介護保険の危機 国庫負担を引き上げ立て直しを|全国商工新聞

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 創設25年を迎えた介護保険が危機にひんしています。東京商工リサーチの調査で、今年6月までの上半期に訪問介護事業者の倒産が45件と、2年連続で過去最多となりました。従業員10人以上の事業所での倒産も増え、「自力での経営改善は限界」と分析されています。
 昨年末までの半年間に訪問介護から撤退した事業者は529件に上ります。「しんぶん赤旗」で事業所ゼロ自治体が107町村、同じく残り一つが272市町村とスクープされ、衝撃が広がりました。
 自公政権が昨年4月に、訪問介護の基本報酬を2~3%引き下げたことが基盤崩壊の引き金でした。全国ホームヘルパー協議会や日本ホームヘルパー協会による「誇りを傷つけられた」との激しい抗議を無視して実施され、6割が減収となりました。
 基本報酬の引き下げ撤回(約50億円)と再改定は介護関係者の一致した要求です。意見書も16道県を含む292自治体に広がりました。「在宅介護の要」である訪問介護の崩壊を食い止めるため、生活援助を正当に評価して公的支援を増やし、地域循環型経済へと結実させるべきです。
 介護保険に関わって職員の処遇改善も待ったなしです。介護従事者は昨年、前年比で2.8万人も減少。政府は26年度までに22年度比で約25万人の増員が必要としましたが、全くの逆行です。職員不足の主な要因は低賃金と劣悪な労働環境です。自公政権は処遇改善分で介護報酬をわずかにプラス改定しましたが、物価高騰にも追い付かず、全産業平均との賃金格差は23年の月6.9万円から24年は月8.3万円と拡大しました。
 特養ホームや老健施設などの事業者団体の声を受け止め十分な賃上げへの介護報酬の臨時改定が求められます。自公両党が政権復帰時の12年総選挙の公約に掲げた通りに、介護保険制度への国庫負担を現行25%から35%に引き上げ、その財源は大企業や富裕層への応分の負担で生み出すべきです。
 自公政権が利用料2割負担の拡大やケアプラン有料化、要介護1・2の生活援助の保険給付外しを企んでいることも許せません。介護保険の立て直しと社会保障拡充へ、政治の流れを変える世論と運動を広げましょう。

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