化が利益を圧迫」―。全商連付属・中小商工業研究所は先ごろ、2025年上期(3月)営業動向調査の結果を公表しました。
 今期(25年上期)の主要DI値は、全体(全回答者計)で、総合経営判断DI値(▲51.7)、売上DI値(▲38.6)、利益DI値(▲50.7)の全てが悪化。単価・マージンDI値(8.6)は緩やかな上昇傾向が続いているものの、原材料・商品の仕入値DI値(85.6)が6期連続(3年)で80台と高止まりし、「経営上困っていること」のうち「経費の増大」(35.6%)が過去最も高い回答割合でした。中小商工業者は単価・マージンの確保に努めているものの、長期化する物価高騰が経営に大きな影響を与え、利益の減少を余儀なくされています。
 従業者規模別(従業者5人以下と6人以上)で見た場合、5人以下の売上DI値(前期=24年下期、以下同じ▲39.5→今期▲40.9)、利益DI値(前期▲50.0→今期▲51.9)は水面下の深い位置で推移しています。単価・マージンDI値は若干、上昇したものの(前期4.0→今期6.2)、原材料・商品の仕入値DI値(図1)は高止まりしています(前期88.2→今期84.6)。6人以上の売上DI値(前期▲6.5→今期▲25.8)、利益DI値(前期▲20.4→今期▲43.8)は大きく落ち込みました。単価・マージンDI値は下降し(前期29.0→今期22.2)、原材料・商品の仕入値DI値は15年上期の統計開始後初めて90台を超えました(前期88.3→今期91.1)。
 今期に最も講じられた経営対策は「経費節減」(40.3%)です(図2)。次いで「販売価格(単価)引き上げ」(34.0%)、「営業活動の強化」(13.3%)、「得意先・親企業との交渉」(10.5%)、「サービス強化」(10.4%)が続きました。物価高騰の中、「経費節減」と「販売価格(単価)引き上げ」を中心に、多角的な経営対策が取られています。
 ひとこと欄には、「材料費が上がったのに、単価の引き上げがついていっていない」(職別工事業)や「仕入原価が高くなり、現状での価格では利益が出なくなっている」(飲食業)といった切実な声をはじめ、燃料費や光熱費の高騰、人手不足、賃上げに苦慮している実態がつづられています。
 政府・自治体は、物価高騰や賃上げに対処するための直接支援制度の創設や価格転嫁対策の推進、消費税の減税など、中小商工業者の営業と暮らしを守る施策を緊急に講じる必要があります。

〈調査期間〉2025年2月14日~3月18日
〈有効回答〉616人(調査対象モニター人数:47都道府県1046人、有効回答率58.9%)
〈回収方法〉郵送記入
〈業種構成〉建設業(建築設計含む)29.3%、食料・繊維・木製品・印刷関連製造業8.7%、金属製品・機械器具製造業14.4%、流通・商業20.0%、宿泊・飲食業8.2%、サービス業19.3%
〈事業形態〉個人58.7%、法人41.3%
〈事業規模(事業主本人を含む全従業者数)〉1人21.8%、2~3人42.2%、4~5人15.4%、6~9人11.0%、10人以上9.6%

DI値

 ディフュージョン・インデックスの略語。企業の景況感などを「良い」「悪い」といった定性的な指標で数値化したもの。「良い」と回答した企業割合(%)から「悪い」と回答した企業割合(%)を差し引いた値。

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