「平和でこそ商売繁盛」響かせ 高市政権の大軍拡阻止を|全国商工新聞

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 84年前の12月8日、日本は米英に奇襲攻撃をかけ、中国での侵略戦争をアジア・太平洋地域に拡大。日本国民310万人以上、アジア諸国民2千万人以上の犠牲を生み、遺族らは悲しみと怒りを胸に刻んでいます。中小業者も、企業整備令(1942年5月)などで解体が強行され、71万人以上が戦争遂行のために重点産業へ動員されました。「平和でこそ商売繁盛」は、その教訓から生まれた信条です。こうした歴史を顧みず“台湾有事”で自衛隊の参戦を示唆したり、国是の非核三原則を見直す方針の高市早苗首相の下、各地の県商工団体連合会(県連)や民主商工会(民商)は、DVD「戦後・被爆80年の証言」を視聴し、平和を守る大切さを話し合い、長射程ミサイル配備反対などの運動に立ち上がっています。

長射程ミサイル許すな
熊本県連ら「県民の会」集会 健軍商店街に1200人結集

熊本・健軍商店街のアーケード街を埋め尽くし、長射程ミサイルの配備中止を求めた1200人の集会参加者
熊本県内の民商会員らは横断幕を作製して参加

 「ストップ!長射程ミサイル」集会が11月9日、熊本市の健軍商店街アーケードで開かれ、1200人が結集しました。主催は熊本県連も参加する「STOP!長射程ミサイル・県民の会」。民商会員も法被姿で駆け付けました。
 熊本民商の松尾正会長=建築板金=は「子や孫の未来のため、妻と一緒に反対している。手製のステッカーを持ち、駐屯地まで行進したが、大勢の参加者で驚いた」。
 宇城民商の坂本英治会長=居酒屋=は「地元の民意を無視してはいけない。この運動を全国に広げよう」。同民商青年部の緒方亮太さん=バー=は「熊本や各地を戦場にさせない。平和の尊さを実感した」。同婦人部の坂本ちはるさん=居酒屋=は「予想以上の参加者に驚いた。平和を願う思いが一つになり、大きな集会になったと思う」。
 天草民商の井上昭一常任理事=自動車整備=は「1200人は、すごい。国ばかり見て、県民をないがしろにする、県や熊本市を動かさなければ」。

「自衛隊の町」で

 集会では、会の山下雅彦代表(元東海大教授)が主催者あいさつ。熊本日日新聞のアンケートで、住民の6割近くがミサイル配備を「容認しない」と答え、住民説明会を求める声が高まっているのに、木原稔官房長官(熊本1区選出)は「予定はない」と切り捨てたと指摘。「長射程ミサイル配備が中止されるまで行動し続ける。武力で平和は築けない。憲法9条を守る願いを広げよう」と訴えました。
 リレートークで、PTA会長や弁護士、中学生、元教師、主婦ら14人が発言。県郡商店街振興組合の役員は、「健軍という町は自衛隊と共に歩んできた。長射程ミサイルがすぐ近くの駐屯地に配備されると聞いて、不安だ。何としても説明会開催を」と訴えました。
 集会後、700メートル先の駐屯地正門まで行進。自衛隊に要請書を渡しました。

地元住民が声を

 健軍駐屯地には、沖縄など南西諸島をカバーする陸上自衛隊西部方面隊の中枢、西部方面総監部があります。中でも、地対艦誘導弾連隊は、中国などとのミサイル戦が起きれば、その第一線部隊になります。
 駐屯地の周辺2キロには、住宅、マンションの他、市民病院や保育園、学校などが多数あります。住宅密集地に、こうした第一線部隊が配置され、不安の声が上がっています。今年度中に355億円をかけて大規模地下シェルターの工事着工が予定され、27年度中までに「覆土式火薬庫」2棟を新設する設計業務を計画との情報もあります。
 地元住民が「黙っていてはいけない」と呼び掛けた集会に、大勢の人が掛け付け、地域は騒然となりましたが、運動は始まったばかり。「平和でこそ商売繁盛」を掲げる民商が、実践を全国に広げる時です。

「戦後・被爆80年の証言」DVD活用

愛媛・新居浜民商 「戦争は人を変える」 平和へ決意語り

第4回理事会でDVDを視聴する新居浜民商の役員ら

 愛媛・新居浜民商は先ごろ、第4回理事会で8人がDVDを視聴。感想を出し合う中で、声を詰まらせるシーンもありました。
 明星秀幸さん=不動産=は「長崎市で仕事をしていた頃、職場の被爆2世の先輩が、交際中の女性と結婚できるか、未来はどうなるか…と苦しんでいたことを思い出した。涙で言葉にならないが、戦争は絶対にしてはいけない」。
 神野孝久さん=外壁工事=は「戦争は、人の心まで変えてしまう。差別も生まれる。いいことは一つもないのに、世界では今も戦争をしている。その原因も知りたい」。
 橋本和也さん=塗装=は「平和が当たり前と思っていたので、今まで平和について考えたことがなかった。政治に腹が立ってきた。日本は唯一、平和なことが良いところなのに、戦争をしてしまうと、良いところが無くなる」。
 高橋秀雄さん=不動産=は「日本は“戦争をしない、平和だ”と思い込んでいる。戦争をしなくても、巻き込まれるかもしれないので、世界中で戦争をしてはいけない。戦争の語り部が減る中で、どう学習していくかが課題」。
 全員が平和を求めていく決意を語り「声を上げていこう」と確認しました。

大分民商 「子や孫に伝えたい」 延べ68人が視聴

共済会の「平和を学ぶ柿狩りツアー」のバス車内でDVDを視聴する大分民商の参加者

 大分民商は、26人が参加した共済会の「平和を学ぶ柿狩りツアー」のバス車内や、7支部と1班で、延べ68人がDVDを視聴。「被爆2世で、つらい経験を多くした頃を思い出した」と初めて告白する人も。DVDに出演した竜田志津香さん=自動車販売整備=は「いろいろな活動を通じて子や孫らに、平和の大切さを伝えたい」と述べました。バスツアーでは、福岡県の「筑前町立太刀洗平和記念館」で、この地で起きた空襲の悲惨さや、多くの若者が特攻隊で飛び立った過去を学びました。県内でも、陸上自衛隊の大分分屯地への敷戸大型弾薬庫の建設計画や、同じく湯布院駐屯地への地対艦ミサイル部隊を配備など“戦争の準備”が迫っていることを確認。“平和の準備”を広げようと話し合っています。

静岡・小笠掛川民商 加害行為に衝撃

食い入るように画面を見る小笠掛川民商の会員ら

 静岡・小笠掛川民商の原野谷支部寺島班は11月5日、毎月の定例班会で5人がDVDを視聴。普段は、にぎやかですが、この日は終始、パソコンの画面に集中していました。
 日本軍が中国に侵略し、捕虜や市民を背後から銃撃したり、首をはねるシーンに衝撃を受けた佐次本郁よさん=緑茶栽培=は「戦争は『普通の人』を『殺人者』にしてしまう。軍事優先の高市政権の危険な方向が分かった」と話していました。

山口・吉南民商共済会 「平和こそ」痛感

DVDを視聴後、感想を出し合った吉南民商共済会

 山口・吉南民商共済会は先ごろ、第54回定期総会の後、13人でDVDを視聴。日本軍兵士が一人ずつ儀式として、中国軍の捕虜の首を日本刀ではねる場面などの加害行為に、思わず目をふさぎたくなる場面もありました。安田正夫さん=内装=は「これが戦争だ。『平和でこそ商売繁盛』を痛感した」と話していました。

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