「自宅と店舗の両方が被災し、営業再開のメドが立たない」「予約のキャンセルが相次ぎ、融資の返済が心配」―。7月28日に発生した熊本地震から3週間余り。最大震度7を記録した宇城市や氷川町を中心に、家屋や店舗の全・半壊、設備や器具の破損、長時間にわたる停電や断水など、民主商工会(民商)会員にも多くの被害が出ました。7月31日には隣県の鹿児島と宮崎の両県商工団体連合会(県連)が、飲料水と食料品などの物資を宇城、八代の両民商に届けました。全国商工団体連合会(全商連)は、熊本県連に義援金を届け、全国的な支援を呼び掛けています。
仲間の不安に寄り添い
宇城民商 会員訪問で励ます
熊本県では、2016年の「熊本地震」、25年の「8月豪雨」と、大規模な自然災害が相次ぎました。今回の地震で被害を受けた地域は、それらの被災地域とも重なります。1、2日の両日、多くの会員が被災した宇城民商で取材しました。
見通しが立たず
一時的に避難所に身を寄せていたHさん=自動車板金=は「避難所では、プライバシーがなかった。避難所運営に過去の災害の経験が生かされていないのではないか」と憤ります。
タマネギなどを生産しているMさんは「10年前の地震で自宅が半壊したため、改修工事をした。今回の地震で、外見上は大きな被害はないが、内部は壁が崩れたり、柱にヒビが入ったりして、とても住める状態ではない。建て替えが必要になるかも…」。生活再建に向けた不安を口にしました。
Rさん=レストラン=は「営業終了後、店内の掃除をしていた時に大きな揺れが来た。揺れが収まって店の外に避難したら、山から土煙が上がり、山肌がかすんで見えた。建物に損傷はないが、食器などが割れてしまったため、営業再開のメドが立たない」と話します。
被災した会員の多くは「余震が怖いため、車中泊をしている」「水も、電気も来ていない。あちこちで渋滞が発生し、給水所まで行くのが大変」などと混乱が続く状況を話しました。「屋根の補修をしたいが、ブルーシートがない」「ガソリンスタンドは長蛇の列で、給油に2時間以上かかった」「食料を調達したいが、営業している店がない」など、物資が不足する様を口々に訴えました。
10年前の震災で大きな被害を受け、国のグループ補助金を使って中華料理店を再建したAさんは「幸い、建物に大きな被害はなかったが、食器や冷蔵庫が倒れてしまった。予約のキャンセルが相次いでいる。毎月の返済もあり、この先が心配」と述べ「営業を再開するためにも、国や県の支援が必要」と強調しました。
婦人部長で、全商連婦人部協議会幹事の緒方香里さん=飲食=は、ボトルやグラスが散乱した店内を片付けながら「自宅は物が散乱したまま。今は、後片付けの人手が欲しい」と訴えました。営業再開については「断水が解消しなければ、店を開けられない。グラスや食器も割れてしまったので、再開まで、どのくらいかかるか…」と憂いていました。
会長先頭に奮闘

民商の坂本英治会長=飲食=は自身の店舗も被災し、営業再開のメドが立たない中、1日夜、民商事務所で緊急理事会を開催。支援物資を届けながら会員訪問し、被害実態をつかむことを確認しました。
坂本会長は「鹿児島と宮崎の両県連から届いた物資を見て『民商は本当にいいところだ』と改めて実感した。今は水や食料などを求める人が多いが、この先は支払いや資金繰りの相談が増えると思う。会員の要求に応えるため全力で頑張る」。連日の猛暑の中、会員訪問の先頭に立っています。
「困った時は助け合いが大事」 炊き出し750人分を提供
Kさん=飲食店

飲食店を営む宇城民商のKさんは「被災した人たちの助けになれば」と、炊き出しを提供しました。
チャーハンやおにぎり、唐揚げ750人分を準備していると、入り口の張り紙を見た近所の住人らが開始時刻の午前11時半前から、行列を作りました。Kさんは「被災した人にしっかり食べてもらおうと、朝5時半から家族や従業員が総出で準備した。困った時はお互いに助け合うことが大事」と話していました。
全国からの支援に感謝 熊本県連が実態把握と救援に全力
緊急役員会開き対策本部を設置
熊本県連は1日、緊急三役会をウェブも使って開催し、山本寛幸会長=不動産=を本部長に対策本部を設置。会員の被害状況の把握を急ぐとともに、大きな被害が生じた宇城、八代の両民商への支援を検討しました。
4日には、緊急の常任理事会を開き、被災した会員の安否確認と併せて、当面の要求を集めるため、被害実態アンケートの実施を決定。比較的被害の少なかった民商からの支援体制についても確認しました。
山本会長は「被災地のニーズは、時間がたつにつれて変化する。電気はほぼ復旧し、物流も少しずつ改善されてきたが、断水が続く地域もある。車中泊を含め避難生活を余儀なくされている人も多い。営業再開に必要な設備の修理や、備品の調達も困難な状況が続いている。必要な支援が受けられるよう自治体に働き掛けたい」と述べ「全国からの支援に心から感謝すると同時に、引き続き支援をお願いしたい」と訴えています。


「水がない」に駆け付け 鹿児島県連 旧知の仲間を思い

鹿児島県連は7月31日、被害の大きな八代、宇城の両民商に飲料水などの支援物資を届けました。
地震の翌29日、熊本県連の山本寛幸会長から、鹿児島・姶良国分民商会長(元全商連常任理事)で旧知の間柄のSさん=ガラスサッシ=宛てに「飲料水がないので、支援をお願いしたい」との電話要請がありました。Sさんから連絡を受けた県連の山内太志郎事務局長は、県連の松山忠樹会長と県連共済会の東福憲郎理事長に直ちに連絡し、要請に応えることを確認。10リットル入り飲料水400箱とトラック2台を確保し、県連共済会の西秀文副理事長を加えた4人で現地に向かう体制を整えました。
午前6時半から積み込み作業を行い、同9時半に出発。途中、宮崎県連の浅井憲久会長らと合流し、6人で熊本をめざしました。
八代市内に入ると、道路の陥没や橋の崩落が相次ぎ、通常2時間ほどの道のりが5時間以上かかりました。倒壊した家屋や店舗などが数多く見られ、被害の大きさを目の当たりにしました。それぞれの民商で、出迎えてくれた役員や事務局員らが総出で荷下ろし作業を行い、物資を無事届けられました。
鹿児島県連は、全商連災害対策本部に義援金を送金。県内の全10民商にも義援金送付を呼び掛け、熊本の仲間を支援することにしています。
生活と生業の再建を 全商連各省庁に要請

全商連はこの間、厚労省と環境省、金融庁、経産省・中小企業庁、総務省などに、熊本地震の被災事業者の生活と生業の再建に向けて一刻も早い復旧を求める要請を行いました。
厚労省には7月31日、被災事業者らの社会保険料の納期限の延長措置と、親身な納付相談などを要請しました。
経産省・中企庁、金融庁、総務省、環境省には6日、被災事業者の生業再建を後押しする直接支援、とりわけ1事業者で申請できる「なりわい再建支援補助金」の実施(経産・中企)▽被災事業者の資金繰り支援(金融)▽地方税の申告期限の延長や国保税の徴収猶予・減免(総務)▽事業用の災害廃棄物の迅速かつ無償での処理の促進(環境)―を求めました。
厚労省は「被災者の国民年金保険料納付を免除するよう関係自治体に通知した。厚生年金についても事業主からの申し出があれば、納付を当面猶予する」と回答。中企庁は「グループ補助金など、熊本県を通じてさまざまな支援を検討する」と答えました。
金融庁は「被災事業者に対する資金繰り支援の徹底を金融機関に要請した」と回答。総務省は「地方税法や条例に基づいて、災害を理由とした減免に対応するよう自治体に通知を発出した」と答えました。環境省は「営業と生活が一体の中小事業者が災害廃棄物を家庭用廃棄物と一体的に処理する場合は、国の補助対象となることを自治体へ周知した」と述べました。
要請には、大門実紀史参院議員(共産)が同席しました。

03-3987-4391







