
「あてのない旅」を楽しんで
兵庫・須磨民商 ジャズシンガー 荒畑 佐千子さん
5月23~24日、神戸市で開かれる全国商工団体連合会(全商連)第57回定期総会。初日の全体会が終わった後の歓迎行事に出演し、歌声を披露するのは、兵庫・須磨民主商工会(民商)のジャズシンガー、荒畑佐千子さんです。声楽に裏打ちされた明るくパワフルな歌声は関西ジャズシーンを担う一人と定評があります。
横並びで歩く感覚
4月26日、阪急大阪梅田駅の東側に位置する繁華街・茶屋町のライブハウス「アズールテラス」に、荒畑さんの姿がありました。ビル5階にある会場は、室内席40席、テラス席10席。プロミュージシャンの生演奏を聴きながら、ビストロ料理と大阪梅田の夜景を楽しめます。
満員の聴衆を前に、自身が作詞作曲したオリジナルソング「レイニー・マンデー」を歌い始めると、会場の外は急に雨模様に。聞こえる雨音は、時に、ピアノの音に合わせてシトシト。トランペットの音とともに強く。「Memories fall on the rainy day(思い出が雨の日に降り注ぐ)…」と歌い終わると、雨は上がり、雨音が万雷の拍手と入れ替わりました。
演奏するメンバーは、その日、その場所によって変化します。同日のライブでは、トランペット・寺崎周平、ピアノ・喜屋武弥、ベース・西尾寛之、ドラム&パーカッション・塚原憲一、ボーカル・荒畑佐千子(いずれも敬称略)の5人。荒畑さんが「みんながリーダーになったり、サポーターになったり、お互いの音をよく聞きながら、横並びで歩いてる感じ。私には最高」と語るメンバーがそろいました。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、米国南部のニューオーリンズで生まれたジャズ。即興性と自由な表現が魅力といわれ、ルイ・アームストロングの「What a Wonderful World」やマイルス・デイビスの「So What」などが有名です。
「ジャズは、めっちゃ楽しい。自由やしね。一緒に演っていると、メンバーの人となりも、考えていることも分かる」。ライブでは、荒畑さんの歌声に時に寄り添うように、時に反発するように、トランペットやベース、ピアノが追いかけます。「詳しい譜面はないんです。その日のリーダーが、演奏する曲の中でメロディーとかテーマを示して『今日は“これで話そう”』と呼び掛け、曲が演じられていくのがジャズ」。ステージ上では演奏を通じて「私はこうしたいけど、どう?」「ほな、こうやな」「こんなん、どうや」と、まるで漫才のようなやり取りがメンバー間で交わされていると言います。「思いっきり“すべり倒す”こともあるんやけどね(笑)」
ピアノの喜屋武さんが言います。「リーダーにも、いろんなタイプがあって、テーマだけ示して、自分の意見は何も言わず、後は『お任せ』の人も。荒畑さんの良いところは、『私はこう思う!』とハッキリ伝えてくるところかな」
大きくうなずくベースの西尾さんとパーカッションの塚原さんに、荒畑さんは「私は、もっともっと参加したいんやけどなあ」と笑いました。

生徒150人ほど教え
もともとミュージカル俳優志望でした。専門学校でダンスや演劇、声楽を学ぶ中で「がっつり踊り過ぎて、腰の骨にヒビが入り、踊れなくなった」。そんな時に出会ったのがジャズでした。
「当時、綾戸智恵さんがジャズシンガーとして40歳でプロデビューされた。1オクターブしか声が出ないので、すごい格好良かった。こんな世界があるんかって」。改めて発声から学び、専門学校卒業後にフリーランスのジャズシンガーとして活動し始めました。現在はライブ活動のほか、ボーカル講師としてカルチャースクールなどで生徒150人ほどに教えています。
この日の客席には大勢の生徒の姿も。宮本雅夫さんは長年、自宅で個人レッスンを受けています。「荒畑先生は、丁寧に教えてくれます。スタンダードナンバーの『スターダスト』や『オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート』が私の十八番になりました」。終演後、荒畑さんは宮本さんとがっちり握手。「宮本さんは、すごくジャズについて詳しい。私も、いっぱい教えてもらいました」と話していました。
その日の場所、時間、聴衆、メンバー構成などで、曲目も、演奏の仕方も、アレンジも、全て異なるのがジャズ。この自由さがジャズライブの魅力の一つです。
この日のライブでは、聴衆の入りや年齢、使用する楽器に合わせて、直前の打ち合わせで曲目を決めました。「リンゴ追分」や「蘇州夜曲」など日本語の曲も取り入れ、この2曲では、小鼓の囃子と「いよー」「ほっ」という掛け声が加わりました。
「ジャズは『あてのない旅』なんです。どこでも、いつでも、最高の演奏を追求しています。演奏を聞いた皆さんに『めっちゃ楽しかった』と感じてもらって、笑顔で帰ってもらいたいやん」。そのために毎回のライブの選曲を考えます。


全商連総会で歓迎
民商には、カルチャースクールでの仕事が多くなり、税額が増えて困っていた時、すでに会員だったドラムの塚原さんに誘われて入会しました。「塚原さんはジャズの師匠だし、民商の先輩」と話す荒畑さん。最後に、メッセージを寄せてくれました。
「全商連総会の歓迎行事でも、全国から来る皆さんに、めっちゃ楽しんでもらいたい。楽しみにして、神戸に来てください」
荒畑 佐千子さん
自由学園女子最高学部を卒業後、ミュージカルスクール「STAGE21」卒業。ジャズシンガー、ボイストレーナー。大畑あき子、大森浩子、滝川千春の各氏に師事し、現在は有名なホテルやライブハウス、NHK神戸などのテレビやラジオに出演。関西を代表するジャズシンガーの一人。今、はまっているのは、おいしい“お酒のアテ”探し。

03-3987-4391







