民商会員の町工場を見学 東京都町田市の「資本論研究グループ」 蒲田民商 厳しい実態も伝えて|全国商工新聞

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「資本論研究グループ」に自分の商売について説明する蒲田民商の二木和雄会長(左)
蒲田民商の事務所を訪れた「資本論研究グループ」のメンバーら

 「『資本論研究グループ』のメンバーが、東京・大田区の町工場の会員の実態を知りたいので、見学させてほしい」―。東京・蒲田民主商工会(民商)に先ごろ、町田民商の岡田忞副会長=元中小企業診断士=から、こんな連絡が入りました。10月9日、町工場の見学に訪れたのは同メンバーの12人。同グループは、桜美林大学の前畑雪彦教授を講師に約10年間、カール・マルクスの著書『資本論』の研究をしており、30~80代の有志25人が参加しています。メンバーの一人、岡田副会長がフィールドワークの一環として、蒲田民商の町工場を訪問することを提案し、実現しました。
 蒲田民商では、石倉真喜夫事務局長が応対。2019年に、大田区内の蒲田、大田、雪谷の3民商が実施した製造業を営む会員への緊急調査結果を参加者に配り、大田区内の町工場の歴史と特徴を説明。「かつてナショナルテクノポリスと言われた町工場が崩壊の危機にあり、技術の継承も途絶えてしまう」と、行政に働き掛けていることを報告しました。
 参加者からは「事業主の給料が、こんなに少ないとは信じられない」「労働時間が平均8時間で『仕事量が少ないと推計される』とは、どういう意味?」などの質問が次々に出されました。石倉事務局長は「業者が希望している単価は現状の2倍だが、親会社の言い値でやらないと、仕事は来ない。低単価なので、長時間働かざるを得ないが、この調査時は仕事が無く、労働時間が8時間にとどまった」と話すと、「業者の厳しい実態がよく理解できた」「大企業の膨大な内部留保を、下請け単価と賃金の引き上げに向かわせることが大事だ」との意見が出されました。
 続いて一行は、二木和雄会長の「㈲二木製作所」と池田克憲副会長の「池田工業所」を見学。二木会長は、工場内の旋盤や板金、溶接などの機械や、周りの同業者との仕事のやり取りなどを説明しました。消費税やインボイス(適格請求書)が、いかに中小業者の営業の妨げになっているかも詳しく話し、「消費税減税やインボイス廃止のために、民商は頑張っています」と訴えました。
 池田副会長は「40年前に、前年比75%増と急成長を遂げていた半導体の部品加工を勧められ、借金をして850万円のNC旋盤を購入した。しかし、徐々に単価を引き下げられ、大田区から地方、地方から海外へと仕事が移っていき、売り上げが激減した。13年間、印刷工場の夜勤アルバイトをしながら働いたが、多重債務に。自己破産も考えたが、元会員の紹介で仕事が生まれ、助けられた。搾取の実態や”自由な時間”の大切さが身に染みています。低単価では、演劇や音楽会にも行けません」と、町工場の厳しさを話しました。
 見学を終えた一行は、JR蒲田駅東口の会員の店で懇親会。「今まで知らなかった町工場の実態に驚いた」などと感想を交流しました。

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