外国人経営者が「経営・管理ビザ」の厳格化で国外退去の危機|全国商工新聞

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「真面目に働いているのに…」

 「毎年、税金も、社会保険料も払っているのに、日本政府はなぜ『経営・管理ビザ』を厳しくするの?」「私たち外国人経営者を追い出そうとしているのか?」―。日本で真面目に事業を営む在留外国人から悲鳴と怨嗟の声が上がっています。出入国在留管理庁(入管)が昨年10月16日、日本で事業を営む在留外国人向けの、いわゆる「経営・管理ビザ」の許可基準を厳格化したからです。問題に直面する在留外国人の民主商工会(民商)会員2人が実態を告発。「経営・管理ビザ厳格化反対」のオンライン署名に取り組むフリーライターの思いを紹介します。

税も社保も払ってきた

 北関東でサービス業を営むパキスタン出身の男性Uさんは開口一番、「入管のことで頭が痛い。何とかしてほしい」と、せきを切ったように話し出しました。昨年11月にビザを更新した時、入管の職員から「今後、『経営・管理ビザ』が厳しくなる」と言われました。
 「1年ビザだから毎年毎年、更新してきました。そのたびに、入管が求める条件に合うように、全て応えてきた。それなのにまだ、なぜ厳しい?これ以上、どうしろと言うの?私、自分で自分を殺すしかないのか」と嘆きます。
 ビザの更新のたびに必要な手数料をはじめ、会社の法人税や市・県民税、社会保険料など、2010年代に会社を立ち上げて以降、滞納もせず支払ってきました。
 会社を立ち上げた時から、自宅と別の場所に事務所を借り、入管から「扶養人数が多いのではないか」と言われれば、子ども全員を扶養から外しました。
 日本語をすらすらと話し、日常生活には全く困りません。「私、全部マルでしょ。どこも悪くない」
 「永住者の資格を得たいけど、入管は3年ビザすら認めてくれない。今度は『経営・管理ビザ』を厳しくする。私、会社やっていけない。どこかで働くしかないですか。私がこれまでやってきた経験や人脈、全て無駄ですか」と語気を強め、「今から店を始める人に厳しくするならまだ分かる。10年以上もちゃんとやってきたのに、なぜ…」と、つぶやきました。
 「真面目に働いてる私たちを、日本は、なぜ認めてくれない。今まで日本人は本当に優しいと思っていたけど、去年から”ちょっと違うな”と、思い始めている」

建設業を営む弟が心配

 東京都内で飲食業を営む中国出身の女性Kさんは、自身は「日本人の配偶者」としての在留資格を持っています。建設業を営む40代の弟Sさん家族(中国出身の妻と子)のことが心配で夜も眠れません。
 「弟の娘は4月から小学1年生。6日が入学式です。『わたし、ちゃんと1年生になれるかな』って、ずっとワクワクしていた。そんな子に『日本にいられなくなるかも…』と、どうして言えますか」
 Sさんは、来日して10年余り。自身の会社で、親戚の建設会社の下請けとして仕事をしてきました。
 姉のKさんは「『経営・管理ビザ』がもらえないと、仕事ができなくなる。日本にもいられなくなる。どうしたらいい?」と話します。
 Kさんは、最近、中国のSNS「微博」で在留資格に関する専門家が「98%の人が『経営・管理』ビザを取れなくなる」と発信しているのを見ました。
 「だから、弟の家族が心配で心配で…。何とかなりますか。何とかしてほしい」と身を乗り出すように話しました。
 「一部の外国人が日本人に迷惑をかけているのは事実だし、それを嫌だと思う日本人の気持ちもよく分かる。だけど、それは全ての外国人ではない。多くの外国人が真面目に日本で働き、暮らしている。入管のやり方は、外国人に対する差別。それはいけないでしょ」
 諭すように話しました。

「経営・管理ビザ」の許可基準の厳格化

 日本で起業する外国人が取得する在留資格「経営・管理」を、資本金などを500万円から3千万円に引き上げ▽住居と別の事務所の確保▽日本人常勤職員の雇用が必要▽日本語能力試験N2以上(日常的な場面での日本語の理解に加え、新聞や雑誌の解説など幅広い話題の日本語を理解できる)―などと厳格化しました。国内で事業を営む外国人経営者が要件に合致していないとみなされれば、在留資格を失い、国外退去を迫られる恐れがあります。

外国人排除は地域に打撃
ライター 鶴ヶ島たろうさん
「推しエスニックを守りたい」署名開始

 「これは不当な外国人差別であるだけでなく、日本社会にも大きな悪影響がある問題です。絶対やめさせたい」―。こう語るのは、ライターの鶴ヶ島たろうさん。オンライン署名「#推しエスニックといつまでも」の呼び掛け人です。50人ほどのメンバーで、チラシ配布や宣伝、SNSでの発信を行っています。
 問題を知ったのは、1月でした。埼玉県鶴ケ島市でカレー店を営む知人の外国人から「このままでは日本にいられなくなる。日本で生まれ育った高校生の子どももいるのに、家族を連れて帰らなくてはいけなくなるかも」と打ち明けられたのが、きっかけでした。
 「その人は、日本で30年暮らし、18年間、何の問題もなく営業してきました。その人が、ルール変更で日本から追い出されるなんて、不当な”外国人追い出し”政策だと感じました」
 「あなたの町のカレー屋、3年以内に消えるかもしれません」―。そんな打ち出しで、2月14日にオンライン署名活動をスタート。13日現在、1万6千人超の賛同が寄せられています。賛同者からは「闇雲に小規模事業者を潰すだけの愚策としか思えない。即時撤回を望みます」「日本で大変な思いをしながらも一生懸命働き、念願の店を持った外国人の友人がいます。彼らはここで生きて働いています。こんな理不尽かつ無駄なことをして彼らを苦しめることに大反対です」などのコメントが寄せられています。
 「私自身、カフェ経営をしていた経験もあるので、街のお店が地域社会を支えていると実感をしています。『経営・管理ビザの厳格化』で外国人を追い出すのは、日本経済にとってもマイナスです」。署名では、資本金額ではなく、事業実態に基づく審査基準への転換▽経過措置期限の延長―などを要求しています。
 問題そのものが、まだまだ知られていないのが現状です。鶴ヶ島さんは「世論を喚起するために、5月に国会内集会も計画しています」と語りました。

鶴ヶ島さんが呼び掛けている署名のチラシ

 >> #推しエスニックといつまでも 署名

「経営・管理ビザ」厳格化の問題 
東京・杉並民商会長 山田恭永さん(行政書士)に聞く

“官製ヘイト”そのもの入管行政の根本是正を

 在留資格「経営・管理」(「経営・管理」ビザ)の許可基準の厳格化の問題について、外国人経営者の相談に応じている行政書士の山田恭永さん(東京・杉並民主商工会〈民商〉会長)に聞きました。

資本金3千万円に日本人雇用も必要

 ―在留資格「経営・管理」の許可基準の厳格化とは何ですか。

 山田 入管(出入国在留管理庁)は昨年10月16日、日本で事業を営む外国人向けの在留資格「経営・管理」の許可基準(上陸基準)の省令を変更しました。私たちが「社長ビザ」と呼んでいるものです。この変更(厳格化)は、昨年8月にパブリックコメントを実施し、同年10月10日に変更を発表。その6日後の16日から実施という、それ自体が異常なものでした。
 大きな変更点(下の図)は①資本金・出資総額の500万円から3千万円への引き上げ②常勤職員(対象は日本人など)の雇用③日本語能力試験N2以上などの日本語能力―などです。ただ、厳格化された10月16日以降の入管のホームページでは、「申請に関する取扱い」の項目として、「経営者としての活動実態」「自宅兼事業所の不可」「労働保険や社会保険の適用状況、国税、地方税の納税状況」などが挙げられており、
 「厳格化」以前は余り厳しく追及されなかったものの、「厳格化」以降、これらの項目が既に厳しくチェックされ始めています。

 ―「緩和措置」が「3年間ある」と言われていますが。

 山田 入管はホームページに掲載している「『経営・管理』の許可基準の改正等について」という文書の中で「既に『経営・管理』等で在留中の方からの在留期間更新許可申請等」について「施行日から3年を経過する日(2028年10月16日)までの間に在留期間更新許可申請を行う場合については、改正後の許可基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の許可基準に適合する見込み等を踏まえ、許否判断を行う」としています。資本金3千万円などの要件については、28年10月16日から適用されるように読めるのですが、これにも注意が必要です。昨年10月16日以降、既に社会保険料の納付状況や、事業所と自宅の住所が同じかどうかなどが厳しくチェックされ、「経営・管理」が不許可になる事例も出てきています。この3年の間に在留資格の更新がある人が「今回は大丈夫、問題は28年10月16日以降」と考えていると危険です。

付け入る隙与えず人権問題と捉えて

 ―昨年10月16日以降、厳格化の影響はありますか。

 山田 既に大きな影響が出始めています。私のクライアントには①家族でインド料理店を経営しており、妻が「経営・管理」ビザを更新したら、入管から「社会保険に入っていないから」と不許可に②雑貨商を営む4人家族が「経営・管理」ビザを更新しようとしたら、事務所全体の見取り図を求められ、2階が家族のスペース、1階が店舗で入り口も別々だったものの、炊事スペースが1階にあったため不許可に―などの事例がありました。いずれも対策を講じ、許可されたものの、深刻な事態に陥りかねませんでした。

 ―どういった対策が必要でしょうか。

 山田 「経営・管理」ビザの厳格化は、外国人による「ペーパーカンパニー」対策を口実に、自民党が主導して進められてきたものです。しかし、そもそも国会の答弁書で、入管自体がペーパーカンパニーの数について「統計を作成していない」というほど、その根拠は薄いものです。資本金の3千万円への引き上げの影響は特に大きく、多くの外国人経営者が廃業を余儀なくされるでしょう。「経営・管理ビザ」の厳格化自体、ここ数年来の外国人排斥の風潮の強まりに迎合した”官製ヘイト”といえるものです。
 しかし、今回の「厳格化」に対して”策を弄して何とか基準をクリアする”というやり方では、逆に入管に付け入る隙を与え、さらに規制が厳しくなる事態も招きかねません。
 この問題が官製ヘイトであるという本質や、外国人の人権に関わる問題として大きく捉え、厳格化を撤回させることや、入管行政そのものを正していくことなど、根本的な対策が求められています。

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