民商の粘り強い自治体要請で
「市の一律5万円の支援金はありがたい」「十年来の自治体要請が実り、商店版リニューアル助成制度が創設された!」―。各地の民主商工会(民商)が長年続けてきた自治体要請や懇談を通じて、中小業者を直接支援する制度の創設や改善につながっています。コロナ禍に続く、長引く物価高騰に苦しむ中小業者の実態を伝え、成果を勝ち取っています。
愛知県江南市 一律5万円を支給 尾北民商 簡易な制度で22人が申請


「景気が悪い中、市の支援金5万円はありがたい」
「申請が思ったより簡単で安心した」―。愛知・尾北民商は5月26日、担当自治体の一つ、江南市の「中小企業等エネルギー価格高騰対策支援金」の申請書作成会を開催し、対象となる会員22人が参加しました。
確定申告書控えや預金通帳、運転免許証など必要書類を持参した参加者は、申込用紙に「屋号」「氏名」「住所」など必要事項を記入。書類を完成させると、市役所へ移動し、商工観光課の窓口に提出しました。
参加者は「申請書を書くのに1時間くらいかかるかと心配していたけど、思ったより、ずっと簡単で安心した」「本当に景気が悪いから、少額でも支援金はありがたい」などと、話していました。
多くの業者へと
同支援金は、市内に居住または事業所を置き、市税の滞納がない中小・小規模事業者に一律5万円を支給するもので、5月1日から申請期間が始まりました。
振興会議で訴え
同市では、2年前にも、同様の支援金を実施していましたが、電気代やガソリン代の使用金額により、支給額が5万円、3万円、1万円の3段階とされていました。申請の過程で資料が用意できず、断念する会員も。今回、金額が一律5万円の支給となり、申請も簡易に行えるようになった背景には、民商が市と毎年行ってきた懇談会での「多くの業者に行き渡る直接支援を行うこと。申請は簡易にすること」などの要望がありました。
同市は2019年9月に、中小企業振興基本条例を制定。同条例に基づく「中小企業振興会議」を定期開催しており、同会議の委員に選ばれた民商の兼松勇次事務局長も出席しています。会議に向けた事前の意見聴取での、兼松事務局長の「前回の支援金は大変、喜ばれたが、長引く物価高騰で、中小業者の経営の厳しさは続いている。支援金の再実施に当たっては、可能な限り確認事項と添付書類を減らし、交付額の引き上げを」との訴えが実った形です。
宇佐見晴海会長=解体=は「対象となる会員に積極的に活用してもらって、地域の中小業者への直接支援が有効であることを、改めて示したい」と話しています。
江南市中小企業等エネルギー価格高騰対策支援金
〇支給対象者の要件
中小法人等の場合は、次の1~6の要件を満たすこと。個人事業者の場合は、次の1~5の要件に加えて、6または7のいずれかを満たすこと。
1.2025年3月1日(以下「基準日」)までに事業を開始し、申請日時点で倒産または廃業しておらず、引き続き事業を継続する意思がある中小法人等または個人事業者。
2.今回の支援金の交付をすでに受けていないこと。
3.風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する「性風俗関連特殊営業」または当該営業にかかる「接客業務受託営業」を行う者でないこと。
4.江南市暴力団排除条例に規定する暴力団員または暴力団もしくは暴力団員と密接な関係を有する者でないこと。
5.市税の滞納がないこと。(納期未到来分を除く)※分納中は支給対象外。
6.基準日までに市内に事業所を開設し、当該事業所が交付申請日時点においても引き続き事業を継続していること。
7.基準日時点で代表者の住民登録が市内にあり、交付申請日時点においても引き続き住民登録があること。
〇交付額
1事業者当たり5万円
〇申請期間
5月1日~7月31日まで
(郵送の場合、必着)
埼玉県越谷市 店改修に補助上限100万円 埼玉東民商 十年来の要請実り確信に


「民商が十年来、越谷市に要請してきた『商店版リニューアル助成』制度が6月2日から始まった。市内在住の会員に活用を呼び掛け、商売繁盛を応援して『民商に入って良かった』という実感を広げたい」―。埼玉東民商は、中小業者の店舗や事業所の改修に使える「越谷市店舗・事業所改修支援補助金」を創設させ、この間の取り組みに確信を深めています。
使い勝手が課題
民商が担当する越谷市と春日部市、吉川市では、「住宅リフォーム助成」制度があります。受注する施工業者の仕事起こしになり、施主の費用負担も減って、大変喜ばれています。”予算に対して数十倍もの経済効果を生み出す住宅リフォーム制度は地域経済活性化に最適”と、埼玉東民商や近隣民商が協力して毎年、取り組んできた自治体要請の成果です。
群馬県高崎市で「商店リニューアル助成」(現・「まちなか商店リニューアル助成」)が2012年に創設されて以降、民商は同制度の創設を、担当する各自治体に提案してきました。
こうした中、越谷市は2020年度に、経費の20%(上限10万円)を補助し、事業者の店舗改修にも使える「住宅・店舗改修促進補助金」を創設。申請が殺到し、抽選となる人気ぶりで、毎年、予算が増額されています(2024年度は1400万円)。
政策提案活動が
しかし、今年1月20日の要請で、同制度の活用実績を聞くと、申請は住宅改修がほとんどで、店舗改修は3~4件であることが判明。事業者への同制度の周知や、使い勝手が課題となっていました。要請では「需要のある政策は上限額を引き上げてほしい」「物価高騰で大変な思いをしている事業者が多くいる。補助金申請の幅をもっと広げられないか」と要望していました。
民商の要請なども受けて市は3月、「越谷市店舗・事業所改修支援補助金」の創設を発表。先の「住宅・店舗改修促進補助金」とは別の制度で、補助金額も上限100万円と大きく、2日から受け付けを始めました。対象は、キッチンやトイレ、ウッドデッキやテラス、駐車場や看板の改修・設置、内装・外装などと幅広く、民商は対象会員に活用を呼び掛けています。
民商の木村鉄也会長=児童デイサービス・フリースクール=は「長年、自治体との懇談を続けてきた地道な努力が、施策の拡充や改善につながっている。越谷市議会は3月議会で、インボイス廃止の請願も採択した。諦めずに働き掛けることが、自治体を動かす。政策提案活動が、民商の値打ち」と話します。
民商の笹井宏真事務局長は「『知って、知らせて組織する』立場で会員に制度活用を勧めています。申請受付期間が15日間と短か過ぎる点や、市税完納が要件になっている点は、今後の要請で改善させたい。会員の商売繁盛を応援し『民商に入って良かった』という実感を広げたい」と今後を展望しています。
越谷市店舗・事業所改修支援補助金
業態転換や販売促進など、エネルギー価格高騰に対応する店舗や事業所の環境整備を支援するとともに、市内施工業者の受注機会の拡大を図るため、市内事業者が実施する改修工事費用の一部を助成する制度。
○補助金額
補助対象経費(税抜き)の50%(上限100万円)
○申請受付期間
6月2~16日
○対象工事
以下の要件全てを満たすもの
①市内の施工業者を利用して実施する20万円以上(税抜き)の改修工事
②補助金交付決定後に着工し、2026年2月27日までに完了する改修工事
③エネルギー価格高騰の影響を受けて実施する工事で、目的が次のいずれかに該当するもの
(1)事業の継続に必要な改修工事(2)業態転換や新規事業に必要な改修工事(3)販売促進、顧客獲得、経営改善に必要な改修工事
広島市 「小規模修繕」登録制度 上限100万円に倍加
民商の長年の要望実る 広島北民商など積極活用呼び掛け

「広島市(水道局を除く)が発注する小規模な修繕契約を、市内の建築・設備関係業者の受注につなげる『小規模修繕契約希望者登録制度』の上限額が、長年の民商の要望が実って倍加し、100万円(税込み)になった。受ける工事の幅が広がり、ありがたい」―。4月1日から、同制度が改善され、喜ばれています。
広島北民主商工会(民商)はじめ市内4民商や地域の建設業者らの要望を受け、広島市が2005年5月に同制度をスタートさせて丸20年。2023年度の実績は583件、1億3千万円に上ります。
広島北民商では、制度開始当初から、市内の安佐南、安佐北の両区内の登録業者らでつくる「安佐南北登録者連絡会」を結成して、学習や交流を重ねてきました。
毎年、両区との懇談を重ね、制度活用の促進と改善を求める中で、この地域では発注金額が当初の4倍となり、件数・金額ともに増加しています。
市に対しても、上限額の引き上げなどを再三、要求。その中で4月1日から、工事上限金額が、50万円以下から100万円以下に引き上げられました。民商では、せっかく広がった受注増の機会を、市内業者の商売繁盛のためにも、制度をさらに発展させていくためにも、積極登録し活用しようと呼び掛けを強めています。
仕事おこす良い制度
広島北民商副会長 大下初登さん=一般建築

広島市小規模修繕契約希望登録制度は、地元建設業者の仕事確保につながる、とても良い施策です。登録していない/更新していない人は、もったいない。工事上限額が100万円以下に引き上げられたので、受ける工事の幅も広がります。周りの業者にも声を掛け、知らせていきたいです。
しかし、5万円以上の工事には相見積もりが必要で、工事開始を遅らせる原因となります。雨漏りなど緊急性が求められる場合、すぐ工事に取り掛かれないのは問題です。今後、市との懇談では、手続きの簡素化を求めたい。登録者連絡会で、業者同士が意見を出し合い、より良い制度にしていきたいですね。