全国で「経費否認調査」相次ぐ 「申告納税制度」否定許すな 全商連 事例持ち寄り対策会議|全国商工新聞

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「経費否認調査」について話し合った対策会議

 税務調査時に、個人事業者が事業に必要な支出として計上した経費を、税務署が一方的に否認する調査が各地で相次いでいます。納税者が自主的に申告し、納めるべき税額は納税者の申告で確定する申告納税制度に反する重大問題です。全国商工団体連合会(全商連)は4月16日、税務署による「経費否認調査」への対策についてオンライン併用で話し合いました。
 岩手県内の事例について一関民商の山口伸事務局長が、広島西、沖縄の各税務署管内で発生した「経費否認調査」による更正処分について、広島民商の石立大助、沖縄民商の山川睦両事務局長が報告。浦野広明、佐伯和雅両税理士、全商連事務局員らと意見を交わしました。

1.広島民商が相談に応じたケース
 税務調査の際に、調査対象者が提出した経費一覧メモに記載はあるが①領収証等がない②重複と思われる③支出目的等の確認が必要―などに区分して一覧にした「経費一覧表」を税務署が示し、説明を求められた。
 「回答書」に記載し、税務署に提出したが、「個別の支払いについては具体的に何ら記載されておらず経費算入すべき金額か否かが確認できなかった」(「更正通知書」)として、該当する経費を所得計算上、否認(3年分)し、消費税の仕入税額控除を否認する(2021年分のみ一部、仕入税額控除を認める)更正処分が行われた。

2.沖縄民商が相談に応じたケース
 税務署が「接待交際費領収書等の集計表」に①領収書、レシート②商品等(商品名)③接待の相手④左記の連絡先⑤目的、使途、事業所との関連⑥左記事実が確認できるもの―を「記入して提出しなければ、経費と認めない場合がある」と、調査対象者に経費の説明を強要した(その後、更正処分)。
 同様の事例として、プロ野球の選手が、飲食費や自主トレ時の費用が否認され、多額の追徴を受けたケースが報告されました。
 石立さんは「経費を否認した税務署の主張は『納税者が提示したものから経費性のないもの、税務署が経費として認められないもの、納税者が経費として立証していないものを除外した』というものだ。こんなことは認められない。現在は再調査を求めている。当事者も最後までたたかうと言っている」と報告。山川さんは「税務署が求めてきた経費の確認欄を本人が書いて提出したが、その後、2年分の消費税(仕入税額控除否認)と4年分の所得税の更正決定が4月10日に送られてきた」と語りました。
 浦野広明税理士は「各地の民商に相談が寄せられているのは、氷山の一角だ。調査で苦しめられている納税者の権利意識を高め、更正処分を打たせないようにたたかっていく必要がある」と提起。佐伯税理士は「税務署は“納税者側から争ってこないだろう”と、高をくくって、やっているのではないか。『法律的におかしい』と徹底的にたたかうことが大事だ」と述べました。
 全商連の中山眞常任理事は「納税者が、事業に必要な支出として計上した経費を否認する場合、その立証責任は税務署側にある。申告納税制度を否定する違法な調査は許されない」と指摘。「自主記帳・自主計算・自主申告運動を強化するとともに、個別の事案ごとに対策を検討し、たたかいを強めよう」と呼び掛けました。

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