万博工事の下請け代金未払い問題 業者救済と公正取引の確立急務|全国商工新聞

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 10月13日の閉幕まで約1カ月に迫った大阪・関西万博で、海外パビリオンの建設工事における下請け代金の未払いが発覚しています。158の国と地域が万博に参加しており、こうした「下請けいじめ」を放置するのであれば、国の内外で日本の信頼は地に落ちます。
 全商連がSNSなどで呼び掛けた「万博工事代金未払い110番」には、11社からアンケートへの回答が寄せられました。アメリカやドイツ、インド、中国など8カ国のパビリオン工事で未払いが告発され、被害は4億3500万円を超えました。廃業の危機に直面する被害業者と共に、政府や東京都などへの要請を重ねたことで「民・民で解決すればいいと思わない」(内閣府)との回答が得られ、当事者の個別要請を参考にした建設業許可の調査を実施させました。問題解決には道半ばですが、被害業者からは「大きな前進」と感謝されています。
 工事代金の未払い根絶へ建設業法が明記する公正取引の条項を最大限生かす対応が求められます。建設業法24条で最上位元請けに対し、現場で汗を流して作業する下請け業者まで、代金が支払われているかを監督する責任を明記しています。同41条で許可事業者に国土交通大臣や都道府県知事が営業停止命令と共に、遅延賃金相当額や損害を遡及して立て替えさせる権限を与えています。
 万博を国家プロジェクトとして推進した日本政府の責任も重大です。万博を準備・運営するための特別措置法は本部長を内閣総理大臣と定めています。博覧会協会の必要経費についても国が財政的な補助ができることになっており、せめて被害業者の切迫する資金繰りや納税緩和での支援を直ちに行うべきです。
 軟弱地盤の夢洲での開催に固執したため、工事の遅れを取り戻す追加・変更が相次いだことが、工事代金未払いの温床となりました。それにもかかわらず、「見て見ぬふり」をしてきた万博協会や大阪府の責任も見逃せません。吉村洋文大阪府知事(維新の会代表)が、なりふり構わず施工業者を募集した経過もあります。行政の「責任逃れ」を許さず、建設下請け業者の苦労が報われる問題解決と公正取引の確立へ力を合わせましょう。

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